News / Topics

最新情報

高齢者の新たな住居の選択肢

「高優賃(こうゆうちん)」を知る人は意外と少ない。
「高齢者向け優良賃貸住宅」の略称で、その名称からも想起できる様に、高齢者に配慮した構造、及び設備を整えた賃貸住宅である。家賃は都道府県からの補助があるため、近隣の家賃相場よりも安い。間取りも、単身用、夫婦用と、各個人の状況に合った部屋が準備されている。また、医療機関や介護サービス機関が提携しているため、入居者の緊急事態発生時にも、万全の態勢が整っている。
従来、高齢者向け住宅(施設)は、大きく2つの選択肢しかなかった。重度の要介護状態の時に利用する特別養護老人ホームか、入居時に多額の入居一時金を支払う有料老人ホームである。こうした状況下で、将来の生活に対する不安を解消し、手ごろな賃料で入居できる「高優賃」の制度が作られた。高齢者向け賃貸(高齢者円滑入居賃貸住宅:高円賃、高齢者専用賃貸住宅:高専賃、高優賃)の中で、最も建築基準が厳しく、最も安心して生活を送ることができるため、第三の高齢者向け住宅の選択肢として注目されている。

それゆえに、「高優賃」に関心のある高齢者は多い。ところが、施設数は、過去10年間、毎年増加傾向にあるが、全国で853(平成22年3月末時点)と、まだまだ限られている。平均入居率については、89%と空室も見られる実態がある。今後、高齢者が増加する中で、「高優賃」の利用者を増やすためには、供給側(国や地方自治体)は、何らかの策を講じる必要があるのではないだろうか。また、そのためには、どのような視点から利用促進に向けた改善策を考えるべきだろうか。

マーケティングのセオリーに沿って考えれば、
① 機能とサービスに優れた住宅を提供する
② 手ごろな価格で提供する
③ 利用者とその家族に対して、より高い認知と理解を促す
④ 高齢者にとっての好立地に住宅を提供する
といった視点から検証することができる。

上記①、②については、前述した様に、現状利用者のニーズをある程度満たしていることが窺えるため、今後改善が求められるのは、③④の視点からの対策だ。

「③利用者とその家族に対して、より高い認知と理解を促す」は、加齢によって身体機能が低下した高齢者にとって、より快適な住居の機能とサービスを具体的に認識してもらうアプローチを取らなくてはならない。そして、長年住み慣れた家が、ベストな住居環境ではなくなることの理解も大切だ。「高優賃」は、日常生活での安否確認や生活相談、必要時の介護サービスや、食事のサービス、緊急時の医療機関のサポート等が整備されている。高齢者の「今」の生活にマッチする住居環境なのである。そのため、利用者本人だけでなく、その家族も必ず安心して、高齢者家族の生活を見守ることができる。
これまでは、「介護の必要のない、自活できる自分の親を、その様な所に入居する必要はない。」逆に、「普通の賃貸と変わらないような所にわざわざ入居する必要はない。」等の認識・理解不足のために、入居につながらないケースが多々発生していた。
供給側は、利用者を公募する際に、その優れた機能とサービスについて深く認識してもらえる施策、例えば体験宿泊、今であれば災害対応シミュレーション、健康維持対策や、行政が提供する無料の医療サービスなどを積極的にPRする事が肝要になる。

次に、「④高齢者にとっての好立地に住宅を提供する」についてだが、ある地方自治体が実施したアンケートによると、「高優賃」の希望立地の上位ランクには、「交通や買い物などに便利であること」、「病院や福祉施設が近くにあること」が上げられていた。
これらの項目は、一般生活を営む健常者と同じである。生活圏内にスーパーや、病院があり、交通機関も充実している。加えて、主要な行動範囲には行政によるバリアフリー対策が施され、近隣居住者とのコミュニケーションが盛んに行われる街の文化があれば申し分ない。これは、とりもなおさず日常生活を営む環境として、魅力的で、住みやすい街を開発するということだ。そうすることにより、必然的に「高優賃」の需要の伸びも期待できる。

現在、超高齢社会を迎えている日本は、高齢者が住みやすい社会環境を整備することが急務である。その中で「高優賃」が拡大していくためには、国や地方自治体(供給側)の取り組みが必須となる。利用者や利用者家族とのコミュニケーション、「高優賃」を中心とした街づくりに全力で取り組むことにより、「高優賃」を日本社会に広げ、高齢者の新しい住居の選択肢として定着させることが、高齢者が住みやすい社会環境づくりの第一歩となるのであろう。


 

キヨラ

Contact

お問い合わせ

PMIコンサルティングでは、企業の人と組織を含めた様々な経営課題全般、求人に関してのご相談やお問合わせに対応させていただきます。下記のフォームから、またはお電話にてご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。