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グローバル化を目指す日本企業と人材多様性の課題

日々刻々と変わる経営環境下において、企業内で日常的に語られる言葉も変化している。
最近は、「人材の多様性」、「ワークライフバランス」なども、一部の専門組織のみならず、多くの社員が普通に会話の中で使っているようだ。中でも人材の多様性に関連する話題を耳にする機会が増えた。人材の多様性は、生物多様性に端を発し、企業内では性別、国籍、人種などの壁を超えた多様な人材を雇用する事として認識されている。日本における経営論的観点からは、多様な国(特に経済的成長が著しい国々)の人材を雇用することが、世界の市場特性(文化や価値観)を取り込むには必要条件となり、グローバル競争に勝ち残るためにも多様な国籍の優秀人材を獲得し育て活用することが、グローバル競争に勝ち残る必須条件と認識されるに至っている。
しかし、多民族国家であるアメリカは、多様性を活かすことは当然の事として認識されており、何ら特別なことではない。むしろ、より発展的にとらえて人材戦略に活かしてきた。ご存知の方も多いと思うが、多様性の戦略で有名なIBMの「ガースナー改革」では、女性、アジア系、アフリカ系、障害者などの区分によって8つのタスクフォースを編成し、それぞれのタスクフォースが中心となって、顧客創造のための活動が行われた。その中で女性のマイノリティを中心としたグループによって編成されたタスクフォースでは、マイノリティの経営者が多い中小企業市場の開拓に成功した。ここでのポイントは、これまでは無視されていたセグメント(マイノリティの経営者が多い中小企業市場)にフォーカスできたのは、同じ立場のマイノリティの視点があったからこそ見いだせたという事だった。。この成功事例からガースナーが学んだことは「多様性を市場の問題としてとらえ、多種多様な文化が混在している市場(顧客)をよく知ること」という点にあった。

日本では、急速に人材の多様性に関する認識が高まったとはいえ、経営課題としての取り込み方には苦慮している。一部のグローバル企業が新卒採用者の外国人の比率を高めるなどの動きを見せているが、これまで国内市場を主戦場としてきた内向き企業にも、このような外国人比率を急に高めるやり方がその後の成果につながるのだろうか?どうもそうは思えない。
内向き企業の多様性における優先課題は、組織的に多様性を活かす能力を身につけることが先決ではないか。受け皿がしっかりと作られないままに、多様な人材を受け入れたとしても混乱を招くだけだ。今は多様性を活かす組織体制をスピーディーに作り上げることに力を注ぐべきである。そもそも日本企業が人材の多様性にやっきになりだしたその原因は、国内市場の成長性が見込めなくなったことによるもので、言い換えれば、企業の成長戦略を考えた結果によるものである。日本の内向き企業でさえ、世界に市場を求め顧客を創造しなくては成長が見込めない以上、社員のみならず顧客の多様性にも対応しなくてはならなくなったというのが実態だろう。その結果、対峙する市場がグローバル化するのであれば、諸外国の異文化を取り込むために、人材の多様性を高める事が短期的な課題として上がってきたという格好だ。 それではあまりに短絡的な施策すぎる。
そこで、内向き日本企業が多様性の課題に対応するためのポイントはどこにあるのか? これまでの考えを整理すると、次の3つのポイントを押さえた組織体制づくりが課題になる。

① 進出する市場の文化と顧客をしっかりと把握すること(現地に赴き市場と文化を掌握する)
② 人材の多様性を活かす能力を装備すること(受け入れ態勢と異文化人材の教育プログラムなど)
③ 多様な人材の獲得を進め相乗効果を高めること(但し②が出来ている事が前提)

しかし、「言うは易し行うは難し」だ。多様性を受け入れるということは、異文化の人材をマネジメントしつつ、目標を達成することが各組織に求められる。日本国内で、日本人だけのチームで仕事をしてきた人が、見知らぬ文化の中で教育を受けてきた外国人達を統率するのである。
国ごとの人間の慣習や所作などは文化の違う国から見れば複雑怪奇きわまりない事は山ほどある。それこそ、不案内な国での事業展開ともなれば、文化的な違いから相互理解が得られない事も度々だ。言語の壁以上に、文化の壁を越えるのが難しい。日本の内向き企業のウィークポイントは異文化交流力であることは言うまでもない。成長を望むのであれば、個人も企業も多様性を受け入れる事を心に決め、先に掲げた3つのポイントに沿った具体策を練り、即行動しなくてはならない。

人材多様性を受け入れた企業社会は、企業人一人ひとりに自己変革を求めている。そのためには、まず組織がこのことに気づき、新しい価値観を受け入れ、行動を変えることが最も重要だ。そこで変革を成しえた組織のみが、次の時代を生き延びることが許される。わたしたちは、そういう時代を生きている事をしっかり認識し、一人ひとりの自己成長につなげなくてはならない。


 

アーリーバード

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