色々な企業のご支援をする中で、営業パーソンに「“できる営業”と呼ばれるハイパフォーマーに共通する要素」についてインタビューさせていただく機会がある。BtoC・BtoBという形態はもちろん、業種業態を問わずにお伺いをしてきたが、ハイパフォーマーに共通する要素に「お客様を好きなること」というものがあった。もちろん「一歩踏み込む勇気」「情報を分析する力」「相手の懐に入り込む会話力」等、他にもハイパフォーマーの要素は挙がった。しかしながら、ほぼすべての方に共通する要素となると「やっぱりお客様のことを好きになれる人が結果もついてくるね」という意見であった。
「お客様のことが好きだから(自社の商品・サービス)買ってもらえるのか」、あるいは「買ってもらえるからお客様のことが好きになるのか」。どちらとも考えられるが、おそらく「鶏が先か卵が先か」に近いだろう。つまりは、「お客様のことが好き」と「自社の商品・サービスを買ってもらう」ということは、因果関係は明確にならないかもしれないが、かなり高いレベルで相関している、ということである。このような整理をすると、「お客様を好きになる」ということに、営業として活躍するための行動特性や心の持ちようのヒントが隠れているのはないだろうか。
営業活動における「お客様を好きになる」ということは、そもそもどのようなことかを考えてみたい。営業活動の目的は自社商品やサービスを購入していただくことになるので、そこにどのような形で「好きになること」が関連していくのか。それは「お客様に自社商品やサービスを購入していただく」までのプロセスを、「お客様を好きになること」、更に「好きなお客様に自分を好きになってもらうこと」の観点で整理することで明確になるのではではないだろうか。具体的には、営業活動を下記の3段階で整理し直す。
①お客様を好きになるための事前準備(相手をとことん知り、自分を信頼してもらう)
②お客様に自分を好きになってもらうためのアプローチ(相手に役立つことをとことん実践する)
③お客様からの返答の受領(自社商品・サービスを購買してもらう、ひいきにしてもらう)
このプロセスの特徴は、自分が一方的にお客様を好きになるのではなく、相手にも自分を好きになってもらい、最終的にはYesの返答(自社商品・サービスの購入)を得ることまでを盛り込んでいることである。以下、簡単に3つのプロセスをご紹介する。
※BtoBにおけるお客様は、「顧客企業」と「やりとりをしている方」の双方を指します。
※通常の営業プロセスはもっと複雑だがあえてシンプルにしていること、またお客様を好きになるためには良いお客様に恵まれることが前提であり、それを前提にしていることをご了承ください。
プロセス①:お客様を好きになるための事前準備(相手をとことん知り、自分を信頼してもらう)
好きになることの第一歩は、事前準備から始まる。事前準備とは、お客様のことをとことん調べることと、相手に自分を信頼してもらうための準備のことである。BtoBの場合は、収集可能な情報を集めて仮説を構築することがスタートになる。HPから企業理念やビジョン、IR用のページがあれば中期経営計画や直近の業績、今後の重点テーマなどを把握することで、お客様企業の事業がどのような方向に向かっているかを理解したり、情報を組み合わせて仮説を立案することがこれに該当する。またBotBでも自分が直接やりとりをしている担当者の方や、BtoCの場合であれば、手元にある情報や、最近ではSNSなどの情報も利用しながら相手の人物像を形作ることである。いずれにせよ、お客様に関する最低限の知識をインプットし、お会いしたときにどのような時に話をすればよいかの準備をすることは必須になる。そのうえで、どのように自分や自社を紹介すれば(魅せれば)よいかを考え、そのための資料などを準備する。
ここまでして、実際にお客様にお会いする段階になる。ここでは準備した内容をもとに、適切な自己紹介を行って相手の警戒心を解いたうえで、準備した内容を相手にぶつけることで「こいつは中々分かっているな」と思ってもらうことが重要だが、更に如何にして「聴く」・「訊く(尋ねる)」かがポイントになる。相手の話す内容をきちんと「聴き」、相手からの情報が断片的であれば、自ら理解するための情報を引き出すために「訊く(尋ねる)」ということである。これら引き出した情報は次のプロセスで必要になる。もちろん、一連の活動、特に訪問前後のご挨拶や御礼等、相手の信頼を得るためのビジネスパーソンとしての適切な立居振舞は大前提になる。このプロセスでは、相手に信頼できる人だと思ってもらうことと、事前準備で補いきれない情報を収集できればOKで、できれば自分の生活の身近な場面で目にするお客様の商品やサービス等を実際に継続して利用できればもっと良い。
プロセス②:お客様に自分を好きになってもらうためのアプローチ(相手に役立つことをとことん実践する)
お客様を理解した後にすべきことは、お客様の役に立つことをすることである。①で収集した情報をもとに、「何に困っているのか」「何をすれば喜んでもらえるのか」等の相手の要望を明確にしたうえで、自分ができる最大限のことをして要望をかなえるお手伝いをすることだ。人の紹介やちょっとした気づきの提供など、あまり自分のビジネスとは関係ないことでも問題ない。自分が持つ資産(人脈・情報・経験等)や自社の持つ資産(ブランド・商品・サービス等)等、自分や自社でなければできないご支援ができればOKだ。この段階にくれば、企業や個人に関わらず、お客様の長所だけでなく短所も理解し、(お客様の担当者との人間的な結びつきがあるのが前提で)なんとかしてお客様のお役に立ちたいという想いが湧いてきているはずだ。
プロセス③:お客様からの返答の受領(自社商品・サービスを購買してもらう、ひいきにしてもらう)
営業は自社の商品・サービスを購入してもらわねばならないため、最後にどのようにしてここまで到達するかが鍵になる。②までのプロセスに到達していれば、「機会があれば購入してもよい」という状態になっているはずである。その機会を逃さないように、あるいはそのような機会が訪れるように自ら動くことがポイントになる。お客様から「○○で困ったことがあればすぐに連絡します」といってもらえる関係を築けていればOKだが、自分から積極的にお客様とコミュニケーションをとり、機会を逃さないために網を張ることも必要になる。BtoBであれば、自社商品・サービスの活用がお客様企業のビジネスの成長(+担当者の社内評価の向上や課された目標の達成)に、BtoCであれば、お客様とのwin-winの関係を築くことができて、初めて相思相愛になっているといえる。
このプロセスは、一見すると当たり前のように見えるかもしれないが、詰めが甘いといわれる営業は、①・②に到達した段階でのお客様から感謝の言葉で営業をしたと勘違いをしてしまっている場合もあるし、せっかちなで独りよがりだといわれる営業は、①・②を経ずに③をねだる様なことをしてしまい、空回りをしてしまっている。
これはよくよく考えてみると、通常の恋愛と全く同一ではないだろうか。気になる相手の趣味や好みを調べ、相手の喜ぶことをし、きちんと相手の返答を得る。これは上述の①~③そのものである。もちろん、想いが通じた後も重要で、営業でも継続した関係を維持することは重要になる。このように考えると、営業活動の成功の秘訣は、実は恋愛の成功の秘訣と同じなのかもしれない。
少なくとも、「お客様を好きになって相手にも好きになってもらう努力をすること」は、営業がすべきこととその順序を明確にすることに役立っている。
人を好きになるのは、一目ぼれの場合もあるし、お見合いの場合もある。企業の場合も同じように、自分から惚れてしまう企業もあるし、上司に割り当てられた縁をきっかけに好きになることもあるだろう。恋愛と唯一の違いは、複数の企業を当時平行に好きになることが許されていることである。このことをチャンスととらえ、数多くの相思相愛関係をつくってみませんか。
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