つい昨日までDX(デジタルトランスフォーメーション)の話題で、多くのビジネスパーソンがその知識習得にやっきになっていた。しかし、そのイメージは未だ伝わってこない。
例えば、こんなイメージならどうだろう。家電メーカーは家電をつくるが家電そのものを売るのはやめる。その代わり、使った状況に応じて利用料を支払うことに。具体的にはこんな事が考えられる。
1台10万円の冷蔵庫を量販店で買う場合、買い方は現金かクレジットカード(分割可)やローンがある。分割払いや、割賦払いを利用すれば金利もつくので、10万円以上の支払いをしなければならない。
一方、マイクロペイメントのような課金プログラムが実装されたなら、冷蔵庫を無償で提供し、冷蔵庫と冷凍庫のドアの開閉回数に応じた課金が可能になる。
仮に、冷蔵庫のドアを開ける回数1回につき0.8円。冷凍庫は1回8円と決めておく。都心で働く1人暮らしの20代女性の冷蔵庫ドア開閉を、1日平均10回、冷凍庫ドア開閉1日平均5回とすると、1日当たりの利用料平均は48円となり、365日を乗じると、年/17500円となり、5年使えばで87,500円となる。2人暮らし世帯になれば、開閉回数も増えることが期待できる。
考え方にもよるが、家電メーカーは売らなくても収益化は可能になる。
これを支える技術は、ブロックチェーンのマイクロペイメントシステムではないかと言われている。事実、ブロックチェーン技術は既にアメリカの不動産業界において、スマートコントラクトといった契約方法で実現している。不動産は権利は複雑で高額の取引となる、ブロックチェーン技術によって購入と同時に登記の登録まで一貫して行ったという実績もでてきた。
更に技術に支えられた組織のあり方も変わっていく。自律分散型組織=DAO(Decentralized Autonomous Organization)。例えば、会社経営には管理者と労働者がいるのが当たり前だと思っているが、そこが変わる。管理者はいるが、労働者がいない組織。これは大手自動車製造業の工場など、人は殆どいないし、高速道路の料金所も人がいなくなった。こここまでは自律型とは言わない。DAOの世界のポイントは、管理者が不在という点がポイントだ。例えば、タイムスの駐車場においてある車にUberボタンが実装されていることを想像してもらいたい。誰でもいつでも好きな時間に車を借り、少し時間があれば、好きなだけUberのドライバーとして働くことができる世界が実現すれば、管理者はネットワークシステム、労働者は免許証をもったカーシェアリングを利用する全てのドライバーとなる。(日本国内ではUber Eatsの労働者が都内のレンタルサイクルを使っているケースが既にある)要は登録さえすれば、管理者不在でネットワークシステムが労働者に仕事を提供する世界だ。
更に、無人の自動運転が実現すれば、労働者も管理者もいない移動手段が可能になる。このような組織が実現するには今暫くの時間を要するだろうが、DAOはこれから着実に増えていくと考えられている。自律型分散組織は、そのビジネスモデルを提供するオーナーはいるが、人と組織を管理する必要性がほぼなくなってくることを意味する。そういった組織が現れる時代になった。
日本は過去の仕組みや慣習から抜け出すのに時間がかかりすぎた。そのことを省みて、中国に学び、リバースイノベーションを模索する流通企業もある。その方が経営のデジタル化を早く手に入れられるからだ。DXの周回遅れとなった日本企業の感覚では、日本でDXを進めていてはさらなる周回遅れに見舞われる。
日本でDXを進めるのであれば、まず考え方を変えなかればならない。私達の生活行動の全てをデジタル化すること。それが大前提。その上で、これらのデータはマーケティングに活かし、かつ最高の顧客経験価値へとつないでいく発想への転換が不可欠になる。
先に述べたように、家電も買わなくてよくなるのであれば、壊れるまで使って購入するよりも、5年ごとに新型家電に変えることが経験価値を高めることになる。そして、家電を利用した顧客のデータは全て収集すし、これらのデータを更に新しい経験価値づくりに活用するサイクルを生みだすシステムが、DXの世界であり、DAOの世界である。
日本の社会を変えていく上で、重要な企業経営の課題の1つは、経営のDX化と組織のDAO化だ。創業から10年以上を経過した企業は、この2点を与件とした経営改革を進めるべきだろう。ここでは、紹介しないが、何故、そうなのかを考える材料を1つ提供しておきたい。それは、全く新しい大学(プログラミング大学)のあり方を創った42USAについて調べてもらいたい。授業料無料、寮費無料、就職先はGAFAをはじめ世界トップレベルの企業から在学中にスカウトが来る。授業に教師はいない、課題は自分か生徒間で教え合う。まさにDAOの世界観そのものでもあり、学校が授業料をとらず無料で有能な人材を集めて利用してもらっているのだ。一度自分の目で確かめてもらい、将来の経営の参考にすることをすすめたい。
https://www.42.us.org/
クローサ No.10
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