今日は快晴で気温も暖かく、とても気持ち良い朝だ。普段より少し早く目が覚めたが、いつも通り8時になるとスマートスピーカーのSlexa(セレクサ)が起動し、クラシック音楽が自動で流れ出す。これまでは朝が苦手でけだるかったが、お気に入りのクラシック音楽に出会ってからは毎朝が快適だ。洗面所で顔を洗いキッチンへ向かうと、ポットのお水は既に加熱されており、マグカップにカフェラテの粉末を入れてお湯を注ぐ。ちょうどそのころ、昨夜の内にトースターにセットしていた食パン2枚が焼き終わった。1枚には実家の農家から届くブドウのジャムを塗り、もう1枚には冷蔵庫にあるハムを挟む。最後に棚にあるシリアルを適量入れ、牛乳を注ぐ。いつも同じ朝食を食べながらスマートフォンでニュースをチェックするのが朝の日課になっている。
トイレや洗濯機、冷蔵庫、テレビ、エアコン、Slexaなど家中のあらゆる家電がスマートフォンと連動することができたのは、政府主導で開発・整備された決済システム「Gpay(ジーペイ)」のプラットホームによる効果が大きい。マイナンバーの個人認証を軸とする情報の一元管理と情報へのインターフェースを統一し、仕様を無償公開したことで全てのアプリケーションや機器類が接続可能となった。このGpayを経由することで様々なデータが蓄積され、それらを利用した様々なサービスが享受できる。また、全ての支払いはGpayを通して行われるようになったので、購入履歴を元に商品の購入頻度や消費ペースは自動で解析され、在庫切れの無いようにリマインドする機能もある。このGpayのおかげで、現金を単に無くすためのキャッシュレスから、生活を豊かにするための様々な情報の横断的な連携による新しい高付加価値サービスが実現することになった。
例えば、あらゆる購買データが共通フォーマットで整理されているので家計簿はリアルタイムで自動生成される。毎月の予算額に応じたアラート設定も可能なため、大好きなチョコレートの消費をなんとか管理できている。最も、チョコレート購入の半分は新しい商品を手に取っていること、リピートする商品の8割はダークチョコであることも解析されているため、私の嗜好をくすぐるレコメンドが常に誘惑してくるのだが。(レコメンドの頻度や種類も自動で設定できる)
家庭内の在庫管理機能はかなり重宝しており、朝食の買い忘れは無くなり、シャンプーや歯磨き粉などいつの間にか無くなってしまうような生活用品に関しても適切なタイミングで購入ができている。これまでは難しかった食事の管理も簡単になった。購買データから食品や料理のカロリーと栄養バランスを蓄積し、足りない栄養素のレコメンドや1日の摂取カロリー、推奨消費カロリーが算出される。そして体重や筋肉量の目標設定値を登録していると、これらをもとにトレーニングメニューが提示される。 トレーニング後には実稼働量や体内組成計で測った情報から、今の生活を続けると数か月後にはどのくらいのボディーバランスになっているのかを解析してくれる。算出されたデータを基に常に生活習慣を改めているので病院に通うことも少なくなった。
病院へ行く場合はGpayから病院の予約ができる。他の病院での診察や投薬履歴が蓄積されているので、既往歴や手術の有無、アレルギー、妊娠有無、通年での健診の数値など、問診票の記載やお薬手帳の管理は不要となり、医師のPCには全てのカルテが表示される。運転免許の取得や更新時に必要な視力検査もこの結果を使えば不要となり、生命保険料は普段の生活習慣や健康診断の結果を基にした健康指数に応じて金額が決まるので、より一層健康に気遣うようなった。また、年間の医療費が10万円を超える年の医療費控除はもとより、生命保険料控除や住宅ローン控除、ふるさと納税などの寄付金控除、副業収入なども全てGpayにて管理されているので確定申告そのものが無くなった。
朝食を終えて身支度をし、会社の命運を左右するA社との大事な商談のために品川へ向かう。ぎりぎりまでプレゼンテーションの準備をしたかったので電車ではなく自宅からタクシーを利用しようと昨日の内に予約していた。行先と送迎時刻は予約時に予め入力しているので、家を出るときには自動運転タクシーが待ち構えている。車内に乗り出して専用の端末にGpayをかざすと「本日の目的地は○○でよろしいですか」と音声で行先の確認をされたので、「はい」と返答しタクシーが出発した。
道中は、内装されている26型ディスプレイとスマートフォンを接続し、本日のプレゼンテーション資料を投影してリハーサルを入念に行う。リハーサルに対して、スマートフォンに搭載されているAIからフィードバックをもらうこともできる。このAIはおすすめのお店のレコメンド、音楽の選曲、ニュースや映画の配信、恋愛相談、渋滞を避けたナビゲーションなど用途は多岐にわたり、会社や家庭でも愛用されているAIである。このAIはとても優秀で、皮肉にも一部の上司よりも真っ当なフィードバックをくれるので仕事においても重宝している。
そうこうしているうちにタクシーは現地に到着したが、支払いはもちろん自動で引き落とされる。今回のタクシー料金は会社へと請求するため「交通費精算」というカテゴリに割り振られた。そして会社のGpayと私のGpayは連動しているため、「交通費精算」というワードを拾って自動で会社へと請求されるのだ。実際の精算タイミングは会社の方針に合わせて1カ月に1回や都度精算などの設定が可能であり、どのプロジェクトのための移動であるのかという情報は仕事用のカレンダーと連動して自動認識する。
AIの的確なフィードバックのおかげで本日の商談は無事成功した。そして新たなスタートを切るべく、場所を変えて懇親会が行われることになった。急遽お店を予約することになったが、先述のAIがさくっと検索して候補をくれたのですぐに予約ができた。食べ物のジャンルや雰囲気の嗜好まで細かく探してくれるため、想像した通りのお店だった。入店時にはGpayをかざすことで飲み会モードに切り替え、何を注文したかもわかるようにしておく。というのも、飲み会の時は普段の食事管理を忘れて良いマイルールがあるのだが、やっぱり健康は気になるのでレコメンド機能は欠かせない。こうしておくと、飲み過ぎだからお水を飲みなさいだとか、肝臓のアルコール分解を助けるためにメチオニンを含む枝豆を注文しなさいだとか、栄養もあって満腹になるアボカドを注文しなさい、など体調を気遣ってくれる。AIのおかげで思い描いた飲み会ができ、レコメンド機能のおかげで気持ち良い酔い具合だ。お会計は各々のGpayを活用することで傾斜をつけるとか、経費精算とする場合でも簡単な操作で対応が可能だ。
家に帰ると電気が自動でつき、ジャズミュージックが流れる。実は朝のクラシックと夜のジャズは、購入履歴やこれまでに蓄積されたデータから私の人物像や現在の状態を解析し、適した音楽を選択してくれたものだ。その効果は歴然で、眠りの深さと疲労回復度の値は従来に比べて改善されていることが睡眠アプリからみてとれる。
Gpayは、生活の利便性を大きく向上させてくれるとともに、データが蓄積されればされるほど適切な提示をしてくれる専属秘書のような存在だ。人々の生活から現金がなくなり、取引がデジタル化された。アプリやクレジットカードとの連携や決済ルール、レコメンドの有無や分析したい情報など、Gpayの使い方は個々人で自在にカスタマイズでき、自分のライフスタイルに合った支出管理が可能である。従来までの「点」の取引を「線」の取引へと変革し、IoTとの連動で生活の質が格段に上がった。キャッシュレスを単純な「現金を無くす施策」として捉えるのではなく、生活情報を連携・共有・活用することの理想を追求したことによって誕生したこのGpayを起点に、これからも様々なアプリやサービスが産み出され、いままでに考えられなかったような便利で快適な生活が今後も提案されるに違いない。
※当コラムは、最新の情報を元に近未来のライフスタイルの向かうべき形態を推測したもので、GpayやSlexaは架空のものです(実現可能性は未知数です)
Chaser
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