News / Topics

最新情報

前略地方銀行殿、これがあなたの生きる道・・・なのかも

 ここ1年あまりで地方銀行を取り巻く環境が俄かに騒がしくなりました。菅総理が地方銀行の再編に言及したことから始まり、独禁法の特例措置、日銀の支援制度、政府から補助金支給という3つの施策が開始されたからですが、その適用の条件は「合従連衡」にあり、国が本気で地方銀行再編に動きはじめたことを示しています。

 

 令和元年の金融庁のレポートでは、国内の金融機関はメガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合を合わせると、500以上も存在しています。2019年3月決算では、地方銀行105行の4割を超える46行が本業で赤字に陥っています。さらにそのうちの27行は5期以上連続の赤字であり、株式売却益などで何とか決算を取り繕っている状態です。専門家の間では、「生き残ることができるのは半数以下」「20行もあれば十分」と言われています。

 

 国の意向に関わらず、地方銀行の合従連衡はすでに進行しており、千葉銀行を中心とした「TSUBASAアライアンス」は、2015年に千葉銀行、第四銀行、中国銀行の3行で発足。その後、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行、北越銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行が加わり11行まで拡大しています。また、SBIホールディングスが地方銀行支援に名乗りを上げ、地方銀行の「合従連衡」を推進するためのいくつかの支援策を提示しています。ただ、合従連衡は現業を維持することを中心に考えられた色彩が強く、単なる延命措置といっても過言ではないでしょう。

 

 地方銀行の衰退が止まらない最大の原因は、地方の過疎化と産業の衰退にあります。地方が衰退すれば、資金需要は減退するばかりなので、地場を拠点と知る地方銀行の業績が下がっていくのは当然のことです。さらに追い打ちをかけるのが、少子化による人口減です。2004年12月をピークに減少し続けています。人口減の打撃は首都圏よりも地方のほうが顕著で、今後は地方の人口減少(過疎化)が一気に進行すると言われています。

 

 このように逆風しかない状況の中で、地方銀行はどのように活路を見出していけばよいのでしょうか?

 地方銀行の使命は、文字通り地域に根付き、地域の発展を金融面で支えることにありますが、産業を振興や雇用の創出なども含めて、地域を活性化させることで、自行も潤うという点にあります。地方銀行が生き残るためには、まずは「地域に根付いた・・・」という看板を一旦下ろし、自らのあり様を再考すべきです。これからも特定地域だけを商圏にしていたのでは、業績を安定させるほどの資金需要を見込むことはできないでしょう。少なくとも日本全国の顧客を相手にビジネスを展開することを考える必要があります。

 

 一方、急速に進展するデジタルによる技術革新と、高度な統計学を背景にした金融工学の発達で、金融そのものの考え方が劇的に変わり、今や金融は金融業のものだけではなくなりました。また、マネーのグローバル化は静かに進行しており、個人の決裁であっても国境線を気にしない、貨幣という実態を伴わないボーダーレスな電子通貨による国際的決裁が主流になります。そうなると、「国内」「国外」という考え方、さらに首都圏、地方というような分け方そのものがナンセンスだと言わざるを得ません。資金需要のあるところには、世界中からいつでもどこでも融資というような時代がくるのです。そのような時代の資金調達は、借り手に多くの選択肢が提示されることになり、借り手にとっては利率(どれだけ好条件で借りるか)と利便性(面倒な手続きは少なく)、そして迅速性(どれだけ早く手元に届くか)が判断のポイントになます。それこそ「誰から借りてもお金の価値は一緒」なのだから、タイムリーに最適な条件を提示されることが価値になります。

 

地方銀行の生きる道は、この点を極めることにより、既存の銀行業や金融業者との差別性を際立たせることにあると考えます。そのためには、デジタルバンキングの波に乗り遅れない(先取りすること)ことが大前提です。

 

 この時に必ず実施しなくてはならないのが、既存の金融インフラの整理です。デジタル化されることで、既存のサービスの中で、価値が下がったり、不要になるものが出てきます。これらの「負の遺産」を見極めて、スパッと切り捨ててしまう荒療治です。ここでの「負の遺産」とは、店舗(支店網)、ATM網などの、所謂リアルコインの取り扱いを行うサービスということになります。これらはリアルコインを扱うことを前提に整備されたものであり、デジタル化が進行すれば必ず不要になるものです。いち早くリアルコインの取り扱いに依存しないモデルに切り換えてしまい、資金使途への融資(信用創造)部分をデジタル化して、他行とは一線を画すモデルを作ってしまうということです。

 

 もちろんいくつかの店舗や行員は残すことになりますが、リアル店舗で実施するのは、顧客への資金ニーズへの対応などの信用創造であって、リアルコインによるサービスを実施する拠点は実質的に廃止することです。預金者へのサービスは、PCやスマホで対応し、ATM網はコンビニや他行のATMを利用し、その際の手数料はすべて自行で負担するくらいの腹の括り方が必要です。預金者の夜間ATM利用手数料や振込手数料を可能な限り無料化すれば、それだけでもメリットを感じる預金者はいるのではないでしょうか。

 

 このような観点で金融サービスの土台を作り直すと同時に、稼ぐための融資ビジネスは日本中の顧客が対象となるようにデジタル技術を駆使します。その最大の売りとするのが、他行にまねのできない「世界最速の与信審査リードタイム」「世界最低の利率」「インターネットですべて完結」の3点を実現することです。

 

 「インターネットですべて完結」は、他行でも実現されているので目新しさはありませんが、これからの顧客サービスとしては必須要件です。「与信リードタイム」は、例えばこれまで2日間かかっていた与信の審査を10分以内で完了するなど、考えられないリードタイムを実現します。また「世界最低利率」は、借り手が必要な情報を開示すればするだけ、利率がさがるという与信方式を取り入れます。より好条件で借りたければ、借り手ができるだけ個人情報を提供することとし、自分自身のヒストリーさえしっかりしていれば、他行よりも遥かに好条件で融資を受けられるということです。

 

 例えばカーローンは、現在の最低水準でも年利2%前後、自行に口座があったり住宅ローンを組んでいたりすると金利優遇という具合に、囲い込みベースの優遇策になっていますが、こういう考え方はもはや時代遅れです。借り手のヒストリーだけで金利が決まり、借り手が条件を入力することで瞬時に利率が提示され、合意すれば即座に振り込まれるという仕組みです。

 

 この仕組みには、店舗や行員による対面サービスが介在しないので、日本中の借り手を相手に展開が可能です。これをクルマ、住宅、趣味、リフォーム、学資、医療、保険などの、様々な資金ニーズに展開することで、メガバンクも実現できていない金融サービスとなります。

 また、新興の電子マネーやスーパーアプリを展開する業者との連携は必須です。彼らとの連携は自行のシステムが外部と容易に連携可能できるように整備されていることがスタートラインです。自行の勘定系システムの統合にアップアップのメガバンクでは、彼らのビジネス展開の速度にはついていけないでしょう。

 

 こういった仕組みで、日本中の資金ニーズを獲得(というよりのも借り手に選ばれる)できれば、当面の経営は安泰であるといえます。システム開発や維持運用に莫大なコストがかかりますが、一方で人的コスト比率は大幅に下がることになり、労働集約型のモデルからの脱却も図れます。

 

なお、ここで提示したモデルは、現業の金融ビジネスの延長線上にすぎないので、いずれは人口減少の影響を食らうことになります。金融ビジネスで発展していくためには、日本国内だけを相手にしていたのでは、早晩じり貧になります。やはり海外への展開を前提にして、段階的に拡げられるようなシステムを構築しておくべきです。日本国内から海外顧客への直接融資など、外交的、法律的には難しい国の場合は、当事国への進出も必要です。いずれにしても、国内に閉じた仕組みではすぐに息詰まるので、大ナタを奮うのであれば、スタートから世界を見据えておくべきでしょう。

 

 銀行業のデジタル化は、始まったばかりですが、想像もできない速度で進展することだけは間違いありません。だからこそ、地方銀行が跳ねる最大のチャンスでもあります。この提案には、既存のビジネスモデルの「負の遺産」を捨てることも含まれており、地域の名士という金看板を捨て去ることになる暴挙なのかもしれません。それでも改革を推進する強い意志と勇気、そして知恵を持った男気のある経営者が、地方銀行にはまだまだ眠っていると信じたい。座して死を待つか、死を覚悟で行動してみるか・・・・

 

マンデー

 

注)画像の引用元

・ダイヤモンド・オンライン 地銀の「余命」ランキング、17行が本業不振で風前のともしび | 銀行・証券断末魔 |

・日本経済新聞 電子版(日経電子版) na Twitteru: "スーパーアプリとは 対話・決済・配車…一括で提供(きょうのことば)

Contact

お問い合わせ

PMIコンサルティングでは、企業の人と組織を含めた様々な経営課題全般、求人に関してのご相談やお問合わせに対応させていただきます。下記のフォームから、またはお電話にてご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。