最近よく視聴するYouTubeのコンテンツがある。飼っているペットと飼い主とのやり取りを楽しむものなのだが、そのペットは、人間の言葉を話すことができる“ヨウム”という鳥である。ヨウムは、オウム目インコ科の鳥類で、言葉の意味を理解して人間とコミュニケーションを取る能力を有する。諸説あるが、2歳児なみの感情と5歳児なみの知能指数を持っているとも言われており、非常に賢い鳥なのだ。
このヨウムのおしゃべりを見ることが何よりの楽しみなのだが、面白いことに優しい性格のものから激しい性格のものなど、ヨウムによって個性が全く違うのだ。生き物なので個体毎に千差万別であることは理解できるが、ここまで個性が変わってくるのはなぜなのかという疑問が生じるようになった。しかし、彼らを観察し続けているうちに、“飼い主の言葉によってヨウムの性格は変わる”という結論に辿り着いた。
現に、飼い主が穏やかな言葉をかけ続けているヨウムは、その言葉を真似することで、優しい性格になる。反対に、飼い主が乱暴な言葉で話しかけているヨウムは、気性の荒い攻撃的な性格になる。つまり、ヨウムの性格は、普段から聞いている飼い主の言葉をインプットし、その言葉を真似するアウトプットを通して形成されると言えそうだ。
翻って、人間は食事や運動をする。人間の肉体や精神は、インプットするものとアウトプットするものによって形成される。人間もヨウムも同じ生きとし生けるものであるため、ヨウムの例を人間に当てはめれば、自身がインプットする言葉とアウトプットする言葉によって、性格が作られるのではないか。
脳科学では、ポジティブな言葉を掛けられた者は、ネガティブな言葉を掛けられた者と比較して、脳内の神経伝達物質の分泌が活性化され、成果創出に向けて前向きな行動変容につながると言われている。
お伝えしたいことは、インプットする言葉とアウトプットする言葉が性格を形成する、つまり“言葉が人を作る”ということだ。では、仮にこのテーゼが真だとして、我々はどのようなことを意識して日々過ごせばよいだろうか。
それは、“言葉をデザインする”ことに尽きると考える。では、“言葉をデザインすること”を、“自身がインプットする言葉を意図的にデザインすること”と、“自身がアウトプットする言葉を意図的にデザインすること”に分けて説明していこう。
まず、“自身がインプットする言葉を意図的にデザインすること”であるが、理想の自分が使う言葉がどのようなものであるかを想像することから始めるとよい。柔和な人間になりたいのであれば、自分がどんな言葉を発していれば柔和だと言えるのかを具体的に考えてみるのだ。身近にお手本となる人物がいるのであれば、その人物が使っている言葉をイメージしてみることも有効である。
イメージの輪郭が出来上がってきたら、イメージに合った言葉を使っている人物の書籍を読むことやそのような人物が集まる環境に身を置くとよい。これらのプロセスを通して、理想の言葉が自身の身体に浸透し、馴染むようになる。このように、理想の言葉を意図的にインストールするようにデザインしていくことが重要だ。
次に、“自身がアウトプットする言葉を意図的にデザインすること”であるが、人と話す時や文字を書く時に、できるだけポジティブな言葉を選ぶようにするとよい。人間である限り、ネガティブな思念は頭で浮かぶものだが、浮かんだとしても、ポジティブな言葉に変換することを意図的に実践してみるのだ。例えば、“疲れた”という言葉が浮かんだ場合でも、“充実した”とか“やり切った”というポジティブな表現に変換した上で、言葉を発するようにする。
また、ネガティブな印象を与える言葉の使用を意図的に避けることも有効である。例えば、“でも”、“だけど”、“どうせ”といった否定的な言葉を使わないようにするのだ。このように、ネガティブな思いをポジティブな言葉に変換することや、ネガティブな言葉の使用を回避するなど、言葉を意図的にアウトプットするようにデザインしていく。
もちろん、常にポジティブなことばかりをインプットすることやアウトプットすることは不可能である。ネガティブな感情を溜め込みすぎると逆効果になる場合もあるため、不満や愚痴を吐露したくなることも人間の真理であろう。
そのような時は、利害関係のない信頼できる人物やカウンセリングのような場所でネガティブな感情を吐き出すとよい。発する相手と場所を間違ってしまうと、ネガティブな要素がブーメランのように自身に戻ってきてしまう。まさに因果応報である。
違う視点からも言葉を見てみよう。日本語は、48音の“やまとことば”でできているが、“やまとことば”には1つ1つに意味がある。例えば、“あ”は開くという意味があり、“う”は閉じるという意味がある。花(はな)という言葉は、“は”と“な”に分解されるが、“は”という文字は、やまとことばで“出るもの”を意味し、“な”という文字は、“調和”という意味があるため、花(はな)は“出ていて纏まっているもの”という内容を表しているそうだ。
つまり、1つ1つの文字には意味があり、その文字が組み合わさった言葉には生命(いのち)が宿っているのだ。世の中に影響を与えている人物は、言葉には生命があることを理解した上で、言葉を紡いでいる。
このように、言葉のインプットとアウトプットをデザインするとともに、言葉の持つ力も意識することが重要なのである。世界一の人生コーチと呼ばれるアンソニー・ロビンズ氏はこう言っている。「あなたの使う言葉があなたの人生を操っている」と。
普段無意識に使っている言葉に目を向けて、言葉の持つ力を意識し、言葉をデザインしてみてはいかがだろうか。
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