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早起きは三文の徳?

早朝のウォーキングコースで寺院に立ち寄ることが日課になっている。そこで気づいたり、思い出したり、感じたことから「三文の徳」を探してみた。

 

インスタレーション

コロナウイルス第5波の感染拡大も落ち着き始め、紅葉を楽しみたい人達も動き出していると聞く。数年前、古刹の額縁紅葉鑑賞に京都まで出かけた事がある。寺の室内から観るそれは黒いフレームに見事に収まった紅葉に染まる庭の景色であった。計算しつくされた芸術性を強く感じさせられた事をよく憶えている。その時は気にしなかったのだが、たまたま美術関連の記事を目にした際に、額縁紅葉はインスタレーションだと知った。(インスタレーションとは、現代美術の表現手法で、作者がオブジェや創作品を室内や野外に設置・構成し、空間全体を作品として体験させる芸術のことである)

日本の寺院の歴史はアーティストのプレゼンテーションの場として存在してきたという観点から理解すると、また違った寺院の在り方が見えてくる。これまでそのような観点で見直す事は無かったが、襖絵や庭園等はまさにインスタレーションそのものと言っていい。

当然、日本の寺院のインスタレーションには宗教的なコンテクストが流れている。それを読み解き学ぶのなら美術館鑑賞が最も適している。文字・音声での解説があり、歴史的背景をしっかりと学べるメリットがある。しかし、寺院のインスタレーションは考えるよりも「感じる場」として活かしたい。頭で理解する前に、自分の感覚を大切にして想像力を働かせてみる。その後歴史的事実や専門家の開設と答え合わせすると存外に楽しい。コロナ禍において寺院拝観の殆どが閉鎖されていたために「感じる場」に近づく事ができなかった。私たちの五感も錆びついている。感覚を研ぎすます意味でも近所の寺院を訪れてみることはお勧めだ。その際にインスタレーションの場として拝観してもらいたい

 

距離感

さて、私たちの暮らし(特に都市部)は、寺院や宗教の教えから随分と離れてしまった。既成宗教の営みも旧態依然としているのだろうと思い込んでいた。しかし、よく調べてみると若手僧侶による様々な活動が展開されている。青江 覚峰 (あおえ かくほう) 氏は、料理僧として料理、食育に取り組み、ブラインド・レストラン「暗闇ごはん」の代表をつとめながら、超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」を創設されている。草薙龍瞬(くさなぎりゅうしゅん)氏は、僧侶・著述家/興道乃里(こうどうのさと)代表として、生活の中で仏教を役立てるために精力的に活動している。他にも多くの若手僧侶が新たな活動をしている。青江氏、草薙氏両名の著書や発信情報に触れてみると、非常にわかりやすい言葉を丁寧に選び、仏教の本質について説明してくれている。ありがたい事にこれまで知りえなかった仏陀の智恵の本質に導きながら、心の中でモヤモヤしていたことを言語化してくれたり、考えても仕方のない事を整理し、前向きな気持ちを後押ししてくれる。

過去、宗教はもっと身近な存在であったはずだ。今でも私たちの暮らしの傍には必ずと言っていいほど寺院がある。普段は何も考えることなく素通りしている寺院に立ち寄り、伽藍建築、仏像彫刻、庭の草花、寺の縁起に触れることで新しい発見がある。ふらりと立ち寄りご本尊にご挨拶してみるだけでもぐっと身近な存在にできる。とりあえず地元の寺院の門をくぐってみることがお勧めだ。きっと宗教との距離感も変わってくる。

 

ウルトラ・パワースポット

話しは変わり、昨年銀座の蔦屋書店に立ち寄った際、圧倒的な存在感を持った彫刻に巡り合えた。テーマは「祈り」作品名は「示現・序」、作者は加藤巍山。仏師でもあり彫刻家でもある加藤氏の作品からは、なんとも言えない「パワー」を感じることができた。以前、同じような感覚を憶えた事がある。書家、金澤翔子氏の作品だ。ネットで偶さか目にしたのだが、是非実物を眼の前で観てみたいと思っていたところ、タイミングよく鎌倉の建長寺で個展があると知り、すぐに訪ねてみた。金澤氏の書「心」の一文字にも同様の「パワー」を感じた。芸術を評価する力を持ち合わせていない素人の眼にも届く「パワー」である。機会があれば両氏の作品を見てもらいたい。加藤氏・金澤氏の「パワー」を最も感じてもらえる場所は、古刹・名刹の空間にインスタレーションの1つとして在ることだとお気づき頂けるのではないかと思う。

日本人は宗教というと拒否反応が出やすいように思うが、ここ最近はスピリチュアルな世界への関心が高まってきている。「寺院」を「パワースポット」と置き変えると素直に受け入れられたりもする。聞くところによると「パワースポット」を日本に流行らせたのは、雑誌「CREA」の特集がきっかけだとか。このことから老若男女がパワースポットを訪れるツーリズムにまで発展した。

それならば、更にもう一歩発展させて寺院をアートの展示空間としてパワースポット化してもらいたい。加藤氏、金澤氏のように現在活躍している作家の作品であれば、ご本人がそこに佇む姿もインスタレーションの演出の1つにもなるだろう。または速水御舟の「炎舞」など、絵画そのものに宿るパワーがある作品を寺院のインスタレーションとしても面白い。アート、人、寺院それぞれが持つパワーが相まって、より強力な「ウルトラ・パワースポット」とすることが可能ではないか。「ウルトラ・パワースポット」に人が集うことで、宗教の教え(主に仏陀の智恵)に触れて心が洗われハッと気づけることがある様なインスタレーションを望みたい。恋愛成就や合格祈願を目的にしたパワースポット行脚とは一線を画した「人の心を動かす新しい体験」を「ウルトラ・パワースポット」に持たせたい。

この秋の紅葉を見に行く機会がある人は、寺院を訪れてそれぞれのインスタレーション体験で心を動かしてみてはどうだろう。何か大切なことを思い出す機会になるのではないか。

自分にとって、早朝散歩は僅かながらではあるが、精神的・身体的な利益があったと言っていい。

どうやら早起きは三文の徳だと言えそうだ。

出典:加藤巍山HP 「示現・序」/金澤翔子HP 「心」/山種美術館HP 速水雪舟「炎舞」 

@blue.sky

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