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まだ見ぬ壁の向こうへ

 人は成長の壁にぶち当たるものだ。仕事、スポーツ、趣味などで、思うような結果に結びつかない時期がある。物事を始めた頃は、意気揚々と取り組んでいても、ある程度上達してくると、そこから先の成長曲線が逓減し成長を実感しづらくなる。そうすると、モチベーションが低下した状態が続く。また、自身の課題が明確であっても、課題がクリアされず、「自分には向いていないのではないか」といった自問自答を始める。このような体験は人生の中で何度か訪れるように思う。

 

 成長の壁をなかなか乗り越えられないのは、努力の仕方が悪いのか、それとも能力が不足しているからなのか。世に言われる成功者は、「壁を乗り越えるための圧倒的な努力が大事である」とか、「壁は乗り越えるのではなく壊すものである」などと、各々の成功体験を口にする。しかし、本質ではあっても表層的なポイントだけでは、そんなに簡単に乗り越えられるものではない。

 

 人生100年時代に、今後出くわすかもしれない成長の壁を再現性高く乗り越えることができたら、どんなに充実した人生を送れることだろう。本コラムは、壁を乗り越えようともがいている方に向けてのエールとして記す。

 

 はじめに、前提として、人が成長の壁を乗り越えられなくなるメカニズムを簡易的に整理してみることにする。(※様々な見解があるが本稿では単純化している)

 ①    成長の壁(課題)が立ちはだかる

 ②    乗り越え方が分からない、もしくは分かっていてもうまくいかない状態が続く

 ③    成長の壁(課題)が自身の中で相対的に大きくなる(ウェイトが拡大)

 ④    自信を喪失する

 ⑤    自己否定するようになる(アイデンティティのゆらぎ)

 ⑥    成長の壁(課題)を乗り越えられずに押しつぶされる(リタイア)
 

 このようなメカニズムが働くことで、成長の壁を乗り越えられなくなるように思う。ポイントは、③成長の壁が自身の中で相対的に大きくなる中で、④自信喪失、⑤自己否定につながることで、いつの間にか壁がどんどん肥大化していき、③→④→⑤という“負のスパイラル”にはまってしまう場合があるのだ。こうなっては、自身の容量を大幅に超えてしまい、気力もなくなり、本来乗り越えられる壁もうまく乗り越えられなくなる。

 

 では、成長の壁を乗り越えるためには、どのようなことを考えるとよいだろうか。上記のメカニズムを前提にした場合、メカニズムが働かないように自身ができることに集中して取り組むことが重要だ。それは、A:①②の段階で成長の壁を正確に把握すること、B:③の段階以降で壁を肥大化させないこと、AとBの2つの視点をもとに、必要以上に“負のスパイラルに”はまらないように気を付けながら、壁に向き合うのである。もう少し詳しく触れてみよう。

 

A:壁を正確に把握すること

 どんな課題解決もはじめに取り組むことは、現状を正しく認識することである。意外なことに、この準備ができていない、つまり壁がどんなものかがよく分からないまま、壁を乗り越えようとしている方を見かける。この状態では、壁の特徴、壁を上る手順、壁を上るために準備すべきことなどが曖昧なまま、適当にクライミングしていることになり、当然うまく乗り越えられるはずがない。

 

 壁を正確に把握するには、言語化と可視化をお勧めする。頭の中にある曖昧なイメージは、あえて書き出してみることで整理される。さらには、アウトプットしたものをもとに、周囲と話してみるとよい。自身には見えていない視点や捉え方の発見につながり、壁に対する解像度が高まりやすくなる。この場合、自身よりも視座が高く視野が広い人物の客観的な意見を求めるとより効果的である。いずれにせよ、自分だけで悩まず、周囲に助けを求めて、周囲をうまく活用することが大事である。

 

 因みに、世の中の全ての事象には、事象が発生する原因と意義があるものだ。とすると、自身の壁を「~な性質のもので、‥が原因で生じており、自身にとって…な意義がある」といった具合にまで落とし込むことができれば、乗り越えるべき壁に向き合う準備が整った状態になる。

 

B:壁を肥大化させないこと

 自身の中で相対的に壁が大きくなると、自身の容量に占める壁のウェイトが大きくなり、視野狭窄な状態になってしまう。その状態では、普段とは違って適正な思考や判断ができなくなり、パフォーマンスが落ちてしまうものだ。この状態を意図的に回避することが、極力壁を肥大化させないことなのである。以下、2つのコツを紹介する。

 

 まず1つ目のコツは、壁を相対的に小さくしようと努めることである。例えば、「壁に向き合う時間は人生の中で短い時間である」と、長い時間軸で見て壁を相対的に小さくすることや、「壁を越えたら新たな世界が待っている」など、成長した自分というプラスのイメージのウェイトを高めることで、壁を相対的に小さくするといった具合だ。このようなメタ思考は一定の訓練が必要であるが、事象をあえて俯瞰してみることが重要だ。大自然に触れた時に、自分はなんて小さいのだろうと思う感覚を持ちながら、一歩引いて壁と自身を眺めてみるイメージである。

 

 また、丁寧な暮らしを心がけることも重要だ。なぜならば、生活習慣が乱れて心身共に不調をきたすと、自身の容量が小さくなり、相対的に壁が大きくなってしまうからである。つまり、壁に向き合っている時こそ、いつも以上に健康管理や身の回りの生活習慣を整えて、心にゆとりを持つことが大事になる。くれぐれも、一時的な楽しさを優先して、深酒をしないようにしたいものである。

 

 2つ目のコツは、過度に自信を無くすことや自己否定をしないように気を付けることだ(メカニズムの④⑤)。人は悩みについて考え過ぎると、「自分はこんなこともできない → あの時もこんなことがあった → そういえばあんなことも→ 自分っていったい・・」といったように、目の前の課題に対して、色々なものを連想し、それを結び付けて複雑化してしまうことがある。

 

 そうならないためにも、不要な連想を意識的に抑止してもらいたい。連想をし始めたら、その連想は壁(課題)とは無関係であり、連想自体が意味のない行為であると自身に言い聞かせるのだ。因みに、Aで記載したように、目の前の壁を客観的かつ正しく把握することができていれば、不要な連想を抑止するきっかけになるだろう。

 

 また、壁に向き合っている期間は、苦手なことやできないことが目立つようになるが、自身の良さが消えたわけではない。むしろ、この壁を乗り越える過程で、元々の良さに磨きがかかるものだ。自信を喪失している時は、自らのアイデンティティを過度に傷つけないように、“何とかなる”といったような健全な開き直りをするぐらいで丁度よい。他にも、小さなことでよいので、できていることに目を向けて、自己肯定感を高めることもよい。

 

 以上のように、A:壁を正確に把握すること、B:壁を肥大化させないことの2点から、成長の壁を乗り越える際に、負のスパイラルにはまらないためのポイントをお伝えしてきた。

 

 当然ながら、壁を乗り越えるためには、自身が取り組むべきことを日々愚直にやり切る必要がある。やるべきことをやらずに、AとBを実践するだけでは、壁を乗り越えることは難しいだろう。(それで乗り越えられる壁は、そもそも大きな壁ではないはずである)大前提として、日々の鍛錬や習慣化の積み重ねが大きなチャンスを引き寄せ、ある一定の閾値を超えた時に、いつの間にか壁を越えているものなのだ。

 

 ところで、少しだけ視点を変えてみたい。人は壁を乗り越えた後も成長し続けるものである。ただ、乗り越えたからといって歩みを止めてしまえば、次の成長の壁はやってこないのではないか。1つの大きな壁を乗り越えた後も、苦しい時期を忘れずに、謙虚な心持ちで新たな壁に備えることが、次の壁も再現性高く乗り越えていくことにつながるように思える。

 

 本コラムは、1つの考え方を示したまでであり、ぶつかった壁や置かれている状況によって変わる可能性もある。ただ、元メジャーリーガーのイチロー氏は、「壁は超えられる可能性がある人にしかやってこない。よって、壁が来たらチャンスである。」と述べている。

壁を超えることを自身があきらめない限り、超えられない壁はないのだ。現状壁にぶつかっている方は、非常に苦しい時期を過ごしていることであろう。しかし、後々壁を乗り越えた自分が、壁の前に立ちはだかっている今の自分にきっとこう言うはずだ。「今は踊り場だ。もうすぐ乗り越えられるから、その壁を楽しもうよ」と。

 

                                      U2

 

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