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2017.07.03

留学生出身外国人労働者の定着率向上について

 最近、人手不足が日本経済の制約要因になりつつあるとの見方が増えている。事実、2016年までの10年間、日本の生産年齢人口(15~64歳)が760万人減少した。株式会社帝国データバンクが発表された「人手不足に対する企業の動向調査(2017年1月)」によると、企業の43.9%で正社員不足を感じていると回答しており、特に昨今は、宅配業界をはじめとする多くの業種で人手不足が目立っている。    人手不足が進む中、スーパーや百貨店の営業時間短縮やファミリーレストランの24時間営業の取りやめの他、宅配業者のサービス縮小などが相次ぎ、今まで当たり前だったサービスの見直しを始めた業界もある。しかし、根本にある人手不足を解消しなければ、更なるサービスの縮小もあり得るだろう。そこで、人手不足を解消する労働力として期待されるのが、女性や高齢者、そして外国人の労働者である。 厚生労働省が発表した外国人雇用の届出状況によると、2016年10月末時点の外国人労働者数が初めて100万人の大台を超え、前年同期に比べて19.4%も増えた。一番多かったのは技能実習生で、25.4%増の21万1108人で、その次は留学生で、25.0%増の20万9657人だった。 現在、留学生人数が毎年増えていて、さらに学校を卒業しても帰国せず、そのまま日本で就職することを希望者する人数も増えている。しかし、日本での就職を希望者する留学生の内、実際には約半数の留学生しか就職できていない状況だ。これはとてももったいないと見られる。留学生の就職支援の強化などの理由から、今後も外国人留学生の人数が増え続ける見込みなので、人手不足を解消するためにも、もっと積極的に採用していくべきだ。 実際、外国人留学生を採用しようとする企業は年々増えている。株式会社ディスコ キャリタスリサーチが2016年11月に発表した、「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」によると、調査に回答した企業のうち、2016年度外国人留学生を「採用した」企業は予定を含め全体の38.1%を占めており、2017年度の採用を見込んでいる企業は59.8%と半数以上に昇っている。企業側の留学生に対する期待が上がっていることが分かる。 しかし、毎年外国人留学生の採用が増える一方、定着率が低いようだ。2015年3月に、新日本有限責任監査法人が発表した「平成26年度産業経済研究委託事業 報告書」によると、留学生出身の外国人社員の平均勤続年数は、「5年程度」が最も多く39.1%、次の多いのは「3年以内」で32.4%と、合わせると70%以上が5年の内に辞めている。 ※ご参考までに: 2016年10月25日に厚生労働省が公表された「新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況)によると、事業所規模1,000人以上の場合、離職率が23.6%だった。(注1) 留学生の採用を進めることで人手不足を解消して終わりではなく、せっかく採用した留学生出身の外国人社員の定着率を向上させることも考えなければいけない。  それでは、具体的に退職理由を見てみよう。株式会社ディスコが発表された「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査(回答社数:628社)」で掲載された(発表された?)、外国人社員の退職理由(複数回答可)は、以下の通りだった。(2割占以下の回答は省略) ・母国へ帰国するため(49.1%) ・キャリアップのため(35.8%) ・仕事への適性の問題(19.5%) ・日本の企業文化が合わなかった(19.1%)  最も回答が多かったのは「母国へ帰国するため」で半数を占めている。母国へ帰るという理由の背景には、さらに様々な理由があると思われるので企業としても引き留めるのが難しいかもしれない。しかし、見方を変えれば、辞める外国人社員の半数は帰国するのではなく、日本国内に留まり働くことを希望している。つまり、3~5年で退職してしまう外国人留学生出身社員も、多くは日本で継続的に働くことを希望していると考えられ、企業から見ても充分に引き留める余地があると期待できる。そこで、「母国へ帰国するため」以外の退職理由について、考えたい。  「母国へ帰国するため」に次いで多いのが、「キャリアアップのため(35.8%)」である。母国を出てチャレンジしようというのだから、成長願望が高いのは当たり前である。日本企業が重視する下積み文化をどれだけ若手社員に伝わるか、それにその先にどんなキャリアパスが待っているのかを、外国人社員であれ、日本社員であれ、伝わることがとても大事だといえるだろう。 次に、多かったのが「仕事への適性の問題」と「日本の企業文化が合わなかった」であり、それぞれ2割を超えている。私自身も外国人社員として、日本企業に勤め、転職した経験を持つ。その中で、実際に感じたものとして、 ・日本語でのコミュニケーションがうまくとれない ・日本語の細かいニュアンスや行間が説明されない ・日本企業特有の文化(年功序列、意思決定が遅い、昇進が遅い、飲み会、残業)が説明されない ・日本企業社内の受け入れ体制が未整備 があげられる。  外国人留学生は、すでに一定期間日本で生活しており、日本語が堪能であるためコミュニケーション力が高いとか、日本人が日常的に使っている言葉、言い方で分かると思われがちだが、必ずしもそうではない。日本人同士であれば、日本語特有の曖昧さや言葉で敢えて説明しないこと、言わなくてもわかってくれるニュアンスといったものがあるが、これが長く日本で生活してきた外国人であっても分からないこともあり、コミュニケーションで困っている人は絶対に少なくはない。 そこで、外国人と仕事をする場合には、例えば仕事の内容や期限などについて、分かるだろうと思って説明するのではなく、意識して具体的に明確的に伝えたり、外国人も普段から日本人社員と交流して仕事上の話や悩みが相談できるようなコミュニティを作ったりすることも改善につながるのではないかと思う。  次に、日本企業特殊の文化について。これに関しては、「なんでそんなことをするのか」という理由と背景を、どれだけ伝えることができるかがカギになると感じる。私も理解できていない頃、一番嫌いだったのは飲み会だった。ほぼ話したこともない人の送別会に行ったり、プライベートの予約を入れているのに、急に当日になってチームメンバーで飲みに行くといわれたり、大変いやな気持だった。  残業に関しても、入社したばかりの時に、自分の仕事が終わったら、さっさと帰ったら怒られた経験があった。その時は、「自分の仕事が終わったのに、なんで残業しないといけないの?」と思ったが、チーム力を大事にしているから、ほかの人が困っていないかと手伝うのが親切だと教わって、初めて怒られた理由が理解できた。お互い文化の違いを知り、理解すること、これがコミュニケーションを取る上で、大前提にすべきことだ。  もう一つは日本企業社内の受け入れ体制が未整備であること。日本人が海外に行く際には、その国できちんと働けるように準備をしていくのに、外国人を受け入れて一緒に仕事をすることについては、何ら準備や心構えをしていないのは、ある意味不思議である。もちろん、すぐにでも受け入れることが簡単ではないだろう。ただし、自分と違う考えや習慣を持つ人に対して、自分側の習慣に引っ張ろうとするのではなく、背景を理解し、いいと思うことをどんどん受け入れる努力をする。それが、外国人社員の定着率をアップできるかどうかの分かれ目ではないかと思う。  外国人留学生社員の定着率を上げるには、今感じている問題点に向き合い、変えていかないといけない。2025年には今よりも日本で働く外国人の方は約53万人増え、全労働人口に占める割合は2.3%まで伸びる見込みだ。人数の伸びだけを注目せず、キャリアアップを求める優秀な外国人社員の定着率の向上も考える時期だと思われる。 参考: (1) 「人手不足に対する企業の動向調査(2017年1月)」 https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p170206.html (2) 「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」 http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/global/pdf/H26_ryugakusei_report.pdf 注1:厚生労働省HPによるデータ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000140526.html

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