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2020.04.13

COVID-19の収束に向けて

 いま、COVID-19の感染拡大に伴い、地球全体が大きく揺るがされている。

 感染された皆様とそのご家族や親しい友人の皆様の心身共に健康な状態に回復されることを心よりお祈り申し上げる。

 

 いよいよ日本でも緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛の本格化などが進んでいるが、果たして早く収束に向かうことができるのであろうか。日々不安を抱えながら生きている方も多いのではないだろうか。COVID-19対応で尽力されている政府関係者および医療従事関係者の皆様には改めて敬意を表し、心から労いの言葉をお送りするとともに、私が今回の対応から得た学びを本稿に少し書き留めてみたい。

 

 今回のCOVID-19は、その感染力と対処療法のなさから、最も重要な対策は個々人の意識改革と行動変容とされている。しかしながら、日々のニュースで流れてくる感染者数も日に日に増加していくばかり、いつ医療崩壊の現実が突き詰められてもおかしくはない。個々人の価値観は様々であり、一律に行動変容を促すというのはかなり困難な事態である。実際に、職業柄や自分たちの生活維持の目的のためには在宅では難しく外出が余儀なくされていたり働かざるを得ない状況も存在する。では、どうすればCOVID-19に向けて個々人の行動を国としての全体最適に導くことができるのか。この個々人の行動変容を促し全体最適に導いていく上での課題という意味では、企業の中における組織マネジメントにおいても同様のことがみてとれる。部下に行動変容を促したいが、なかなか実現できないと日々悩まれている管理職の方も多いのではないか。なおさら、国単位での規模となればその難しさは想像を絶する。COVID-19の収束に向けた行動変容へのアプローチとして、一般的な組織マネジメントのセオリーも踏まえ、今回の件から学び取れる、重要なポイントは以下の3点であると私は考えている。

 1.変革の8ステップの適応可能性

 

 ジョン・P・コッターの名著「企業変革力」の中で組織変革の8ステップというものがセオリーとして語られている。これは環境変化激しい昨今の状況の中で変化を生み出していく企業すべてに共通して活用できるフレームであるが、今回のCOVID-19対応についても国を一つの組織としてとらえた場合にも有効なのではないか。

 

 〇変革の8ステップ

  • ①危機意識を高める
  • ②変革推進のための連携チームを築く
  • ③ビジョンと戦略を生み出す
  • ④変革のためのビジョンを周知徹底する
  • ⑤メンバーの自発を促す
  • ⑥短期的成果を実現する
  • ⑦成果を生かして、さらなる変革を推進する
  • ⑧新しい方法を企業文化に定着させる

 

 上記が変革の8ステップだが、ここでのポイントは一つ一つ着実にステップを積んでいかなければならず、途中のステップを飛ばしては変革は実現しないとされる。
 今回のCOVID-19対応を振り返ってみると、①②は十分になされている(②については議論のわかれるところではあるが、当然のようにCOVID-19対応に向けた専門家チームは組織化され動いているものと推察される。)が、③④が弱く⑤のメンバーの自発を促す状況に至っているのかもしれない。また、⑥の短期的成果が見えてこないため、⑦⑧の個々人の行動変容が実現するところまで至っていないのではないだろうか。

 

2.トップダウンアプローチの限界

 

 メンバーのマネジメントを通した組織活性化に対するアプローチは大きく以下の3つが考えられる。

 

  1. トップダウン型 (Top-Down approach)
    組織長からタテの落とし込みによって活性化させる手法であり、組織のヒエラルキーが成熟していて既存の成熟したナレッジを浸透させる場合に有効
  2. ヨコヤリ型 (Side-Swipe approach)
    他組織(時としては外部組織)とのコミュニティ組成によって活性化させる手法であり、既存のナレッジが陳腐化し、新たなナレッジを導入する場合に有効
  3. ボトムアップ型 (Bottom-Vitalization approach)
    現場の自発的な活動によって活性化させる手法であり、ベンチャー企業など組織風土としてボトムがすでに活性化している場合に有効

 

 今回のCOVID-19対応では、政府主導による自粛要請といういわゆるAのトップダウンアプローチに終始している印象を受ける一方で、個々の国民の行動変容に向けた活性化を狙っているという、どちらかというとCのアプローチが自然発生することを目指しているというちぐはぐな状況に陥っているのではないだろうか。まだ新たなナレッジがどこも確立できていない状況なので、Bのアプローチは難しいが、Aのトップダウンアプローチに終始するのではなく、Cのボトムアップ型のアプローチも並行してトライするとより収束に向かいやすくなるのではないか。

 

3.問題解決型アプローチの閉塞感

 

 ビジネスの世界で組織をマネジメントし、メンバーの行動を促していくやり方として、いま起きている客観的な問題に対してアプローチする問題解決型アプローチ(イシュードリブン)とあるべき状態を指し示しそこに向けて何をすべきかを明確にしてアプローチしていくビジョン達成型アプローチ(ビジョンドリブン)がある。

 今回のCOVID-19対応では、イシュードリブンな問題解決型アプローチに終始しているきらいがあるのではないか。スピーディさが求められる状況ではそのアプローチが有効な場合も多いため、決して間違いではないのだと思うが、全国民の行動変容を促すにはそれだけでは限界であるように感じる。最初に述べた8ステップにおける③④にも通じるところであるが、全世界として日本国としてどのような状態になりたいのか、希望のあるビジョンを指し示し、それに国民を動機づけるビジョン達成型アプローチを並行して検討していくことが求められているのかもしれない。



 以上3つのポイントを踏まえると、COVID-19の収束に向けては、まず国としてどのような状態になりたいのか希望あるビジョンを指し示した上で(1ー③④、3)、トップダウン型アプローチに終始せずに、例えば飲食業界の現場でどのような取組をすれば実現できるかを吸い上げ自発的に行ってもらう仕掛けをつくる(とあるコミュニティにおいてGWまでは営業休止とする一方で、GW後に飲食利用月間などを設けて顧客、法人双方にメリットのある取組を促すことで、緊急事態宣言発令期間中の行動自粛をコミュニティ単位で促す)などボトムアップ型のアプローチ(1ー⑤、2)も行い、短期的な成果として行動自粛によるCOVID-19感染者のピークアウトを実現する(1ー⑥)ことで更なる収束に向けた動きを加速させる(1ー⑦⑧)ことが効果的なのではないかと考える。

 

 COVID-19という世界共通の敵ができたことはある種の機会である、もしかしたらこれを機に国民と政治の在り方がより良い方向に変わっていくかもしれない。一刻も早い収束を心より願うと同時に、そのような議論が健全と進み、世界のさらなる平和と発展につながるよう祈念してやまない。

 

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