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2020.09.15

日本人がより幸福を感じるには「自分らしさ」が必要。

毎年 「世界幸福度調査」(World Happiness Report)が発表されている。この調査は、国連の持続可能な開発ソリューションネットワークSDSNが米国ギャラップ社の収集データを元に英米の研究者チームの協力を得てまとめている。

 

2020年3月に発表された国別幸福度ランキングによると日本は156か国中62位だった。過去のランキングを見ていくと、2015年46位、2016年53位、2017年51位、2018年54位、2019年58位と年々下がっている。

では、日本人はどんどん不幸になっているということなのだろうか。確かに人間には不幸なことも起こる。 しかし、それは日本人に限った話ではないはずだ。日本に住んでいて、他国に比べると治安のよさ、清潔さ、インフラの整備、一見不幸を感じることはなさそうな気もしてくる。

 

日本人が幸福を感じるには何が足りないのか。世界幸福度調査ランキング上位の国 (1.フィンランド、2.デンマーク、3.スイス、4.アイスランド、5.ノルウェー)と日本を比べて、日本人がより幸福を感じるためのヒントを探りたいと思う 。

 

まず、神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、国内2万人に対するアンケート調査の結果、所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていることを明らかにしている。

そして学者たちも次のような言葉を残している。

哲学者セーレン・キルケゴールは自分固有の生きる目的「主体的真理」「自分にとっての真理」「たとえ世界を征服したとしても、自分自身を見失ってしまったとしたら何の意味があるというのか」。

心理学者アブラハム・マズローは人間の欲求を5段階の階層で理論化し、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」。

 

以上より、「自分らしさ」は人が幸福になるために影響を与えるといってよいだろう。では、日本は自分らしい生き方ができる環境なのだろうか。

 

まず自分らしさとはなんだろうか。「らしさ」とはそのものの特徴がよく出ていること、そのものが持っている独自のものである。つまり自分らしさとは、その人の考え方、価値観、性質のことである。自分らしさを制限されない環境であるかどうかが、国民全体が幸福に感じるかどうかのポイントになるのではないだろうか。

そこで考え方、価値観の発信を制限されない世界報道自由度、そして考え方、価値観、性質の違いを受け入れられる道徳の自由のランキングを挙げる。

 

・世界報道自由度(180国中・幸福度ランキング順)

1.フィンランド 2位

2.デンマーク 3位

3.スイス 8位

4.アイスランド 15位

5.ノルウェー 1位

62.日本 66位

 

・道徳の自由(160国中・幸福度ランキング順)(※1)

1.フィンランド 21位

2.デンマーク 12位

3.スイス 13位

4.アイスランド 41位

5.ノルウェー 20位

62.日本 64位

 

やはり発信者目線・受信者目線のどちらから見ても、自分らしさを制限されない環境であるかという点において、日本は幸福度ランキング上位の国々と比べ、いずれも順位が低い。

報道の自由がないと、本当に主張したいことは主張できず、自らの意思を伝えることはできない。自分らしさを発揮することは難しい。道徳の自由がないと何をするにしても考え方を押し付けられ、強要される。仕方なくやりたくないことをすることになり、自分らしく生きることから遠ざかる。

 

さらに、もう一つ、より自分らしさに直接的に関係・寄与するのではと考えられる項目が“本当の”職業選択の自由だ。ここで“本当の”とあえて入れているのは、日本では自分で職業を選ぶことができる。やりたくない職業はやらなくてよいので自由だ。しかし、人生のレールから外れることに対する周りの目、圧力、意見を気にせずに自分の思いに素直になって職業を選ぶことができているかという観点からみるために“本当の”という言葉をつけた。

幸福度ランキング1位であるフィンランドでは、卒論を提出すればいつでも卒業できるため、大学の卒業時期が決まっていないという。そのため日本のように一斉に就職活動が始まらない。自分の好きな時に就職をすることができる。一度働いてみて、自分のやりたいことと違うと感じたら再度大学に入って学びなおすことができる。授業料は無料だ。人生のレールや勝ち組という考え方がないため、自分のやりたいときに自分のやりたいことができるという。

日本では内閣府の国民生活に関する世論調査によると、働く目的は何かという質問に「お金を得るために働く」と答えた人の割合が56.4%と一番多い。また、どのような仕事が理想的だと思うかという質問には「収入が安定している仕事」を挙げた人の割合が60.5%と最も多い。つまりお金から解放されれば、周りの目、圧力、意見から解放され、自分らしさを発揮することができるのではないかと考えた。必要なものはそろっているのに、もっとお金がほしいと思うのは比べる周りの人がいるからではないだろうか。そこで所得格差についてランキングを見ていきたい。

 

・所得格差の低さ(141国中・幸福度ランキング順)

1.フィンランド 11位

2.デンマーク 5位

3.スイス 19位

4.アイスランド 16位

5.ノルウェー 7位

62.日本 69位

 

やはり所得格差は職業を選ぶ際の自分らしさに関係してくるのではないだろうか。日本に住んでいると、収入、見栄、ステータスのために“本当に”やりたいことではない職業を選んでいる人が多いと感じる。どこのブランドの服を着ているか、どこに住んでいるか、どこの会社で働いているか…… 自分の前にいる人がどういう人かは大切ではなくなり、相手の外見を気にしている。しかし収入が同じだったらどうだろうか。同じ収入なのであれば、勝ち組や負け組、周りの目は関係ない。自分のやりたいことがどれだけできるかが、職業を選ぶ際に重要になってくるのではないだろうか。そのため自分の“本当に”やりたい職業を選ぶ人が増えるのではないだろうか。自分らしく、自分の好きなことをして生きることに繋がると考えられる。

 

日本人がより幸福を感じるためにはランキング上位の国々から学ぶ必要がある。以上より、日本が学べることの一つは「自分らしさ」を大切に生きることである。日本には自分らしさを発揮する環境が足りていない。自分の思いを制限されることなく自分らしく生きることが、日本人がより幸福を感じることができるようになると考える。 そのためには、もちろん一人一人が自分を持つことは大切である。その上で自分らしさを出せる環境、関係作りとして、お互いを尊重し合い、受け入れることから始める必要があるのではないだろうか。一人一人が変わることで、周りも少しずつ変わり、日本全体が変わることを期待したい。

 

 

※1 道徳の自由

宗教の自由(宗教を信仰することも信仰も信仰しないことの自由と国家に対する宗教的支配の状況の両方を考慮に入れること)

生命倫理の自由(中絶、安楽死、代理出産や幹細胞研究などの生命倫理に関連するその他の慣行を含む)

薬物の自由(大麻の法的地位およびハードドラッグに関する国の一般的な政策を含む)

性的自由(同意する成人の間のポルノとセックスサービスの法的地位、および国の性的同意の年齢を含む)

家族とジェンダーの自由(女性の移動の自由、未婚カップルの同棲の法的地位、同性結婚、トランスジェンダーの人々の状況を含む)

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