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2021.04.12

眼鏡の力

今年も入社、異動の季節がやって来た。世の中は、相も変わらず新型コロナに振り回され、対面でのコミュニケーションが難しい状況ではあるが、それでも、多くの企業では、日々、新しい出会いが生まれているのではないだろうか。

 

さて、人の印象は、概ね第一印象で決まると言う話がある。その印象も、話の内容ではなく、言語情報以外のノンバーバルな要素(ジェスチャー、表情、態度、声のトーンや大きさ、話すスピード、服装、髪型、匂いなど)で9割方決まってしまうようだ(=メラビアンの法則)。人の思い込みの力というものは思った以上に強く、一度、印象付けられたものは、中々変えられるものではない。時間をかけて相手を知る中で、“そんなことを考えていたのか”、“そんな一面もあったのか”と改めて気づく経験を、貴方も少なからず、持っているのではないだろうか。

思い込みの力は、日常あまり意識することはないが、他の場面でも垣間見ることができる。例えば、今いる場所を見渡し、何でも構わないので「赤色」のものを見つけるとする。そして、目を閉じて、その「赤色」のものを挙げていく。次に、目を閉じたまま、今度は「青色」のものを挙げていく。恐らく、「青色」を挙げるのは難しかったはずだ。このように、人間は意識すれば集中し、認識し、探すことができるが、意識しなければ集中、認識できず、探すこともできないのである。

また、心理学の世界では、相手の一部分に対する評価を全体に対する評価として錯覚してしまう、「ハロー効果」と呼ばれる有名な心理効果がある。ハロー(halo)とは、英語で「後光(天使や聖人の背後から差す光)」のことであり、「肩書き」や「見た目」などの後光に目がくらんで、その人の本質や全体像が見えづらくなってしまうことを指している(※1)。

 

詰まるところ、「人間の脳は自分が設定した理由を探す力がある」と言うことができる。

注意しなければならないのは、この力は、ポジティブにもネガティブにも働き得るということだ。

 

そして、この力を重要視していたのが、経営の神様と言われた松下幸之助である。彼は、採用面接に立ち寄った際に、必ず「貴方はツイてる人か?」と訊ねたそうだ。良い意味づけをできる人は、周囲に対する感謝の気持ちも忘れないため、「ツイてる」と答えた人だけ採用にしたようだ。もし今、貴方が同じ質問をされたら、「ツイてる」と答えるか、自問自答してみると良い。採用面接ではないにせよ、「No」と答えた方は、注意が必要かもしれない。

 

一方で、昨今、HR Techの名の下、ビッグデータとAIを活用し、採用、異動・配置、労務管理、人材育成や組織開発に至るまで、あらゆる場面で人をタイプ分類して、これを活かそうとする動きが顕著である。国内HR Tech市場も2016年の約120億円から、2023年には1000億円以上まで急拡大すると予測されている(※2)。

HR Techにより、これまで人の経験と勘で運用されてきたHR領域に、プラスの作用が生まれることは想像に難くない。しかし、安易に人をタイプ分類し、ラベル付けしてしまうことは同時に、“不用意に、且つ不適切な”思い込みを人の頭に植え付けるリスクがあることも認識することが大切だ。開発者はもちろん、一人ひとりが「思い込み」の力を認識し、上手く活用することが、HR、ひいては日常の絶え間ない人と人とのコミュニケーションをより良いものにするだろう。

 

最後に、日本人であれば、人生で一度は血液型による性格診断の話をしたことがあると思うが、血液型と性格の関連性に科学的根拠はないと言われている(※3)。さて、貴方の“心の眼鏡”も、より良いものに替えてみてはいかがだろうか。

 

 

<脚注>

※1:他にも、「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」と呼ばれるものもある。これらの違いは、相手に期待するかしないかであるが、相手に対する思いがその当事者に影響してしまうという点は共通している(以下、ご参照)。

 「ピグマリオン効果」:心から期待をかけると、相手がその期待に応えてくれる、という心理効果

 「ゴーレム効果」:相手に見込みがないと思っていると、実際その通りになっていく、という心理効果

※2:「ミック経済研究所」より https://hrnote.jp/contents/b-contents-hukyugannen-190423/

※3:「縄田健悟 2014 年「血液型と性格の無関連性―日本と米子区の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」心理学研究」より

 

 ノラ猫

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