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2025.03.03

ひな祭りはだれのもの?

 3月3日はひな祭りのお祝いの日であり、桃の節句である。子供の頃、両親がひな人形を飾ってくれ、ちらし寿司やひなあられを食べたことを覚えている。ひな祭りは女の子の健やかな成長を願う伝統行事として知られている。男の子には5月5日の端午の節句があり、武者人形や鯉のぼりを飾る習慣がある。これらの節句の起源を調べてみると、桃の節句も端午の節句も五節句の中の一つであった。五節句とは、1月7日の人日・七草の節句、3月3日の上巳・桃の節句、5月5日の端午・菖蒲の節句、7月7日の七夕・笹竹の節句、9月9日の長陽・菊の節句の五つであり、中国から奈良時代に伝わったとされている。これらを江戸幕府が、式日という“儀式のある日”として定めたことで、民衆に広まっていった。
 3月3日の上巳・桃の節句については、上巳の日に川で身を清めるという風習が中国から日本に伝わり、日本の宮中行事として元々行われていた「ひいなあそび」という草や藁などで作った人形に厄や穢れを移して川に流す行事と混ざり合い、ひな祭りになったとされている。また、節句とは“節目の日を無事に過ごすためのお供え物や祝儀の料理を伴うもの”だったため、ひな祭りの料理も捧げ物だった。

 

 現在は、節分が終わった頃から2月中旬にかけてひな人形を飾り始める。3月3日にはお供え物であるひなあられやちらし寿司などを食べて甘酒を飲んでお祝いをし、ひな祭りを終えたら天気の良い日にひな人形を片づけるというのが一般的である。2024年にひな祭りのお祝いをした人は29.5%で、そのうち29歳までが最も高く41.2%であった。50代に向けてだんだん実施率は下がっているが、60代・70代で回復している。ひな祭りのお祝いをした人たちの6割は何歳になってもやりたいと答えている。これらのことから、現在はどの年代にも身近な行事になっており、特に小さな子供がいるであろう20~40代の子育て世代と、孫がいるであろう60歳以上の実施率が高いと考えられる。

 

 近年、ジェンダーに関する価値観は変化しているが、ひな祭りや端午の節句のような「女の子のための」「男の子のための」といった行事は変化していくのか考えてみた。思えば、子供の頃には、ひな祭りや端午の節句などの行事を始めとして、幼稚園や保育園での遊び方、七五三やランドセルの色選びなど「男らしさ」や「女らしさ」に囚われがちであった。現在ではランドセルの色も黒や赤だけでなくたくさんの色とデザインが展開されており、男の子は黒、女の子は赤というような凝り固まった選択ではなく、その子自身が好きな色を選びやすくなっている。ひな祭りに話を戻すと、ひな人形を販売する人形店の中には、通常の男女セットの人形ではなく、女性カップル同士からの問い合わせにより、女びな同士での販売をするお店も現れている。今後は、ひな祭りや端午の節句も、子供の身体的な性別に関わらず「子供の成長を祝う日」として、男女の区別なく楽しむケースも増え、全ての子供が主役となるような新しいお祝いの形が生まれるかもしれない。

 

 海外にもひな祭りや端午の節句のようなイベントがあるか調べてみた。インドには「ナヴァラトリ」という9日間にわたってヒンドゥー教の女神に祈りを捧げるお祭りがある。これは女の子ではなく全女性が対象であるが、ひな人形と同様にインドの神の人形をひな壇に並べるところが共通している。男女問わず祝うのが一般的とされていて、近年ではジェンダー平等の象徴ともなっている。

 韓国では、5月5日は子供の日とされており、祝日となっている。子供や家族を楽しませるためのイベントが開催される。母の日・父の日も分かれておらず、父母の日として定められている。

 スウェーデンでは、ルシア祭りが開催され、白いドレスに赤いベルトを腰に巻いた子供たちが手にキャンドルを持って伝統的な歌を歌いながら練り歩き、その先頭を聖ルシア役の少女が歩く。少し前までは、全国各都市で聖ルシアコンテストという美少女コンテストのようなものが開催されていたようだが、近年は男女平等のスウェーデンではそのようなことは見られない。

 各国の2024年のジェンダーギャップ指数を見てみると、スウェーデンが5位、韓国が94位、日本が118位、インドが129位であり、ジェンダーギャップ指数と明確な相関性はないが、順位が高いほどこのような伝統行事にもジェンダーに関する変化が表れて始めているかもしれない。

 

 ひな祭りや端午の節句は、長い歴史の中で形を変えながら受け継がれてきた。現代においても、社会の価値観やライフスタイルの変化に合わせて進化し続けている。個人的には、日本の古式からの伝統であっても、伝統をそのままの形で守り抜くことに固執する必要はないと考えている。現代の人に受け入れられずに伝統が廃れてしまうより、伝統の良い部分を尊重し受け継ぎながら、時代にあった形式に変化して誰もが楽しむことができる方が長く続いていくと考えられるからだ。多様性を尊重する時代において、これらの伝統行事がどのように変化し、どのように受け継がれていくのかは、私たち一人ひとりの選択にかかっているのかもしれない。

 

雪うさぎ

 

参考文献:

一般社団法人 日本の節句文化を継承する会

https://go-sekku.org/

 

ぐるっぱ 【アンケートをとってみた「ひなまつり」(2024年)】

https://www.guruppa.jp/blog/detail?blog_id=1203

 

WORLD 【「森のしあわせ通信」ルシア祭の伝説】

https://world.swedenhouse.co.jp/media/moritsu_swedenlife_202011

 

ELEMINIST 【ジェンダーギャップ指数とは 2024年ランキング全結果紹介】

https://eleminist.com/article/3696

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