2026.08.24
育成コミュニケーションとしての1on1
熊本地震に千葉の豪雨災害と、非常に心痛ましいことに抗うことの難しい自然災害の頻度が最近高まっているように感じる。まずは、被災された皆様の安全と健康を祈念するとともに一日も早い復興を心から願ってやまない。
さて、地球環境一つをとっても夏の灼熱化など、私が子どものころとは大きく変化していっていることを肌で感じる日々である。ビジネスシーンにおいても変化が目覚ましいというのは誰も疑う余地のない共通認識であろう。そのような変化の激しい時代においては、強力なトップダウンで決められたことを着実に遂行する組織よりも、現場を担う組織のミドルリーダーたちが変化を敏感に察知し、柔軟に対応する(ゆくゆくは変化を生み出す)能力を発揮していくことができる組織のほうが強い組織としての重要性を増してきている。
ところが、そのような会社からの期待役割が高度化・複雑化していく中でミドルリーダーたちはますます多くの苦悩を抱えている現状があるのではないだろうか。まず、部署異動などもそこまで頻度高く経験がなく、一人の上司の従来のマネジメントスタイルだけを見て育ったようなミドルリーダーたちは特に顕著だが、自身のマネジメントスタイルを試行錯誤する場も、誰かからフィードバックを得る機会も少ない。また、自身のプレイングマネージャー化も進む一方で、マネジメントする対象のメンバー側も生成AIが普及し、“答え”はある程度手に入ることが当たり前になっている世の中で、大きく働き方なども変化しており、そのようなメンバーたちをマネジメントするやり方をいままで習ってないし学んできていない、ということもミドルリーダーたちの苦悩を加速させているように感じる。
私自身もコンサルタントとして、企業様から上記のようなお悩みを直接伺うことも増えており、実際に先日とある企業様において組織のリーダー育成と称して、数多くのリーダーのメンバーとの育成面談の場に同席しその場で客観的にフィードバック(コーチング)を実施する機会があった。そのときの気づき・学びを本稿に記しておきたいと思い筆をとった次第である。
人材マネジメントという側面で見れば、人的資本経営やエンゲージメント、DEIといった言葉が声高に叫ばれる昨今、ミドルリーダーたちもメンバー一人一人の動機づけやケアをしっかりしながらマネジメントをしていくことが求められている。そのような中で、1on1を導入している企業様も多いのではないだろうか。
1on1の主な目的は以下のようなものがあげられる。※1
目的1:部下との信頼関係を構築する
目的2:部下の経験学習を促進する
目的3:ホウレンソウの機会とする
目的4:フィードバックとそこからの学びを得る
目的5:部下のモチベーションを高める
目的6:意思決定に必要な組織の情報を得る
メンバーの育成を通じて組織能力を高め、ビジョンや目標を実現するというのは与えられた管掌組織のマネジメントにおいてミドルリーダーに期待されていることであり、特に1on1といった育成面談の機会は重要になってくる。
育成コミュニケーションとしての1on1(育成面談)という視点でいえば、現場のリーダーの面談の場に同席させていただいた上で特に意識するべき重要なポイントは以下の3つであると感じた。
1)成長の階段を意識し、未来の話をする
育成面談はとかく振り返りの場になりやすく、何をしてきたか、それに対してメンバー自身がどのような気づきや学びを得たか、リーダーはそれをどう評価しているか、といった過去の話に終始しやすくなる。(特に、期末の評価面談などではそういった時間を過ごしてしまうリーダーが多いのではないだろうか。最ももったいないのはメンバーとリーダーの評価の認識合わせで時間を過ごしてしまうようなケースである。)
ここはできるだけ未来の話に時間を割きたいところである。そのためには、期初の目標設定面談などのタイミングで今期の期待などを明確に伝えておくことが前提としてとても重要だが、その上で、メンバー本人が今後どういう成長の階段を上るべきかをミドルリーダー自身が頭に描き、それを基にメンバーと対話することが大事になる。
2)本人のWillを問いかけ、支援を示す
1)の前提の中で、本人がどうしていきたいかと組織としてどういう活躍をしていきたいかをすり合わせていくことが重要になる。コーチングでいうGROWモデルなどを活用して本人に考えさせ、“O”の選択肢を示すところでは例えば「私から〇〇などに働きかけておくこともできるか必要か?」など、ミドルリーダーとしてどういう支援の形があるかも積極的に伝えメンバー本人の意向を聞き出していくことが大事になる。
3)次の一歩の解像度を高める
1)2)の対話が十分にできていれば、あとは面談後の最初のステップを明確にして終了することが大事になる。ここがしっかりとイメージできていないと面談が終わったタイミングで現場とのつなぎこみが弱くなりおざなりになってしまう。
上記3つのポイントはすべて根底にあるのは「部下と同じ方向を向き、協働する」という価値観である。面談というとイメージ的にも向かい合う構図を想像してしまうが、顧客と同じ方向を向く(同じ目標を共有する)ことができる営業が成功しやすいように、メンバー育成の文脈においてもミドルリーダーとメンバーが同じ目標を共有し、同じ方向を向いて一緒に歩いて行けること、少なくとも面談の場でメンバーにそういう心象をもって面談を終えてもらえることがとても重要である。
最後に、当たり前だが、ミドルリーダーもメンバーも様々な個性があり、対話の在り方も多種多様ではあるだろう。したがって、一概にすべてのケースに置いて上記のような内容を実践すべきということではないと思う。だが、メンバーの育成に関心を寄せ、日々のコミュニケーションに悩むミドルリーダーたちにとって少しでも参考にしていただければ幸いである。
※1 本間浩輔・吉澤幸太 著 「1on1ミーティング ~「対話の質」が組織の強さを決める」より抜粋
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