PMI Consulting Co.,ltd.
scroll down ▼

2009.04.17

新入社員の育成はマネージャーの仕事!?

 4月は多くの企業で新入社員を迎えいれている時期である。先週、私もある企業の新入社員研修で2日間に亘ってトレーナーを担当してきたところだ。ゆとり教育世代ということで問題児が多いかもしれないと少し構えて臨んだが、彼らは非常に素直で成長に対して貪欲だった。
そんな彼らが今後、各職場に配属されていくわけだが、多くの企業では人事部と若手(2年目~3年目社員)が中心になって新入社員を育成しようとしている状況だ。実際に私が訪問している顧客企業でも、新入社員の教育は2年目~3年目社員に一任されており、各職場のマネージャーはその報告を受ける程度しか関与していないケースが多い。しかし新入社員を効果的に育てるためには、人事部と若手社員だけでなく各職場の長であるマネージャー層が積極的に関与しなければならない。なぜなら、新入社員を育成するベースはあくまでも育成を念頭に置いて業務を与えること(業務の割り当て)であり、マネージャーの役割が非常に大きいためである。またマネージャーの関与が少ない場合、人事部は新入社員の抱える現状の問題を解決することに、若手社員は新入社員の業務指導に終始するというように短期的な育成に重点が置かれてしまう傾向が強いということからも、マネージャーは新入社員の育成に関与すべきと考える。
 以下では、マネージャー層が新入社員を育成する際の留意点について、育成の初期段階に行うべきことと、具体的な育成アプローチの2つの側面から検討してみたい。

 まず育成を効果的に機能させていくためには、育成の初期段階で業務を進める際のマインド・感覚面のチューニングを行うことが必要である。マインド・感覚面でのチューニングとは、早い遅いのスピード(時間)感覚、仕事の品質に対する認識(作成する資料などの質が良い悪いという基準)、ホウレンソウの感覚(報告する情報の細かさ、タイミングの頻度、報告する上で重視する視点など)、職場で大事にしている価値観(密なコミュニケーション・言行一致)など、仕事をする上での基本的な考え方・感覚をマネージャーと新入社員との間ですり合わせることをいう。このチューニングを行うことで、互いのコミュニケーションコストやミスコミュニケーションが大幅に減少し、OJTを効果的に行う土壌が出来上がる。新入社員の育成がうまく機能していない要因が、この感覚面のずれにあるにも関わらず、そのチューニングを行わないまま、新入社員側の問題としてうまくやり取りできない責任を一方的に押し付けて、精神的に追い詰めてしまうケースが見受けられるが、この側面をチューニングするのはあくまでも育成する側の責任と捉えるべきである。

 次に具体的な育成アプローチについてだが、これは人の成長ステップに応じて捉えるとわかりやすい。
 人の成長ステップは無意識無能(意識していないしできない段階)⇒有意識無能(やろうと意識しているができない段階)⇒有意識有能(意識してできる段階)⇒無意識有能(意識しなくてもできる段階)という4段階で構成される。

 例えば、車の運転を思い浮かべて欲しい。誰しも最初は車の免許を取ろうともしていないし運転もできないという段階から始まる。その後、免許を取ろうと教習所に通うわけだが、講習会で運転の仕方を学習しても実際にはなかなかうまく運転できない。私自身、縦列駐車などは教習所の先生に文句を言われながら何度もトライした記憶がある。これが有意識無能段階である。有意識無能段階から何度も繰り返しやろうとし続けているうちに徐々に意識してできるようになる。免許を取りたてのころ、車幅や車のスピードなどを1つ1つ確認しながら意識的に取り組んでいたのを思い出してほしい。そして、だんだんと意識していたものが無意識層に追いやられ、意識することなく自然とできるようになる。多くの人が免許を取りたてのころとは比較にならないほど、無意識的に運転できるようになっているのではないだろうか。
 人は各業務やスキル・能力のそれぞれにおいて上記のような成長ステップを描くことになる。これを前提とした場合、新入社員を育成するアプローチは、4つのフェーズに整理することができる。
 まず第一は無意識無能段階(意識していないしできない段階)にあるものを有意識無能段階(意識しているができない状態)に移行させることである。そのためには育成すべき課題を明確にした上で適切なタスクを与えることが求められる。その際に重要となるのは常に意識させる課題を3つ程度に絞って言い続けることである。育成する上で最初にやるべきことは育成課題に対して常に有意識状態を作り上げることだ。
 次に有意識無能段階から有意識有能段階(意識してできる状態)へ移行させることが求められるが、ここで重要となるのは頭で理解したものを行動に繋げさせる“行動化”を支援することである。“行動化”において重要な要素は、単に動機づけるだけではなく、“出来そうだ”という実感を持たせることであり、そのためには、ツール(資料や考える材料)を提供する成果イメージを持たせるなどの支援が必要となる。
 第三に有意識有能段階から無意識有能段階(意識しなくてもできる状態)に移行させることが求められる。そのために必要となるのは無意識有能に繋がるタスクアサインを行うこと、つまり、場数を数多く与え意識しなくてもできるように支援することが重要となる。
 最後は、無意識有能段階から有意識無能段階へ再展開させることである。人は無意識有能段階に至ると、そのスキルや能力は個人の成長や改善の対象となりにくくなる。ここでポイントとなるのは、無能・有能とはあくまでも本人の中に判断基準があるという点である。あるスキルや能力について周囲と比較して無能(まだまだ強化が必要)であったとしても、本人にとってストレスを感じない、問題意識を感じないレベルに至ると無意識有能状態に滞留するようになる。そして、長く無意識有能状態にとどまってしまうと、”できている”という自己認識が強化され、防衛心が根付くようになって、他者からのフィードバックや新たな経験も自身の課題発見には繋がらないようになってしまう。育成する側は、対象者が無意識有能状態に長く滞留しないように、自分自身を“レビュー”する機会を提供し、常に新たな課題を発見して部分的に有意識無能段階にある状態を作り上げることが重要といえる。マネージャーは単に新入社員が今必要なことを問題なくこなせるように指導するだけではなく、常に自身の啓発課題を発見し課題を解決しようとする成長サイクルを作り上げるよう、社会人の初期段階でチューニングすることこそ、重要ではないかと考える。
 新入社員は基本的に多くのことが無意識無能段階から始まると考えられるが、暫くすると、上記のように各業務遂行スキルどの成長段階にあるのかを見極めた上で、新入社員に必要な支援を行うことが求められる。

 上記アプローチは本社にいる人事部や経験が浅く成長ステップを十分に経験していない2年目・3年目の若手社員だけで行うことが難しいという点でも、マネージャー層が新入社員の育成に関与することの必要性を認識できるのではないだろうか。 マネージャー層が自身の果たすべき役割の重要性を再認識し、マネージャー・若手社員・人事が三位一体となって新入社員を育成していくことを期待したい。

モンブラン

Recruit

採用情報

お客様と共に成長し続ける新しい仲間を求めています

Contact

お問い合わせ