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2007.10.05

テロ特措法、小沢民主への期待

 安倍総理の突然の辞任から、紆余曲折の末にようやく福田内閣がスタートをきった。支持率もスタートでは50%を超えており、自民党執行部としてもまずはほっとしたところだろう。衆議院の解散総選挙までの暫定内閣とはいえ、今国会で決めなくてはならない重要法案は山盛りであり、またサミットなどの大型イベントも控えており、政治家に国家のかじ取りを任せている納税者としては、いまの状況は見過ごすことはできない。抱えている問題に対する政治的な判断の誤りが、今後の日本の国際的な位置づけに大きな影を落とすことも十分にありうる重要な法案が審議を待っている。

 今国会の最大のポイントは、年金問題もさることながら、テロ特措法の継続問題だ。年金問題は確かに重要であり、国民が国家を信用できるかどうかの大きな試金石であるが、所詮は国内問題であり、国内での議論だけで完結できるものだ。
 しかしテロ特措法は違う。期限切れがもう間近に迫っている、正に待ったなしの問題であり、国際社会の中での日本が試されている。安倍前総理は、「職を賭してテロ特措法の継続に取り組む」とAPECの記者会見で言明した。しかし小沢党首との会談が実現せず(それだけが理由かは不明だが)、問題に対処する前に体調不良で職を辞してしまった。

 テロとの戦いは先進国の共通した重要なテーマであり、日本が国家としてどのように関わっていくのか、国際社会の中でのたち振る舞いをきちんと示さなくてはならない。小泉内閣ではイラク派兵や給油支援により、"軍隊に守られた自衛隊"、"洋上の無料ガソリンスタンド"と、マスコミに揶揄されながらも、その貢献度合いは海外では高く評価されていた。アメリカだけでなく、イギリス、イタリア、オーストラリアなど、関係各国からの感謝と評価は高い。そしてブッシュ大統領と小泉元首相の蜜月関係は、そのまま両国の良好な関係の象徴でもあった。

 そんな中で小沢民主はテロ特措法の延長に対して、真っ向から反対の構えを見せている。これまでは声の大きな野党でしかなかったが、参議院での過半数を占めるにあたり、無視できない存在になった。先日もシーファーアメリカ駐日大使が小沢代表に面会して国際貢献の継続を打診したのは、小沢民主がアメリカにとって無視できない存在になっていることを示す。
 小沢一郎は自民党幹事長時代には親米派で知られ、アメリカとの協調関係を常に主張してきた政治家だ。本心では国際貢献に反対ではないだろう。しかし、自民との対決姿勢と政権交代が民主党をまとめる最大のバーゲニングパワーである現状では、政局をみながら判断するしかない。
 日本の国益のことを考えると、政局を勘案しながら、党の事情や私利私欲(程度)の基準で判断すべき問題ではない。小沢一郎に限らず党首になるほどの政治家であれば、国際問題や対米関係に関するバランス感覚も優れているだろうから、むげに廃案にして"洋上の無料ガソリンスタンド"をたたむことなないだろう、と思いたい。ここで廃案にしてしまえば、これまでに200億を超える税金を投入して保ってきたプレゼンスが、すべて水泡に帰してしまう。そしてテロとの戦いに貢献しない国は、今後の国際問題でのプレゼンスは失墜し、国際社会での発言権は弱まるだろう。

 テロ特措法にからんでもう一つ気になる点が、アメリカの北朝鮮に対するスタンスの変化である。どうもアメリカは、今回の日本のテロ特措法継続問題と北朝鮮問題をセットにして考えているようだ。6カ国協議の端緒では、核問題と同様に日本の拉致被害者問題も重要なテーマであったはずだ。しかし現在のアメリカのスタンスは、経済制裁の緩和や口座凍結の解除、テロ支援国家指定の解除など、北朝鮮との和解の方向に舵を切っている。アメリカにとって大事なのは、核開発の凍結はもちろんだが、北朝鮮に埋蔵されているといわれるレアメタル(希少金属)の存在、そしてなにより中国の東アジアでの影響力の拡大阻止と太平洋進出を防ぐ意味での、朝鮮半島の地政学的重要性である。そのために朝鮮半島とは緊密な関係を構築しておきたいという、核、資源、対中防衛と視点に変わってきた。もはや日本の拉致被害者は優先順位は低い。

 その中でも対中防衛ラインの整備は急務の課題で、次代のスーパーパワーとして台頭しつつある中国には、台湾、朝鮮半島、日本列島のラインで包囲網を構築し、中国を大陸に封じ込めておくバリア(防波堤)としてしまおうと考えるのは当然だろう。日本、台湾は親米政権であるし、韓国も元は親米であった(次の韓国大統領選挙で、優勢を伝えられる野党の李明博候補が就任すれば、北朝鮮に対する太陽政策は継続されず、親米に振れることも考えられる)。しかし北朝鮮主導で南北統一ということにでもなれば、朝鮮半島は北朝鮮とのパイプが太い中国の影響下に置かれることになり、そのバリアに穴があくことになる。それは次代の軍事大国が太平洋にやすやすと進出してくることを意味する。
 北朝鮮と中国との蜜月関係に食い込むためにも、どうしても北朝鮮との関係を修復しておきたい。頻繁に北朝鮮高官と会談を行っているヒル次官補は、核開発凍結の見返りに秘密裏に金王朝の体制保証くらいはしているのかもしれない。そういった思惑が渦巻く中で、拉致問題の解決一点張りで、議論を一歩も進展させることができない日本の存在は邪魔者でしかないはずだ。しかし日本は重要な同盟国であり、それを断ち切ってまで北朝鮮との関係修復は国際世論の風当たりも強いし、日本の抵抗も無視できない。
 そういった状況下で、日本がテロ特措法延長の廃案による給油支援を打ち切れば、アメリカは日本に何の遠慮することもなく、北朝鮮との外交交渉を進めるカードを手にすることになる。新聞情報によれば、アメリカは日本の給油活動が(一時的にでも)ストップしてしまうことを想定し、補給艦を新たにインド洋に派遣し始めたとも聞く。日本がゴタゴタしているあいだに、国際社会は着々と次の一手を打っているのである。
 アメリカに外交カードを握られないためにも、また拉致問題解決のためにも、テロ特措法を速やかに延長し国際貢献を途切れることなく継続し、アメリカに対しての発言権をもっておくのが現状ではベストな選択である。それらが最終的には、国際社会でのたち振る舞いにつながり、日本の国益となってくるのである。アメリカに逆らっては、生きていくことのできる日本ではないことは、日本国民は百も承知だろう。

 そして忘れてはいけないのは、日本のエネルギー自給率は5%程度、食糧自給率は50%前後で、この島の持っているポテンシャルでは、1億2千強の国民すべてを養うことができないのである。諸外国との良好な関係なしにこの国は存続することができない。ちなみにアメリカの食糧自給率は120%で、他国の支援がなくても痛くもかゆくもない。
 日本はまだ他国よりも強い通貨と開発生産力、そして圧倒的な外貨準備と保有外国債券に支えられて、十分な体力を有しているが、BRICSに代表される資源を持っている諸外国が台頭してくれば、資源のない日本の立ち位置は微妙になってくる。そういった暗雲立ち込める国際環境の中で、日本が永続的に繁栄していくためには、無駄に見える国際貢献にも税金を投入することは不可欠だ。それが国際社会の中でプレゼンスを高め、最終的には国益に跳ね返ってくる。

 小沢民主にも面子はあるので、反対を表明しているテロ特措法の延長をやすやすと通過させるとは思えないが、民主色を加えた修正法案を提示し国民の納得できる形で速やかに通過させ、アメリカとの交渉カードをきちんと保有する道を模索してもらいたい。そして年金などの国内諸問題では、与党との徹底した議論と政策立案能力を披露し、本来の2大政党の一翼を担う存在感と、政権を任せうる党であることを証明してほしい。剛腕小沢一郎という政治家の本当の力量が、まもなく白日の元にさらされる。まだまだ"熱い"秋だ。

マンデー

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