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2017.03.29

AI活用IoTデバイスの競争 ~ Amazon Alexaは覇権を握るのか

 皆さんは、ネットを利用して商品を購入する場合、どこのサイトを使うだろうか。  こう聞かれると、Amazonを想起する人が多いのではないだろうか。EC購買に関して、幅広く認知され利用されるようになったAmazonは、Amazon Dashによる購入簡便化やAmazon Roboticsによる倉庫内でのロボット化による物流の改善、果てはAmazon Prime Airと呼ばれるドローンによる配達の試験運用や顧客データに基づく予測配送の特許申請など、消費者がより便利により安心してネットショッピングができるように様々な新しい施策を展開し、ECを利用した買い方のスタンダードとなりつつある。  そのようなAmazonの施策の中でも今後最も注目していきたいのは、Amazon Echoと呼ばれる人工知能スピーカーとそこに搭載されている音声認識AIのAmazon Alexaの動向である。 Amazon Echoとは、生活空間に設置して使用する人工知能スピーカーで、色々な質問に応えてくれたり、音楽の再生(ネット上のストリーミングサービスも対応)をしてくれたり、ニュース・Kindle書籍の読み上げはもちろん、スポーツのスコアや天気情報まで、話しかけるだけで様々な情報を音声で提供してくれる。さらにはアマゾンの注文履歴から再注文を頼んだり、ピザを頼んだり、Uberを呼んだりすることも可能である。実際に、Amazon Echoは米国で既に数百万台が販売され、大ヒット商品になっている。また、世界最大規模を誇るテクノロジーの祭典であるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でも今年、自動車や白物家電、テレビなど700ものAmazon Alexa搭載デバイスが発表され、各業界で注目を集められていることが分かる。  一例として、Amazon Alexaを自動車に活用するとどのようなことができるようになるのか、CESでの発表内容から以下に抜粋してみる。     ○遠隔操作:寒い日に家の中から車の暖房をつける。     ○ニュース:車の中で自分の好きなスポーツチームの試合結果を聞く。     ○コンテンツ:家で聞いていたAudible(本の読み上げサービス)の続きを聞く。     ○スマートホーム:車内にいながら、ガレージのドアを閉める、ライトをつける。     ○コマース:運転中でも自宅で必要な消耗品を注文し、帰宅時には届いている。     ○ナビゲーション:今いる場所から一番近くのカフェをナビする。  以上のようにいろいろな可能性を秘めたAmazon Echo/Amazon Alexaは、ホームコネクテッド市場を代表とするIoTデバイス市場を牽引する存在として注目を集め、今後の我々の生活に影響を与える一要因としてその動向が目が離せない。(余談ではあるが、総合家電メーカーのGEも自社のWi-Fi搭載家電の購入時にAmazon Echoを無料プレゼントするキャンペーンなどに取り組み、いち早く対応・協働して顧客囲い込みに動いている。)  では、Amazon Echo/Amazon Alexaがホームコネクテッド市場に代表されるAI活用によるIoTデバイス市場の覇権を今後握っていくことになるのであろうか。  結論から先に申し上げると、上記の問いに“Yes”というのはまだ早い。  どの業種業態であっても今後の成長が見込める市場において競争が誘引されるのはAI活用によるIoTデバイス市場においても例外ではない。実際に当該市場においても、GoogleやMicrosoft、日本国内ではLINEなどが参入に名乗りを挙げている。  ここで、得意領域であるeコマース領域を軸に先行参入したAmazonの覇権を阻止すべく、現在参入している各企業の取組概要と差別化のポイントを一度簡単に整理し、今後の競争を占う上での注意点を考察する。 ※ここでの強み、差別化要因等の整理は私見に基づく仮説であることを注記しておく。 ① Googleの場合  Googleは、音声認識AIであるGoogle Assistantを搭載したGoogle Homeというスピーカーを販売開始している。Googleが重視しているのは「自然な会話でユーザーを支援できる点」(Googleのグミ・ハフステインソン氏)であり、検索をはじめとするさまざまなWebサービスで蓄積されたユーザーの行動に関するデータを自社の強みとして、それを基にユーザーとの自然な会話から最適解をすぐに導き出すという「操作性」を重視し、他社との差別化要因としている。  強み :検索サービスなどのWebサービスで蓄積された膨大なユーザーデータ  得意領域 :Webサービス領域  差別化要因 :上記強みによって実現するAIとの自然な会話による操作性 ② Microsoftの場合  Microsoftは、Cortanaと呼ばれる音声認識AIを活用したProject Evoと呼ばれるデバイスを発表した。もともとIT業界で培ったバックグラウンドや技術力を活かして、Amazon、Googleの後塵を拝さないように取り組んでいる。実際、Microsoftはディープニューラルネットワークに向けて音声認識技術を展開した最初のビッグプレーヤーだった。また、ゲーム領域などではAmazon、Googleよりも融和性が高く勝機があるかもしれない。  強み :ITに関する技術力  得意領域 :ゲーム領域、Webサービス領域  差別化要因 :AI、クラウド連携などに関する開発力 ③ LINEの場合  国内ではLINEが韓国のNAVERと共同開発でClovaと呼ばれるAIの開発を発表し、それに付随するデバイスとしてスマートスピーカー「WAVE」やスマートディスプレイ「FACE」を発表した。検索技術やコンテンツ、蓄積されているユーザービックデータの量でいえばAmazonやGoogleには及ばないかもしれないが、チャットベースでのコミュニケーションで蓄積されているLINE独自のビッグデータを活用し、世代に合わせた言葉の選び方や話し方などより生々しいコミュニケーションが実現できる「操作性」での差別化が成功すれば、現在既存サービスが浸透しているアジアを中心としたマーケットシェアをある程度確保することは可能になるかもしれない。  強み :チャットベースで蓄積された膨大なコミュニケーションデータ   日本を中心としたアジアでの既存サービス浸透率  得意領域 :デジタルコミュニケーション領域  差別化要因 :上記強みによって実現するリアルなコミュニケーションプラットフォーム  AIはその能力が使われれば使われるほど、自己学習によってより技術発展を遂げるものであることを踏まえると、どのデバイス、どのAI技術が最も多く使われるようになるか、普及段階の最初の一歩がとても重要になると考えられる。現状では、既に700もの搭載デバイスが発表されているAmazonが一歩リードしていると言えるが、競争はまだ始まったばかりである。  上記に挙げた参入各社がこれまで蓄積してきたビッグデータや得意領域でのナレッジの活用によって、操作性や機能性で差別化しながら、如何により多くの企業および企業製品と連携・協働するようになるか、如何により多くのユーザーに認知され利用されるようになるか、が今後の競争を占う上でのポイントであり、各社の明暗を左右する点になるだろう。  我々の未来の生活を実現するIoTデバイスが今後どのように進化を遂げ、どの企業が覇権を握り始めるのか、2017年はその趨勢を見定める上で重要な一年になると思われる。今後も各企業の動向に注視していきたい。

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