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2018.03.02

耳障りの良い言葉には要注意

人事異動の季節である。トップ人事に始まり上級管理職クラスの異動情報が新聞紙面を割いている。人事異動にはタテとヨコがある。タテは、昇級、昇格、昇進であり、ヨコは異なる職種、職務、勤務地への異動、及び派遣、出向、転籍がある。人事異動は、人材マネジメントを構成する雇用管理における人材フローの一環として捉えられているのが一般的である。人事異動による配置転換の目的は多々あり、具体的には次のようなものは、全てその目的となりうる。

①戦略的配置 ②組織改編によるもの ③人員バランスの調整・最適化 ④適材適所(人材活用) ⑤組織活性化 ⑥コンプライアンス対応 ⑦人材交流 ⑧人材育成・能力開発 ⑨キャリア開発 ⑩社員の動機づけ ⑪その他

さて、これらの中から今回は特に、④適材適所(人材活用)について考えてみたい。適材適所はあらゆる組織でよく使われ、耳障りもいい言葉だ。そもそも適材適所の言葉の由来は、伝統的な日本家屋や寺社などの建築における木材の使い分けがその語源である。日本では多様な木材が建築に使われてきた歴史があり、適材の「材」は木材のことであった。柱・梁・桁・垂木など、それぞれ理にかなった使い分けが出来ている。これが転じ、人材もその性質や特性を理解し、その人材を活かす上で理に適った場=地位や仕事を与える四字熟語として認識されている。従って、適材適所は人と仕事のマッチングこそが人材活用のポイントとなる。 

さて、日本の労働力の未来は決して明るくないことは周知の事実である。人材不足以前に人員不足に陥っているのが実態である、企業は従来よりも少ない人員で従来以上のパフォーマンスを上げることが共通課題になっている。つい先日、日経ビジネス誌でソニーの復活は本物か?といった特集が組まれていた。これを検証する指標に、社員一人当たりの生産性がどれだけ上がったのかが示されていた。日本企業はグローバル企業に比べ、生産性の低さが指摘されている。今後は社員の生産性を測ることが人事評価の基軸になる事もあるかもしれない。そうなったら、個別人事管理の重要性は更に高まるはずだ。しかし、現在人事部による個別人事管理は、人事評価や研修受講履歴や賞罰等の履歴情報管理となっていることが殆どであり、仕事とマッチングする人材能力のDB化には程遠い。会社にとっては、新しいビジネスの創設や、事業拡大に伴う組織再編時に適材適所を企画することがままならず、不適材不適所が横行するリスクすらある。一方、社員からすると、自分の能力を活かすためには、今後どのような職務経験が必要なのかもわからず不安な時間を過ごす者も多い。企業も社員も双方にとって、成長への機会損失になっており、リスクばかりが目に付いてしまう。適材適所による人材活用の問題は、長年議論されてきた。そこでいつも見過ごされてきたのは人事が主導するイノベーションだ。

イノベーションの定義を「経済的価値をもたらす新しいモノ・コト」とするなら、組織の生産性を飛躍的に高め、人的資源を基盤とした競合優位性を生み出すための新しい仕組みを本来は人事部が主導すべきである。人材の能力情報の一元管理を行い、人材能力情報から最適な仕事(異動候補先)をマッチングすることは、AIを駆使すれば瞬く間に解を得られる時代である。人事は自らイノベーションを生み出す決断をすべきだ。決断を先送りすれば、若手社員や有能社員の流出リスクも高まる。事実、これらの社員にとっては、人事部や上司よりも親身にキャリア開発の相談に乗ってくれる人材紹介会社の営業担当の方が頼りになる。

最近のCMでよく見かける「即戦力採用」なるキャッチコピーは、企業に勤める社員に対しては「人材活用ができない会社にいるあなた、当社に登録してください」というメッセージを発しており、一方の企業には「人材不足に悩む人事担当者のあなた、当社の登録者なら即戦力まちがいありません」といったメッセージだ。

即戦力は耳障りがいい言葉だけに要注意である。過去、即戦力を期待し採用した中途採用者が、現場で戦力化するまでの時間を調査したことがある。なんと中途採用の戦力化にかかる時間で最も多かった回答は「3年間」であった。実務経験があるのは、あくまでも別の企業でのことであり、自社の文化や仕組み、仕事の進め方が本当に身について戦力化するまでは多くの時間を要す。というのが現場上司達の声であった。「即戦力採用」は実態との間に大きな乖離があると認識しておきたい。少し話がそれてしまった。

本題に戻ると、適材適所(人材活用)は、人事部門がイノベーションを起こす事によって具体化されるものである、昭和40年代の重厚長大型大企業は、人事部には役職別の専任担当者がいて個別人事管理を徹底していた。部長専任担当者、課長専任担当者、係長専任担当者といった具合で、一人ひとりの個別人事情報を熟知しており、一人ひとりの職務経歴をそらんじられるほどであった。しかし、その後は年功序列型人事制度が安定的に運用されるようになり、個別人事管理よりも個別賃金管理に重きが置かれるようになった事で、人材活用のための個別人事管理の体制もなし崩しになっていった。

それから約50年経過した今、個別人事情報の管理は個々の能力も含め、多様な情報管理をテクノロジーで補える時代となっている。人事部門は、進化を伴う原点回帰による、適材適所(人材活用)のイノベーションを経営課題と捉え、生産性の高い企業経営に貢献してもらいたい。

Good day.

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