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2018.03.12

共働き夫婦の上手な育児家事の進め方

「“妻の年収”が低いほど、夫は育児をサボる」というPRESIDENTの記事をご存じだろうか。

これまで、夫の育児家事時間が短い原因は、男性の恒常的な長時間労働だと指摘されてきたが、リクルートワークス研究所が全国4.8万人の「労働実態」を調査した結果、次のことが示された。

①妻がフルタイムだからといって育児家事時間が大きく減るわけではない(夫の育児家事時間も大きく増えていない)。

②夫の労働時間が短いことが、平日の家事育児の参加に影響を与える。

③夫の年収に対して妻の年収が低いほど、夫は平日だけでなく、仕事のない休日も、育児家事に参加しない傾向にある。

 

記事のまとめとしては、「共働き夫婦間で合意した上で、このように役割分担しているのであれば、何の問題もないが、疑問を感じながら働いている女性も多いはずなので、女性が働き方の調整を迫られない社会にしていく必要がある」という旨で締めくくられている。

この記事を読んで、色々と思うところのある男性も多いのではないだろうか。

しかし、この記事で筆者が着目した点は、文末に綴られていた「前述の調査結果からは、労働時間が長くても、平日から育児や家事に参加している夫がいることや、妻の収入が夫と同等レベルでも、育児や家事に参加しない夫がいることもわかった」という点だ。

残念ながら、本記事では、これ以上の言及はなかったので、この点について、少々深堀して、解決策を検討してみることとする。

 

まず、夫のパターンを大きく次の4つに類型化してみる。

           A.育児家事への参加意欲があり、参加している(参加できる状況にある)

           B.育児家事への参加意欲はあるが、参加していない(参加できる状況にない)

           C.育児家事への参加意欲はあまりないが、参加している(参加できる状況にある)

           D.育児家事への参加意欲があまりなく、参加もしていない(参加できる状況にない)

 

まず、Aに関しては、特に議論の余地がない。次にBは、主に長時間労働により、育児家事に参加できていないケースを指す。このパターンに関しては、「働き方改革」が叫ばれている昨今、長時間労働を是正する動きにより、遅かれ早かれ解消が期待されるため、本考察の対象外とする。

厄介なのは、CとDのパターンだ。長時間労働の是正により参加できる状況になったとしても、そもそも育児家事に参加する意思があまりない夫も一定数存在する。そして、その一つの要因として示されたのが、今回の記事の年収の話、つまり「自分がお金を稼ぐ役割を果たすから、妻には育児家事の役割を期待する」という考え方が根底にあるということだ。このようなある種の固定観念の他にも、「育児家事は面倒なものだから、できる人がやれば良い」という男性目線からしか語られていない自分勝手な考えも、あるかもしれない。

もちろん、記事で述べている通り、夫婦間の合意があれば良いのだが、どうやらそうではないらしい。日経新聞にも掲載された、リンナイ株式会社による共働き男女計500人を対象にしたインターネット調査(※1)によると、夫婦で家事を分担していると答えた人は、56%となっている。つまり、約半数は役割分担がなされておらず、恐らく妻が家事を担っていることが伺える。また、婚活相談所などの会社の調査(※2)においても、共働きの妻の約97%が、専業主婦の妻においても約95%が、夫に積極的な家事を期待していることがわかっており、どうやら合意は上手く取れていないことが伺える。

 

まずは、夫婦間でしっかりと協議し、育児家事に関する合意をとることが重要である。これは至極まっとうな意見であるが、これが中々難しいというのが、世の中の家庭の本音ではないだろうか。では、どうすれば良いのだろうか。

そこで、筆者が提案したいのは、「意識」→「行動」 の変革ではなく、「行動」→「意識」の変革である。つまり、合意をとってから(意識を変革してから)育児家事に参加してもらうのではなく、育児家事に参加してもらいながら、夫の意識を変革することを目指すというものである。結局のところ、人の意識を考えるのは容易ではない。心理学においても、相手を変えられるという立場の外的コントロール(人は外からの刺激によって動機づけられる)ではなく、相手は変えられないという立場の内的コントロール(人は自分からの願望によって動機づけられる)による動機づけという考え方が推奨されている。具体的には、傾聴する、支援する、励ます、尊敬する、信頼するなどを通じて、夫に育児家事をやってもらい、意識を変革させていくのである。

とは言え、すぐに育児家事を行動に移せるものなのだろうか。婚活相談所などの同調査によると、夫に求める家事のレベル感については、「掃除、料理、洗濯の中でどれか1つでも分担して任せられるレベル」、 「掃除、料理、洗濯はほとんど自分だが、手伝ってくれるレベル」を合わせて約93%となっており、夫に求める家事のレベル感は然程高くはない。また、一人暮らしの社会人男性の約7割が「仕事と家事を両立できている」と考えている(※3)ことからも、全く家事ができない男性が多いわけでもないと考えられる。これらのことから、少なくとも家事に関する初動のハードルは決して高くはないことがわかる。

また、心理テクニックを駆使することで、そのハードルは更に下げることができるかもしれない。例えば、フット・イン・ザ・ドア(1度要求を飲んでしまうと次の要求が断りにくくなるため、小さな頼み事でOKを引き出してから本題を頼む)や、ドア・イン・ザ・フェイス(断ることによって罪悪感が生まれ、次は聞いてあげようという気にさせるもの。最初に断られる前提の要求を仕掛けて次に本当の目的だった小さな目的を通す)などであれば、比較的容易に活用することができるのではないだろうか。

 

最後に、前述した日経新聞の記事において、もう一つ興味深いデータがあったので、紹介しておこう。

本調査は、日本、韓国、米国、ドイツ、デンマークを対象としたものであったが、男性の家事スキルに関して、全ての国で妻からの評価よりも自己評価の方が高く、スキルを過大評価している傾向が見られた、というものだ。何とも身につまされる思いを感じるのは筆者だけだろうか。取りあえず、今日は早く帰って、まずは行動してみることとしよう。

 

<出典>

※1:日本経済新聞 朝刊 2018年2月19日

※2:IBJ、ルクサ、ベアーズによる共同調査

           URL:https://news.mynavi.jp/article/20150916-a418/

※3:オウチーノ総研 『家事』に関する実態調査(一人暮らしをしている 20歳~39歳の社会人)

           URL:http://www.lisalisa50.com/research20131202_19.html

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