PMI Consulting Co.,ltd.
scroll down ▼

2020.12.07

テレワーク営業を推進するために営業担当者が実践すべきポイント

東京商工会議所によるアンケート調査の結果、緊急事態宣言以前に比べ緊急事態宣言発令以降では、75.2%がテレワークを経験したが、そのうち22.1%は「一時期は実施していたが現在は取りやめた」と回答している。現在は取りやめた理由として、オンラインでの打ち合わせでは、取引先との細かいすり合わせが充分に行えない、そもそもオンラインでの打ち合わせに対応頂けない取引先もいる、という回答が見受けられた。※1

これまで、企業経営で売上を獲得するための要である、営業活動においては「足で稼ぐ」「営業は外へ出てなんぼ」と言われてきたように、お客様と直接顔を合わせて商品提案や打ち合わせを行う訪問営業が主流であった。しかし、緊急事態宣言以降では、外出や通勤が困難になり、お客様へ訪問できなくなってしまった為に、必要な情報収集やお客様との関係構築が進まず、充分な売上を獲得することが出来ず、現在はテレワークを取りやめた企業が出てきていることが推察される。テレワーク営業を推進していくうえでは、これまでの訪問営業の手法や経験則だけでは、充分な営業活動が行うことが難しいため、様々なオンラインツールを使いこなしながらも、営業担当者個人の創意工夫によって、生産性を高めていかなければならなくなった。営業活動における生産性や成果を高めていくには、在宅における通信環境やオンラインツール等の整備、組織体制やリーダーシップスタイルなどの観点も重要ではあるが、本稿では、営業担当者個人の成果を高めるためのポイントについて、2つのモチベーションとテレワーク営業の実践スキルの観点から考えてみたい。

 

まず、ペンシルバニア大学のアダム・グラント教授によれば、個人が創造性を発揮して生産性を高めていくには、「内発的動機×プロソーシャルモチベーション(PSM)」が必要だとされている。PSMと内発的動機が同時に高い人は「他者に貢献することを、みずからの楽しみと感じる」という研究結果が得られている。※2

ここで、2つのモチベーションについて見てみると、1つ目の「内発的動機」は、外部からの影響なしに、純粋に「楽しみたい」「やりたい」といった、内面から湧き上がるモチベーションの事である。テレワーク環境によって、上司や同僚との物理的な距離が離れている環境においては、営業担当者個人が自律的に営業活動を実践し続けることが重要である。その為には、まずは営業担当者個人が営業活動を通じて「やりたいこと」や「実現したいこと」を具体的に持ち、所属組織や企業のミッションや、自分自身の業務と絡めて言語化しておき、営業活動そのものが「面白い・楽しい」と思える状態にしておくことが重要である。

次に、2つ目の「プロソーシャルモチベーション(PSM)」は、他者視点のモチベーションの事で、PSMが高い人は、関心が自身だけでなく他者にも向いており、他人の視点に立ち、他人に貢献する事にもモチベーションを見いだすことである。無敗営業「3つの質問」と「4つの力」という書籍※3によれば、お客様の営業担当者に対するリクエストの第1位は、「分かってくれる・意図を把握してくれる・的確・明確」という結果だった。一方で、お客様が営業担当者のヒアリングに対して感じる不満は「企業が求めていることや目指している方向性を聞いてくれない」「悩みや課題を聞いてくれない」という結果であった。このことから、お客様は営業担当者に対して、自社のことを深く聞いて欲しいと感じているのに、お客様のことを充分に“聞くことができていない”営業担当者が多い、すなわち、お客様視点に充分に立った営業活動が行えていない担当者が多い、という事が言える。テレワーク営業においては、実際に現場に訪問する場合と違い、相手の状況や置かれている環境をヒアリングして把握することが特に重要になる。だからこそ、これまで以上にお客様視点に徹底的に立ち、相手の求めていることや悩み・課題をしっかりとヒアリングを行い、お客様の事を充分に理解することが必要である。そして、自社の製品やサービスがお客様にとって有効かどうかまでを充分に検討しておくことが重要である。そして、営業担当者個人として、お客様に役立つことを「面白い・楽しい」と実感できるようになればなるほど、創造性を発揮しやすい意識が醸成されることになるのである。

 

最後に、「テレワーク営業の実践スキル」という観点では、オフライン(訪問営業や手紙や物品等)とオンライン(Web会議ツールを活用した商談や電話・メール等)を、接触の目的に応じて効果的に使い分けることが重要である。今後、テレワークによる営業活動は、新型コロナウィルスによる感染被害状況に関わらず、ある程度浸透していくことが予想されるため、営業担当者個人の成果は、オフラインとオンラインにおける営業活動を使いこなすことが必須になってくると考えられるからだ。接触の目的とは、BtoBにおけるルート営業などの、過去からの取引の継続性を確保する営業活動であれば、「取引先担当者との関係構築」と「シェアの拡大」といった事が該当する。日々の営業活動を接触方法と接触目的という2軸で捉え、『オフライン×取引先担当者との関係構築』『オンライン×取引先担当者との関係構築』『オフライン×シェアの拡大』『オンライン×シェアの拡大』といったように4象限に振分け、それぞれを意識的に使い分けていくことで、営業担当者なりのテレワーク営業スタイルを構築していくことが有効であると考える。例えば、『オンライン×取引先担当者との関係構築』であれば、お客様に「話を聞いてみたい」と思ってもらうための仕掛けを、メールやHP・動画コンテンツで作る、といったようなことだ。また、『オンライン×シェアの拡大』であれば、オンライン商談において細かいすり合わせが行えるように、プレゼンテーション資料を作成し、お客様の要望やニーズのヒアリングを充分に行える構成や、お客様視点に立った提案内容に仕上げておく、といった事が必要になってくる。そして、オンライン商談を実施する際には、お客様視点でストレスなくオンライン商談に参加できるように、商談前のメールの送り方やタイミングに気を使う、商談時にはお客様の発言の機会を充分に設ける、商談後には確認のメールを送るといった事後フォローを行う、というようなところまで配慮していくことが重要である。

以上のように、テレワーク営業活動において、オンラインとオフラインを効果的に使いこなして高い成果を獲得すためには、営業担当者自身がお客様視点に立ち、独自の工夫を凝らし続けることが必要であると考察してきた。本稿における独自の工夫とは、画期的なものである必要はなく、お客様の立場になって徹底的に考え続ける思考が最も重要な要素なのである。オンラインツールは世の中にいくつかあるが、それらオンラインツールに頼り切って、訪問営業と変わらない感覚でテレワーク営業をしていても、これまでと同じような成果が得られない場合があったのだと考えられる。だからといって、テレワークやオンライン商談自体を止めてしまうのではなく、営業プロセスやお客様が見る提案書やコンテンツ類など、営業活動に関わる全般を“お客様目線で”見直し、テレワーク営業やオンラインを織り交ぜた営業スキルを企業独自、担当者独自で構築することを検討してはどうだろうか。その為にも、今一度、自分自身のテレワーク営業スタイルは、お客様の立場になって徹底的に考え尽くした活動が行えているか、振り返りを行って頂く機会を設けて頂きたい。

一方で、今後の企業経営において、テレワーク営業における成果を継続的に獲得していくために、企業経営層やマネジメント層は、テレワーク環境の整備だけに目を向けるのではなく、営業担当者一人一人の2つのモチベーションを高める必要があることを認識し、お客様視点に立つ姿勢を徹底する組織作りに注力することを期待したい。

<脚注>

※1:『テレワークの実施状況に関するアンケート』東京商工会議所(2020年11月4日)

※2:『世界標準の経営理論』入山章栄著(ダイヤモンド社2019年)

※3:『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』高橋浩一著(2019年)

333

Recruit

採用情報

お客様と共に成長し続ける新しい仲間を求めています

Contact

お問い合わせ