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2008.05.20

大事な思い出を守る!~デジタル化社会のデータ管理術~

 「だめだ、フロッピーディスクが使えない!」、ため息まじりに天を仰いだ。
 数か月前に引っ越しをし、その際に久しぶりの大掃除を決行した。大掃除をすると、懐かしいものや失くしたと思っていたものが見つかり、思わず掃除の手を止めてしまいそちらに注意が向いてしまうことがよくあるのは私だけではないだろう。昔の旅行の写真や訪れた先のパンフレットなど、見ているだけでその時の記憶を鮮明に思い出すことができ、ついつい思い出に浸ってしまう。
 そんな中、学生時代に利用したと思われるフロッピーディスクが引出しの奥からでてきた。掃除を“一時”中断し、おもむろにPCのスイッチを立ち上げる。しかし、フロッピーディスクを挿入しようという状況になり、「このPCではフロッピーディスクが使えない」と気が付き、手が止まる。

 似たようなことは、日常の生活の中でも頻繁に起こりうる。例えば音楽の入ったカセットテープやMD。10数年前に毎日のように聞いていた音楽を聞くためには、CDの原盤を取り寄せるか、インターネット経由で購入してPCにダウンロードしなければならない。同じように、過去に購入したVHSは我が家のDVDレコーダーでは見ることができず、再びその作品を見るためにはVHS対応機種を用意するか、作品のDVD化・再放送を待たねばならない。
 このように、「データを保存する媒体」と「再生機器」にミスマッチが生じる場合、データを再生するためには、労力とコストがかかってしまうことに気づく。

 現在は、音楽を家庭で楽しむためにはiPod/iTunesといった機器を利用するし、映像を保存するためにはDVDやハードディスクを利用することが一般的になっている。これら最新の媒体に保存された音楽や映像は、扱い方や保存方法に留意し、バックアップさえしていれば半永久的に楽しめるものだと思いがちだが、本当にそうだろうか?
 確かに、DVD-RWの寿命は、温度30℃/湿度80%という劣悪な環境下での実験でも、27~1万1000年(ものすごい幅だが…)は持つというデータがある。ただし、現在の一般的な媒体でデータを保存した場合、同一の媒体がはたして20年・30年後にも存在している可能性についてはよく考えねばならない。
 過去を振り返ってみると、カセットテープ→MD→ハードディスク・フラッシュメモリ(iPodなどのデジタルオーディオ)、といった音楽データを保存する媒体や、VHS→DVD→ブルーレイ、という映像データを保存する媒体の進化から考えると、20年後の2028年では、音楽を記憶する媒体で20世紀に最も普及していたCD形式は、残っていない可能性が高いだろう。
 おそらくはより進化した新しい媒体でデータを保存し、音楽を楽しんでいるはずである。媒体としては現在と同様にハードディスクやフラッシュメモリかもしれないが、少なくとも現在最も普及しているiPod/ iTunesは時代遅れのレトロなものになっていることが想像できる。
 このような「データを保存する媒体」と「再生する機器」のミスマッチ(以下、データと再生機器のミスマッチ)を前提にすると、データを記憶する媒体と再生する機器は常にリバイスされるため、今までのデータを最新の媒体・機器に対応できるようにコピーすることを継続しない限り、「最新のデジタルデータは半永久に利用できる」、ということはまやかしだといえるだろう。データと再生機器のミスマッチが生じたことで、音楽や映像データの移動・転送が容易になり、ユーザーとしては簡単に楽しめるというメリットを得られるようにはなったが、長期的な保存・活用という観点からすると、「保存したデータがいつ使えなくなるか分からない」という非常に大きな盲点があると言える。

 また、データと再生機器のミスマッチとは別に、近年のデータのデジタル化によりデータ管理上の手間が増加してしまうことも見逃せない。1つはデータを失うリスクの問題である。データ保存と再生・利用が同時にできる媒体、例えば本であれば、全体の1%の部分が破損してしまっても、残りの99%を十分に活用することができるし、データと再生機器のミスマッチがおきているカセットテープでも、一カ所がダメになっても他の部分を利用することはできる。これらはアナログのメリットと言えるだろう。しかしデジタル化されたデータは0/1(ゼロワン)の世界であるため、全体の1%を破損しただけですべてが駄目になってしまうことがままある。そのため、データを完全に失うリスクがアナログに比べて極めて高いといえる。最近ではデータのバックアップは当然のようになったが、このバックアップという概念が生まれたのは、データのデジタル化と同じ時期ではないだろうか。
 2つ目は、保存するデータ量が膨大になるということである。データ消失リスクに対応するためにはデータのバックアップが必要であり、同じデータを何か所にも保存しなければならない。必然的に保存するデータ量が加速度的に増えていく。技術の発展により、保存メディアは、「容量は大きく・サイズは小さく」なってきていることもあるし、インターネットやPC・携帯電話・デジカメなどの登場により、データの作成が容易になったという背景も、保存データ量を増加させている要因だろう。データ量が増えるということは、本当に必要なデータが埋没するというリスクがある。いざという時に迅速にデータを探し出すためには、きちんとしたデータ管理が必須になる。
 歴史を紐解いていくと、人類はデータを保存して後世に伝えるために非常に大きな労力をかけてきた。古代のシュメール人による楔形文字は粘土板に保存されているが、一つひとつ先のとがったもので刻み込んだ上で粘土版を焼きあげるという、非常に手間のかかる工程を経て作成された。このような環境下では、残すべきデータ、後世に伝えるべきデータを厳選した上でデータは保存されてきた。それに比べて、我々はデータを簡単に扱いすぎているのではないだろうか?。

 データのデジタル化は、データと再生機器のミスマッチによる、データが「利用できなくなるリスク」を克服できず、さらには管理するデータ量が膨大になることで、本当に必要な、保存して後世に伝えるべきデータを「見失わせてしまうリスク」を引き起こしている。さらにアナログとの決定的な違いとして、「データ消失という最も大きなリスク」を抱えている。とは言え、本当に必要なデータは何か、そのデータをどのように整理して保存していくか、ということを考え、対応を行うことで、これらのリスクをある程度は軽減することができるのではないだろうか。

 デジタル化社会を生きる我々にとって、データ管理を取り巻くリスクに対してどのような対策を準備しておくことができるだろうか。「ニーズのあるところには、それを満たすサービスが提供される」という前提があるならば、これらのリスク対策サービスが今後は生まれてくるはずである。このようなサービスへの個人的な期待も込めて、どのような対策があるべきかを挙げてみたい。

①データと再生機器のミスマッチによりデータが利用できなくなるリスク対策
 少なくとも一定期間は、利用するデータ保存端末を統一する。また、データ保存端末のディファクト
 スタンダードとして、複数の世代間を跨いで利用できるようなデータ保存端末が生まれていて欲しい。
 仮に下位3世代までの互換性が保てるのであれば、1世代10年で入れ替わると計算しても、
 データの移し替えは30年に一回で済む。

②データ量増加による見失ってしまうリスク対策
 データを「保存用」「一度利用用」に分類し、「保存用」のみ番号を振ったりするなど管理をする。
 他の「一度利用用」のデータは、あえて何もしない。そうすると、整理・管理されない「一度利用用」の
 データ量は増えていくが、データ自体にユニークな属性(作成日時・バージョン情報)を大量に付与する
 ことで、ユーザー側がデータの属性を頼りに(googleで検索をするように)簡単に検索できるようになる
 技術が開発されていれば、記憶を頼りに探し出すことができる。googleデスクトップといったツールは
 すでにあるが、もっと汎用的で便利なものが出てきて欲しい。もしこのような技術をもってしても
 探し出すことができないデータは、不要なものだと言えるかもしれない。

③データの消失リスク対策
 手間がかからず簡単にバックアップできる仕組みを利用する。この部分に対しては多少の出費もやむを
 得ないだろう。(ネットワークのセキュリティが万全かつ、データ保存端末にネットワーク機能があることが
 前提で、)ユーザーが指定した時刻に、ネットワークを通してデータ保存端末からのバックアップが自動に
 行えるようになっていて欲しい。すでに一部の携帯電話会社がサービスを提供しているが、安価な値段で
 安心を購入できる。

 「備えあれば憂いなし」だが、通常に利用しているだけで、勝手に備えてくれるサービスの登場を願ってやまない。

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