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2025.12.22

「女性活躍推進」の違和感──問うべきは“女性”ではなく“組織”

 私は「女性活躍推進」という言葉を使うたび、どこか胸の奥に引っかかる違和感がある。クライアントから「女性活躍を推進したい」と相談された時にも同様の違和感を覚えることがある。これは、この言葉が使われる文脈や状況次第では、無意識に“女性側に何か不足がある”という前提を生みやすく、結果として施策が女性の意識改革や研修に偏る危険がある。

 

 本当に、女性が活躍できない理由は「女性」にあるのだろうか。

 

 これまで多くの企業や組織で、女性社員へのヒアリングやアンケートを行ってきた。そこで彼女たちから聞こえてくる声は、驚くほど似通っている。

  • 何を求められ、期待されているのかが分からない
  • 任されていない気がする
  • 何が評価された/評価されなかったのか分からない
  • 研修等の課題を取り組む際にサボっていると思われないか不安
  • 組織内での情報交換や共有する機会がない
  • 組織横断や他組織との交流機会がない

 

 これらの声から、共通しているのは、「情報格差」や「周囲との関係性の希薄さ」であり、個人の意識差や能力差だけでは説明できない。そして、役割や評価、情報の流れといった組織の基本設計が不明確であることを示している。組織の暗黙ルールから外れやすい立場や特性を持つ人ほど、最初に違和感を覚えやすい。なぜなら、暗黙知・属人運用・忖度によって回っている組織ほど、「察し」「空気」「長時間」を前提にしているからである。例えば、長時間労働を前提にした評価や、非公式な情報共有に依存する文化は、若手・中途入社者・育児や介護を抱える社員にも等しく不利に働く。つまり、女性活躍の問題とは、女性だけの問題ではなく、組織の不活化の先行指標として露呈している状態だと言える。

 

 ここで一度、立ち止まって組織をチェックしてみて欲しい。女性が活躍できない組織には、どこかに構造的な不調を抱えていることが多い。次のチェックリストは、組織設計や運営の“健康診断”です。あなたの会社や組織には、いくつ「YES」が付くだろうか。管理職側と現場社員側の双方からチェックすることをお勧めしたい。そうすると、役割や性別などの属性別での認識の違いが明らかになり、より根本的な要因が浮かび上がってくることだろう。

 

【女性活躍=組織変革チェックリスト】

 ① 機会への公平なアクセス(活躍の機会は本当に開かれているか?)

  • 気づくと、同じ人ばかりが重要案件を担当している
  • 「大変そうだから」「家庭があるから」と無意識に声をかけていない
  • 手を挙げた人より、上司の推薦で役割が決まることが多い

 

 ② 評価基準の明確化(評価基準は、誰にとっても同じように見えているか?)

  • 評価理由が「総合的に見て」「期待値に照らして」と曖昧
  • 評価基準が管理職ごとに微妙に違う
  • “頑張っている”が評価され、“成果”が言語化されない

 

 ③ 情報格差や透明性(情報は「必要な人」に届いているか?)

  • 知っている人だけが知っている情報が多い
  • 会議で初めて重要事項を知る人がいる
  • 「聞けば教える」が前提になっている

 

 ④ 役割期待の言語化(成果・行動の期待水準が明確か?)

  • 期待を伝える機会がそもそもない
  • 評価面談で初めて期待を伝えている
  • 成長しても仕事が変わらず、何年も同じ期待のままになっている

 

 ⑤ 挑戦を支える文化(善意の配慮が成長機会を奪っていないか?)

  • 「無理させたくないから任せなかった」という判断が多い
  • 女性本人の意思確認が省略される
  • 失敗を避けさせる方向のマネジメントになっている

 

 ⑥ 多様な働き方を前提とした業務設計(活躍は「長時間前提」になっていないか?)

  • 「忙しい人ほど優秀」という評価が残っている
  • 休むと仕事が止まる
  • 引き継ぎが個人任せになっている

 

もし「YES」が多かったとしたら、女性が活躍しづらいのは当然だ。なぜなら、誰にとっても安心して力を発揮できない構造だからだ。また、「YES」の数が、管理職側よりも現場社員側の方が多いと認識している場合は更に注意すべきだ。“管理職側は出来ていると思い込んでいる状態”を放置していると、改善の議題が吸い上げされなくなるので、現場が「言っても無駄だ」と学習される。そして、現場の本音を掴んでいない状態で施策を講じてしまうと、女性活躍施策が「逆効果」となり、組織の不活化がさらに進行してしまうことだろう。 

 

「女性はなかなか手を挙げない」

そう語る管理職は多い。

 

しかし、冷静に考えてみてほしい。

  • 期待が不明確
  • 判断基準が曖昧
  • 権限はないが責任は重い

先のチェックリストで挙げた①〜⑥が整っていない状態で、誰が安心して手を挙げられるだろうか。

手を挙げないのではない。手を挙げるという行動は個人の意欲だけに依存するのではなく、組織設計・運営の透明性と公平性に依存しているのだ。

 

 女性活躍推進とは、女性向け研修や意識改革施策を増やすことではない。本質は、組織の基本設計を整えることにある。この土台が整えば、女性は「推進」しなくても自然に活躍する。女性活躍が進まない時、問うべきは「女性をどう変えるか」ではなく、「この組織は、人が活躍できる設計・運営になっているか」である。この視点を持つことで、女性活躍推進が、女性を対象にした“特別施策”ではなく、組織全体の競争力を高める本質的な取り組みになる。

 

 

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