2026.01.26
懐かしさはなぜ私たちを惹きつけるのか
最近、たまごっちやシール交換など、かつて流行したものが再び注目を集めている。たまごっちでは新機種やガチャガチャが品薄となり、転売が発生するほどの人気を見せているほか、シール交換では「ボンボンドロップシール」を中心に、抽選販売や転売、さらには偽物の流通まで起きている。
シール交換とは、自分のシール帳と友達のシール帳を見比べ、お互いに欲しいシールを交換する遊びである。その中では、ボンボンドロップシールや立体シールなど、どれほど希少性の高いシールを持っているかによって、暗黙のレートやヒエラルキーのようなものが形成されているようだ。クリスマスプレゼントに、サンタクロースへボンボンドロップシールをお願いした子どもも多いという。
1996年、女子高生をターゲットに初代たまごっちが発売され、2004年頃に再びブームとなった際には、多くの小学生の間で人気を集めた。私自身も2004年頃、親に頼み込み、朝から百貨店に並んでたまごっちを購入した一人である。たまごっちには無数のデザインが存在するが、当時どのデザインを選んだのかはもちろん覚えているし、手に入れたときの喜びは、今でも色褪せない記憶として残っている。そして現在、たまごっちは再び注目を集めている。
シール交換もまた、2000年代に流行した遊びの一つである。2023年放送のドラマ『ブラッシュアップライフ』では、33歳の主人公が小学生時代に友人とシール交換をしていた様子が描かれ、当時の記憶を呼び起こした人も多かったのではないだろうか。
社会的なブームの中には一過性で終わるものも少なくないが、たまごっちやシール交換のように、何度も流行を繰り返すものがあるのはなぜだろうか。その背景には、これらが持つ「シンプルさ」があると考えられる。育てる、集めるといった行為は結果が分かりやすく、短時間で達成感を得やすい。さらに、たまごっちとシール交換に共通しているのは、友人と一緒に楽しめる点である。たまごっちには、一人で育てたたまごっちを一緒に遊ばせる通信機能があり、シール交換もまた、一人で集めたシールを友人と見せ合い、交換することで遊びが成立する。
たまごっちとシール交換、どちらの遊びにも共通している特徴は、一人では完結しない点にある。心理学の観点では、こうした共有体験が、人に所属感や安心感をもたらすと考えられている。幸福感と関係の深いホルモンとして知られるオキシトシンは、他者と体験を共有することによっても分泌され、対人関係の絆を強める働きがある。みんなで同じ映画を観たり、たこ焼きパーティーで一緒に作って食べたり、複数人で一つのテレビゲームを楽しんだりする時間が心地よく感じられるのは、こうした心理的要因が背景にあると考えられる。
遊びは子どもだけのものと思われがちだが、心理学では大人にとっても重要な役割を持つとされている。遊びは心を回復させ、日常を再調整する機能を担っている。私も年末年始に実家へ帰省し、姪とシール交換をしたり、甥や兄たちを含め、家族でテレビゲームを楽しんだりした時間が、最近の幸せな思い出として印象に残っている。
たまごっちとシール交換の再ブームは、一見すると懐古的なブームの再来に見えるが、これを認知心理学的に捉えると、そこには現代ならではの人の心の動きが関係していると考えられる。例えば、学生時代の友人との思い出や、子どもの頃に夢中になったおもちゃやゲーム、部活動に打ち込んだ経験、社会人になって仕事で初めて成功した記憶など、ふと懐かしさを感じる瞬間は誰にでもあるのではないだろうか。認知心理学では、このような過去の肯定的な記憶に触れることで、心理的な安定や幸福感といった前向きな感情が喚起される現象を「ノスタルジア効果」と呼ぶ。この効果は、不安や不確実性が高まる状況下で、特に強く働くとされている。懐かしいものが再び流行する現象は、単なる流行の繰り返しや後ろ向きな懐古ではない。AI技術の発展や感染症の流行など、絶え間ない変化が続く不確実性の高い時代を生きる私たちが、安心感や人とのつながりを取り戻すために、無意識に選び取っている行動と言える。
新しい技術や価値観に触れることは確かに刺激的だが、一方で、過去の楽しい記憶に立ち返り、誰かと共有しながら心を緩める時間も、同じくらい大切なものだ。一過性のブームが強い刺激を消費する体験であるのに対し、たまごっちやシール交換のように何度もブームが訪れるものには、「またやりたい」と思わせる心の機能が備わっている。こうした再ブームは、変化のスピードが速い現代において、人が自分の心を整えながら前に進もうとする姿の表れなのかもしれない。
雪うさぎ