2026.07.27
SNSでつながるということ
最近、友人に勧められて「setlog」というアプリをインストールした。1時間に1度だけ2秒の動画をアップし、限られた友人同士で「今、何してる?」を共有するアプリである。投稿されるのは通勤や食事、遊んでいる場所やカフェなど何気ない日常のワンシーンだ。何か特別な機能があるわけではなく、一緒にいなくてもお互いが何をしてるのかを投稿し、スタンプを送ったりコメントを送ったりして、つながっている感覚を得ることができる。投稿した友人同士の1日の様子をvlog風の動画にし、それをInstagramにアップロードする人もおり、日常そのものがコンテンツになっている。少し前には「BeReal」も流行っていた。そちらは、通知が来た瞬間に「今、何してる?」を共有するSNSだ。なぜ、「今」を共有するSNSが流行っているのだろうか?SNSに求められている価値が変化しているのでは?と思い、考えてみた。
これまで、色々なSNSが流行ってきたが、それぞれ異なる価値を提供してきた。例えば、facebookはSNSでは珍しく実名で登録する必要があり、学歴や勤め先を登録してビジネスなどのための人脈形成で活用している人が多い印象だ。一方Xは実名で登録しビジネス系で活用している人もいれば、趣味用で登録したり、推し活で活用している人もいる。私は、趣味ごとにアカウントを分けて使っており、1つの領域にとても詳しい発信者が多い印象だ。instagramはインフルエンサーが多くキラキラした私生活を投稿する人も多い。いわゆる「映え」という言葉が流行ったのはこの頃からではないだろうか。TikTokでは、短い縦型動画が永遠と流れてくる。ジャンルは様々で自分の好みの動画が流れるので時間が溶けている。これらのSNSは、制限をしなければ基本的には世界中の誰でも閲覧が可能であるため、投稿の内容に気を遣うこともある。だが、冒頭のsetlogは限られた友人のみに見られるものであるため、投稿内容は気にせずありのままの自分の今を投稿できるのだ。Instagramでは「今日は投稿するほどではない」と思う出来事も、Setlogではむしろ価値になる。これらを踏まえると、SNSは機能の進化だけで発展してきたのではなく、人々が求めるつながり方の変化に合わせて、競争軸を変えながら発展してきた。何を共有するか、より、誰に共有するか、に価値があると言えるのではないだろうか。
ある時、「Instagramは投稿する時、見え方を気にしてしまうからアップしづらいんだよね」と言っている友人がいた。確かにその感覚はあるように思う。実際インフルエンサーのように毎日投稿している人でも、投稿内容やタイミングを緻密に考えたり、自分の写真は理想の自分に加工してアップしている人が多い。これらは「映え」や他のインフルエンサーや投稿者との「比較」をされてしまうことに対する疲れの現れともとれる。これまでは、世界中の見知らぬ人とつながれることが新しい価値であったが、それはもう当たり前になった今、「つながれること」そのものは差別化要因ではなくなった。「見知らぬ誰かと広くつながること」よりも「身近な人と心地よく深くつながること」に変化してきたのではないだろうか。
SNSでの接点の持ち方の変化は、個人間だけではなく、企業と顧客の関係にも現れている。これまでは企業側は新商品のお知らせやキャンペーン、セールなどの情報発信が中心であった。一方、現在では新商品を生み出すまでの開発秘話や、社員の日常の共有、働いているメンバーがどのような生活をしているか、など、人やストーリーを伝えるような発信が増えている。これは、ただ単にお得な情報を伝えるというよりも、企業と顧客の関係性を築くことが重視されてきたとも考えられる。実際、私はTikTokで、「おからが余っています!」と言っている女性が、余ったおからを有効活用するためにおからクッキーを作った投稿を見て、そのクッキーを購入したことがある。もちろん商品も美味しそうではあったが、それよりも作り手の思いや背景に共感したことが一番の購入理由だった。商品そのものだけでなく、「誰が」「どのような思いで」作っているかが購買行動に影響を与える時代になっていると言える。
setlogは原則1時間に1度しか投稿ができないし、遡って投稿もできないので、流行っている理由は便利な機能などではない。今の時代に合った「つながり方」を実現したからではないだろうか。新しいアプリやSNSが流行ることにより人の行動が変わるように見えるが、実際には人々の価値観の変化が新たなSNSの流行りを生み出しているのだ。では、今後はどのように変化していくのだろうか?例えば、AIも投稿者として参加するSNSや、位置情報や今聞いている音楽や写真などが自動共有されるSNS、さらには支払い情報やスケジュール、ゲームなど全てが入った生活を、他者と共有するようなSNSなども出てくるかもしれない。これらを踏まえると、これまでのSNSは情報を共有するサービスだったが、これからは時間を共有するサービスになっていくのではないか。技術が進化するほど人が求めるものは、シンプル「つながっている感覚」なのかもしれない。
雪うさぎ