News / Topics

最新情報

サーキュラーエコノミーへの移行に向けて

 世界的な人口増加と経済成長は、資源・エネルギー・食料需要を増大させ、大量生産・大量消費を生み、その結果、大量の廃棄物と地球温暖化など大きな環境問題を発生させている。

 世界人口は、2022年の80億人から2050年には97億人に増加することが見込まれており、発展途上国を中心に引き続きの経済成長や消費拡大が予想される中で、国際資源パネル(IRP:InternationalResource Panel)のシナリオ分析では、世界の資源採掘量は、2015年の880億トンから 2050年には1,830億トンへと2倍以上に増加すると見込まれている。

 海洋プラスチックごみ問題においては、世界経済フォーラムによる試算では、2050年までに海洋中のプラスチックの重量が魚の重量を上回ると予想されるなど、環境問題も深刻化している。

 また、国内外の廃棄物問題も顕在化しており、廃棄物工学研究所によると、世界の廃棄物量は、2020 年の 141.2 億トンから 2050 年には 320.4 億トンまで増加することが見込まれており、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)といった観点からも、世界が大量消費型社会の限界と対策を考えはじめており、サーキュラーエコノミー(循環型社会)への転換を国家目標に掲げて動き始めている。

 

 サーキュラーエコノミーとは、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済・社会様式につながるリニアエコノミー(原料→製造→使用→廃棄)とは異なり、製品設計の段階からリニアエコノミーの廃棄のフェーズを無くし、代わりにすべての資源を使用し続ける仕組みを構築する循環型の経済モデルだ。

 サーキュラーエコノミーは、経済成長と経済安全保障、サステナビリティ、Well-Beingを同時に実現する「新しい成長」に繋がるものでもあり、取り組むことの意義は大きい。エレン・マッカーサー財団がマッキンゼー・アンド・カンパニーと共同で発表した報告書では、循環型経済への移行により、2030年までに全世界で4兆5千億ドルの経済機会を引き出すことができると推定している。日本においても2020年にサーキュラーエコノミー政策の基本方針が示され、サーキュラーエコノミーの取り組みによるCO2削減、重要鉱物資源に係る経済安全保障を目指すべきこと、そのために規制対応・標準化、金融、スタートアップ支援等に取り組むことが示された。今後サーキュラーエコノミーへの移行に向けてはどのようなアプローチが必要になるだろうか。

 

 日本でサーキュラーエコノミーを実現させるためには、3つのアプローチが考えられる。1つめは、製品の製造~販売を担う動脈産業の変革だ。バイオ・再生資源の使用や製造技術の向上によって、より循環しやすい製品を製造する素材・製品のエコデザインと同時に、製造履歴や使用履歴を記録して製品のメンテナンスや回収・再利用を促し、素材・製品を最大限利用することを促すビジネスモデルのエコデザインを行うことが必要だ。

 2つめは、使い終わった製品の回収・処理や再資源化を担う静脈産業の変革である。静脈産業でも動脈産業と同様に、デジタル技術の活用によって個々の処理プロセスを高度化させる必要があり、1社1社の企業力向上とともに、静脈産業全体の連携による産業力の向上も必要不可欠だ。

 3つめは、消費者の行動変容を促すことだ。サーキュラーエコノミーをうまく機能させるためには、消費者が社会基盤に進んで関わっていく必要があり、サステナビリティの高い製品を購入するとポイントがもらえるといった消費者にとってのインセンティブの創出や、購入製品のCO2排出量がわかるカーボンフットプリントなどのサステナビリティの可視化は、そのための有力な仕掛けになり得る。こうした仕掛けを活用して、消費行動やライフスタイルの転換を促していくことが重要となる。

 

 サーキュラーエコノミーへの転換は、一朝一夕では成しえない。導入期においては、循環資材の品質や再生資源化のコストが高くなるなど課題は多い。

 資源循環型製品のビジネスモデルの普及を推進するためには、消費者の価値基準に価格、品質、利便性に加えて新たに「環境価値」を加えることが重要である。

 消費者が製品・サービスの持つ環境価値を付加価値と捉える認識が高まることで、環境価値の高い製品・サービスの選択や製品の長期使用といった行動変容につながる。その際、事業者が魅力的な製品・サービスの提供に努めることや、品質に係る情報提供を消費者に適切に行うことが重要となる。消費者に対する環境価値への理解醸成を図るため、官民が協力して、サーキュラーエコノミーの実現につながる制度等の情報発信を通じた啓発活動や、環境教育の促進に取り組むべきである。また、環境価値に関する評価方法に加え、認証制度、表示制度の検討を行い、デジタル技術を積極的に活用しつつ、製品・サービスにおける環境価値の見える化に取り組むことが重要である。

 

 産官学が同じ目的に向かって連携し、サーキュラーエコノミーを前提としたビジネスモデルを具現化し、サーキュラーエコノミー型社会基盤を構築していくことが、持続可能な社会の実現に向けた鍵となるだろう。

 

エウロパ

Contact

お問い合わせ

PMIコンサルティングでは、企業の人と組織を含めた様々な経営課題全般、求人に関してのご相談やお問合わせに対応させていただきます。下記のフォームから、またはお電話にてご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。