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コミュニケーションの最適解

「別にアドバイスが欲しいわけじゃないんだけど」

私が妻から良く言われる一言である。

1歳になる子供が昼寝をしなかったため、家事が進まなかったと悩みを妻から打ち明けられた。そんな妻に対して私は「この前~~したら昼寝したよ、こうすれば家事が進むんじゃない?」という旨の回答をしてハッとした。その結果は、皆さんの想像通り。冒頭の一言に繋がった。「『大変だったね』の共感の一言があればそれでおしまいの会話じゃない」と言われて家庭のゴングが鳴ったのを今でも覚えている。

 

妻ひとりとのコミュニケーションでさえこうなのだが、ビジネスマン・企業もコミュニケーションについての悩みは尽きないようだ。日々、企業の不祥事が紙面を賑わせているが、裁判の判決や第三者委員会の調査報告などを見てみると、体制やワークフローに関する指摘以外にも、「意識の欠如」「誤った理解」「上司と部下のコミュニケーションに関して機能不全」「部門間のコミュニケーション不足」といった文字が並ぶ。言い回しは異なるが、「コミュニケーション」に係る問題ばかりである。

 

「コミュニケーションの問題」と一言に片づけるのは簡単であるが、適切なコミュニケーションとは何か?という問いに答えるのは容易ではない。それもそのはずで、コミュニケーションの仕組みについて、人類は有史以来様々な角度からアプローチをしかけてきた。脳科学、生物学、言語学、論理学、心理学、精神医学、哲学、etc..あらゆる学問を通じて多くの学者が研究を重ねてきたが、これが「コミュニケーションの仕組みだ」と断言できるものは現代でも未だに無いと言いても過言ではない。

 

また、コミュニケーションというものは極めて高度の技術である。というのも、脳の仕組み、体の仕組み、文法、言語力、相互作用、文化やTPOなどの環境要因…検討すべき事項を総合的に考えて、「最適解」をはじきだす行為である。これらを総合的に行うためには膨大な情報の処理を瞬時に行わなくてならないのだ。さらに加えて「最適解」は毎回変わってくる。妻とのやり取りも相手や、場所が変われば「最適解」になり得る。

 

コミュニケーションとは難しい。とはいえ、人は人とのつながりを完全に断って生きていくことはできないため、人はコミュニケーションにおける「最適解」を常に探りながら営みを続けている。しかし、決して悲観はしないで欲しい。今回はその「最適解」を出すための手助けとなるだろうポイントお伝えをしたくて筆を執った。ポイントというのは「コミュニケーションにおける2大目的を意識する」ことである。これを意識することができれば、少なくとも妻とのやり取りのようなコミュニケーションミスは避けることができるようになるはずだ。

 

コミュニケーションの2大目的とは、「関係構築を目的としたコミュニケーション(以下:関係構築型)」と「問題解決を目的としたコミュニケーション(以下:問題解決型)」である。関係構築型とは、人間関係を築くことが主な目的である。信頼関係を構築し、お互いの理解を深め、コミュニケーションの円滑さを図るため、相手の感情や価値観を尊重することが重要とされる。一方、問題解決型は問題を解決することが主な目的のため、情報の交換や意見の整理を通じて、具体的な課題や障害を克服する。そのため、問題の本質を把握し、解決策を見つけるために論理的思考や分析能力が必要とされる。

 

せっかくなのでここで1つ問題に答えて自己診断してみよう。あなたの友人が「昨日会社に遅刻したんだ・・・怒られて悲しい・・・」と話をしたとする。あなたは、なんと返すかを考えてみてほしい。例えば「どうして遅刻したの?」「何分遅れたの?」「「ペナルティとかあるの?」このように理由や原因究明に視点が行く方は問題解決型を好む傾向にある。一方、「怒られると辛いよね。」「結構落ち込んでいるの?」「たまには遅刻しちゃうよね」こんな形で相手の心情に寄り添うようなコミュニケーションが思い浮かぶ方は、人間関係を構築することを好むタイプと言える。これが、差し迫った状況の会社で上司と部下の会話であれば、問題解決型の質問でOKである。しかし、あなたが口説きたいと思っている異性との会話であったとしたら、間違いなく、関係構築型の利き方をする方が相手と仲良くなるはずだ。

 

この2つの目的がお互いにずれるとコミュニケーションミスが発生する。しかし、単純なように見えて、意外にもこの2つを意識せずにコミュニケーションをしている場合は多い。冒頭の妻とのエピソードは典型例である。妻は関係構築型を目的をとして会話を始めたにも関わらず、問題解決型での返答が来たので、コミュニケーションに齟齬を感じてイラっときたのだろう。これは家庭だけでなくどこにでも起きていることだと私は思う。例えば、オフィスでも適切なアドバイスや助言を伝えているのにも関わらず、部下が聞き入れてくれないということは良く聞く話だ。この上司は普段からついつい部下と話をする時に、いきなり問題解決型で会話を始めてしまっていることが多いのかしれない。また、そもそも問題解決型偏重で、普段より関係構築のコミュニケーションが不足しているのかもしれない。

 

一方で、コミュニケーションの不足解消を目論む企業では、雑談の場や挨拶運動など、関係構築型のコミュニケーションを促進する施策が展開されることが多いが、イマイチ芳しい効果が得られないという場合もある。そんな時は、問題解決型のコミュニケーションを促進する環境やスキルセットが抜け落ちてしまっていることが多い。

 

 このように、相手や、場所によって、2つのコミュニケーションのどちらが求められているのかを意識することが重要だ。また、コミュニケーションミスが発生している場合、どちらかのコミュニケーションが不足していたのかと振り返えると「最適解」への道が拓けるかもしれない。かくいう私も、この2つを意識してからは妻がへそを曲げることも少なくなったと感じていたが、妻曰く「まだまだ」との回答が返ってきた。いやはや、まだまだ妻とのコミュニケーションへの「最適解」への道は険しい。

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