PMI Consulting Co.,ltd.
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2009.11.08

モチベーション向上を通じた組織活性化

 先日、とある組織で若手社員を対象とした研修の講師を行っている時に、「元気が無い・・」「妙に冷めている・・」という印象を受けた社員が複数いた。その事を事務局の方に伝えると、「昔まではもっとエネルギッシュな社員が多かったのですが、最近は静かな社員が大半を占めています」という答えが返ってきた。確かに、近年多くの組織の人事担当者から若手社員に対する問題認識として「モチベーションが低い」という声を聞く。
 昨今、モチベーション調査を通じて従業員のモチベーションを高める様々な打ち手を考え、実行している組織があるが、中々成果が上がっていない現状がある。そこで、今回はモチベーションの性質の検証を通じて、組織や個人がモチベーションを向上させるために持つべき考え方や取るべき行動を考えてみたい。

 そもそも、モチベーションとは何だろうか。
 「やる気を出せ!モチベーションを上げろ!」
 体育系の部活動に所属していた方なら必ず一度は監督・コーチ・先輩から言われた事があると思うが、その様な掛け声で本当にやる気やモチベーションが上がっただろうか?私の場合、気が引き締まる感覚はあったが、心底モチベーションが上がったとは思えない。何故だろうか。モチベーションが上がったり下がったりする事は、あくまでも結果だからである。自身のモチベーションが上がる過程を振り返ってみるとイメージしやすいと思うが、自分の中で自分もしくは周囲に対して肯定的な見方や考え方ができた時、モチベーションが上がる。いわゆるポジティブシンキングが出来た時である。
故に、モチベーションを高めるためには、自分自身の見方や考え方と向き合うプロセスが必要になってくる。その際に押さえておきたい事として、「自分が自分自身をどのように捉えているか?」「自分が周囲の環境をどの様に捉えているか?」の二つがある。
 まず、前者の「自分が自分自身をどのように捉えているか?」についてだが、モチベーションが高い時と低い時の状況を思い浮かべてみてほしい。モチベーションが高いケースでは、何か物事に取り組もうとしている時に「これなら自分でも出来そうだ!」「自分はこの職場で必要とされている!」「難しいテーマだが、自分が成長観を感じられそうだ!」という具合に自分自身を肯定的に捉えているはずだ。一方、モチベーションが低い時は、その逆を思い浮かべてもらえればよい。当然、周囲からの様々な影響によって自分自身の捉え方が変化する事により、モチベーションの状態も変わる。
 一方、後者の「自分が周囲の環境をどの様に捉えているか」については、自分自身の中に目標や目的を持って仕事に取組めているかどうかがポイントになる。一つ事例を紹介したい。ある旅人が道を歩いていると道端でレンガを積んでいる職人がいて、何をしているのか?と問うたところ「レンガを積んでいる」と答えた。また、少し歩くと同じくレンガを積んでいる職人がおり、何をしているのか?と問うたところ「壁を作っている」と答えた。また、その先にもレンガを積んでいる職人がおり、何をしているのか問うたところ「皆が幸せな気持ちになるために、祈りを捧げる場として教会を作っている。」と答えた。この3人は全く同じ作業をしているが、自分自身の中で何を目的に仕事をしているかが全く違う。当然、彼らのモチベーションは目的の持ち方によって変ってくる。(言わずもがなだが、3番目の職人が最もモチベーションが高く、1番目の職人が最もモチベーションが低い。)

 組織においても「ミッション」や「ビジョン」の様に何のために組織運営を行っているのか、という目的が必ずあり、特に活性化している組織においては、多くの従業員が会社のミッションやビジョンに共感的な理解をしている。この活性化している組織の特徴は、会社のミッションと社員一人一人の働く事の目的や目標がリンクしており、そのため当事者意識を持って会社で起きる様々な事象を捉えて行動している。(逆に不活性化している組織は、会社での事象に対する当事者意識に乏しく、他責の文化である場合が多い。)つまり、社員が働く目的や意義を明確に持つ事を通じて得られるモチベーションの集大成が組織のモチベーションであり、活性化した組織とは社員個々人のモチベーションが極大化された状態である。
 では、組織としてモチベーションを高め、活性化した組織にするために何をするべきだろうか?経営者、管理者、個人の3つの視点から考えてみたい。

 まず、経営者が行うべき事は、組織のミッションやビジョンを従業員に対して明確にメッセージし続ける事である。私がお会いしている経営者で、印象深い方がいる。その経営者と会う目的は、経営課題の解決に関するディスカッションや提案をさせて頂く場合が多いのだが、気がつくと、その経営者は私に毎回の様に熱く自社のミッションやビジョンについて語っているのである。その組織のミドルマネジメント層の研修を担当した際に、経営者との面談の様子について受講生の方々にお話しすると「会社の中でも同じです。毎週1回全社員で集まる場がありますが、毎回必ず自社のミッション・ビジョンについて繰り返し話されるのです。あれだけ毎回言われると我々の毛穴を通じて染み込んできますよ。」という答えが返ってきた。研修会の中でも、受講生のほぼ全員が自社のミッションやビジョンを暗唱し、その意味合いを自分の言葉で話していた。「目標や使命観を持っている人間は、持っていない人間に比べてモチベーションが高い」というピータードラッカーの言葉があるが、彼らは自身が働く目的を、会社のミッション・ビジョンへの共感的理解を通じて見出しているのだ。
 一方、私は多くの組織の管理者層の方々とプロジェクトや研修会でご一緒させて頂く機会があるが、この組織の様に自社のミッション・ビジョンについてお聞きしても、口ごもるケースが多い様に思う。その様な場合にかぎって、プロジェクトや研修会の中でのディスカッション内容は、会社に対する批判的な見方で溢れ、当事者意識を持った発言が少ない。また、先に触れた不活性化している組織の様に他責の文化である場合が多い。

 次に、管理者が行うべき事は、モチベーションの性質を踏まえ部下とのコミュニケーションの機会を持つことである。先に、自分と向き合うプロセスの中で押えておきたい事として、「自分が自分自身をどのように捉えているか?」「自分が周囲の環境をどの様に捉えているか?」の2つがあると示したが、特に部下とのコミュニケーションの際には、これらを考慮しながら進めていくと良い。とかく、部下の言動行動の側面に目が行きがちだが、「部下が自分自身をどの様に捉えているか?周囲の環境をどの様に捉えているか?」という視点から見ると、部下の言動・行動の背景にある、ものの見方・考え方が見えてくる。管理者は部下のものの見方や考え方を受容し、尊重する事で、部下の信頼感を醸成する必要がある。昨今、プレイヤーとして東奔西走している管理者が多く、部下とひざ詰めあわせて話す機会がもてない場合が多い。しかし、管理者は日常のコミュニケーションの際にタスクの指示や部下の言動・行動に関するフィードバックだけではなく、部下の自分自身や周囲に対する捉え方や、どんな目標・目的を持って仕事をしているのかをテーマに対話する事を心がける事で、部下からの信頼感を醸成できる。

 最後に、個人として行うべき事は、自分と向き合う時間を持ち、仕事の目的・目標を確認することである。とある学者が、「現代人は睡眠に入る直前まで何かしら活動しており、布団に入ったら直ぐに寝てしまう。一方、電気が無かった頃の時代では、夜は早々に床に就き、暗闇の中で今日一日あった出来事や、自分の行動を振り返りながら、自分の気持ちや感情と向き合う環境があった。」と述べていた。現代人は目まぐるしい環境変化の中で、今自分が従事している事の目的を深く考える事なく様々な状況に対応する事に忙殺される日々を送っている。ふと立ち止まって今自分がやっている事を振り返ってみた時に、「何を目的に、自分は仕事しているのだろう?」という問いに答えられずに、悶々とする事がある。この問いの答えを出す事は容易ではない。様々な状況に対応している自分と向き合う機会を継続的に持ち続けてはじめて、その答えは見えてくる。例えば、日記をつける事は、まさに定期的に自分の内面と向き合う行為であり、自分が仕事に対して持つべき目的・目標を見出す大切な時間と言える。

 経済環境や雇用情勢も厳しさを増す中で、その状況に従属的になってしまえばしまうほど、悲観的な見方考え方になり、モチベーションは高まらない。戦後から高度経済成長を遂げるまでには、「日本国家の繁栄」という大きな目標の基に多くの人々は働いてきた。残念ながら、現在の我が国がどの様な目標観を持てばよいのか不透明な部分が多いが、そんな時代だからこそ、自分の中に目的や目標を見出しその達成に向けてポジティブに自己を捉える事ができる環境を組織は提供するべきであり、一方個人も意識する事が必要であると思う。私自身もその様な組織作り、人材育成に貢献していきたいと思う。


 

ジェミニ

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