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2022.01.24

新築マンションギャラリー体験記

昨今、首都圏の新築マンション価格は平均で7,000万円を超えているにも関わらず、売れに売れているという。価格上昇の主な要因は、土地代・建築費の高止まり、共働き世帯が増え、所謂パワーカップルを対象にした物件が増えているからのようだ。一方で、これだけ価格が上昇しているにも関わらず売れに売れているのは、コロナ禍で消費者の在宅勤務が増加したことによって、住宅への関心が高まり、ワークスペースの確保などこれまでの物件にはなかった新しい住まいへの需要が高まっていることも後押ししているようだ。

 

先日、こういった昨今の新築分譲マンション事情が気になり、近所にオープンするというマンションの折り込みチラシを頼りに、リサーチ気分でマンションギャラリーに行ってみることにした。その時の営業担当者とのやり取りや、ギャラリーでの出来事を通じて色々と気づいたことがあった。今回は、3つの気づきを取り上げ、体験をベースに紹介したい。

<気づき>

1.顧客提供価値と営業担当者による訴求価値とのズレは購入意欲を阻害する
2.顧客は営業担当者からもっと質問をして欲しいと感じている
3.ブランドコンセプトとサービスは細部に至るまで統一していることが重要

 

1.顧客提供価値と営業担当者による訴求価値とのズレは購入意欲を阻害する

その分譲マンションは、東京23区内の駅徒歩3分圏内の物件で、来年春入居として売り出し中の物件だった。実際にギャラリーに行くと、簡単なアンケートの後、マンションのブランドコンセプトイメージ動画を見せられた。その内容からは、住宅販売というより、『新しい暮らし方』を売っている印象が強く、純粋にとても素晴らしいものだと感じた。私に付いてくれた営業担当者にもそのことを確認すると、その通りなのだと同意してくれた。

しかし、一通りモデルルームを見てから個別ブースに戻って営業担当者と話していると、徐々に予算はいくらか・前金は払えるのかどうか・購入したい意欲はどの程度かというように、買うのか買わないのかを回答して欲しそうな接客を受けた。

その営業担当者からは、マンション1室を売りたい気持ちばかりが感じられ、私にとってより良い『暮らし方』を実現させたい!という気持ちはあまり感じられなかった。プロモーション動画では、『新しい暮らし方』を売っていたはずが、その営業担当者との対話では、マンション1室を売るだけになっているようだった。

はじめのうちにイメージしていた、動画の中のような『新しい暮らし方』は、営業担当者との話を進めているうちに、私の中でイメージすることが出来なくなっていった。本来そのブランドが販売したい顧客提供価値は『新しい暮らし方』なので、営業担当者もそのことを十分に理解し、顧客へ『新しい暮らし方』を提供するために寄り添い続けるパートナーなのだ、といった価値訴求をし続けることが必要だったのではないだろうか。

 

2.顧客は営業担当者からもっと質問をして欲しいと感じている

プロモーション動画を見た後、モデルルームを何部屋か見て回っている際、私の担当営業は、各部屋に連れていくことが中心で、私が質問したら答えてくれるというスタイルだった。一方で、私の他にもう一組同じタイミングでモデルルームを見て回っている顧客がいたが、その組についた担当営業は、あれやこれやと色々なことを割と大きな声で一生懸命に、でも一方的に説明する対照的なスタイルだった。聞かれた事だけに答える担当者と、一方的に色々なことを説明する担当者を対比させながら、どちらの担当者からマンションを買いたいかを考えてみたが、残念ながらどちらも大して変わらず、「この人からマンションを買いたい」という気にはなれなかった。

前者だと、背中を押す“何か”が必要で、なかなか購入の決断をすることが出来ないのではないかと感じた。後者だと、色々と説明を受けるので分かった気にはなるが、営業担当の売りたい気持ちが先行し、“押し切られた”気がしてしまうのではないかと感じた。

そこで、私は改めて営業担当にどうして欲しかったのかを考えてみたのだが、私自身、実はもっと営業担当者に質問をして欲しかった。ということに気が付いた。

住宅の購入は、人生の中で数少ない機会であるため、顧客自身の経験談は少ないことが多く、本当は何を知りたいのか、実はよく分かっていないことも多いのではないだろうか。

何か分からないことや質問はありますか?と聞かれたところで、何を知りたいのか分かっていなければ質問自体が思いつかない。

例えば、顧客がどのような家具を置いて、どんな生活をしたいのか、将来どうやって生きていきたいか、など、営業担当からの様々な質問に答えながらモデルルームを回っていたとしたら、そのマンションに住んでいるイメージが徐々に固まり、私はもう既にハンコを押した後だったかもしれない。

営業担当者としてノルマもあるだろうが、売りたい気持ちを出しすぎず、顧客の実現したい事に主眼を置いた営業スタイルも武器として持っておくと良いのではないだろうか。

 

3.ブランドコンセプトとサービスは細部に至るまで統一していることが重要

モデルルームの見学会は、約2時間かかったが、その接客中に2度飲み物を出してもらった。商品を指定すると、奥から「ガコン」と自動販売機から商品が出てくる音がして、しばらくすると飲み物を持って担当者が現れ、指定した通り蓋つきのボトルコーヒーを差し出してくれた。今思えばコロナ禍の配慮として、蓋つきのボトルコーヒーをそのまま提供したのかもしれないが、「ガコン」と自動販売機の音が聞こえる度に、新居での生活イメージを夢見ているところから、一気に現実の世界に引き戻されている気がしてしまった。

今回のように、マンションギャラリーで提供された飲み物は、付随的なサービスではあるが、ブランドコンセプトである『新しい暮らし方』を訴求するための演出として有効に活用することが可能だ。私が体験したように、新居での生活イメージを夢見ている中で、演出のブレがあると、それが違和感となり、ブランドコンセプトに対する信憑性を損なうことも考えられる。本当の意味で、ブランドコンセプトである『新しい暮らし方』を訴求するのであれば、例えば、そのマンションの設備に、ホテルのようなラウンジが設えてあったので、飲み物の提供方法もラウンジで使用されるものと同じカップを使用するなど、そんな小さな工夫をするだけでも、ブランドコンセプトの演出の後押しが出来たのではないだろうか。

 

 

最後に、『顧客目線に立って考えろ』とはよく言うもので、日々の業務に邁進しているなかで、そういったフィードバックを受ける人も多くいるのではないだろうか。『顧客目線』に立ってみるためには、今回のように実際に自分自身が顧客になってみることだ。実際に、自分が顧客になってみて世の中の商品やサービスを体験してみると、気づくことはあるはずだ。

今回はマンションギャラリーでの体験だったが、この気づきは住宅業界に限ったことではない。様々な業界において、顧客と直接接点を持つ場で活用できるものだ。営業担当者は、自身の営業活動を磨きかけるためにも、是非様々なところに出向き顧客になってみて欲しい。日頃の営業活動を振り返ってみると、より良くできることはたくさんあるはずだ。

今後も、より良い商品やサービスが日本から生み出され、その商品やサービスを顧客に提供する重要な役割として、営業担当者の方々が輝いていることを期待したい。

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