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2025.07.07

考えるとはどういうことか ─ 最適な結論にたどり着く思考の技術

なぜ「考えること」が今、重要なのか

 『もっと良く考えて』『もっと考えてから行動して』──そう言われて、戸惑った経験はありませんか?

変化が激しく、情報があふれる今の時代、自分で判断を下す場面が増えています。その中で、「考える力」の重要性がますます高まっています。しかし実際には、「考えが堂々巡りしてまとまらない」「感情に引っ張られ、思考が停止する」「情報をそのまま信じてしまう」といった声をよく耳にする。このようなつまずきの多くは、「考える型」や手順を持たず、感覚的に考えようとしていることが原因だ。私自身も以前は、“考えたつもり”に陥り、言語化できずに考えることを放棄した苦い経験がある。だからこそ“考える”とはどういうことか、どうすれば自分なりの最適な結論にたどり着くことができるのか。そのプロセスを一緒に紐解いていきたい。

 

考えるとは「プロセス」である
 考えるとは、目的に向かって情報を集め、整理し、仮説を立て、検証し、結論を導く一連の「プロセス」であると言える。直観やひらめきなどとは異なり、意図的に結論を導き出す行為だと捉えると良い。但し、直観やひらめきは思考の一部として生じることもあるが、ここでは意図的・構造的に結論を導くプロセスとしての“考える”に焦点を当てたい。

 考えるプロセスは次のように整理することができる。家事は一例であり、仕事や人間関係などあらゆる場面に応用できるものなので、もし自分だったらどのように考えるか比較しながら読み進めてもらうことをお勧めしたい。

  1. 目的の設定:考える目的・何を考えるのかを明確にする
     シチュエーションは、朝の家事がバタバタして余裕がなく困っている人を例に考えてみると、まず初めに明確にすると良い目的を「毎朝30分早く家を出られるよう、家事を効率化する」と設定してみるのはどうだろうか。ここでのポイントは、「ただ単に朝余裕がない」といった“なんとなく困っている”状態から、「毎朝30分早く家を出る・家事を効率化する」というように、“何をどうしたいのか?”と考える出発点を定めることだ。思考力関連の書籍では、「問いを立てる」と表現されるプロセスで、問いが曖昧な状態や、前提がずれると出発点を見失い、本来の目的に合致した結論に行きつかなくなることに注意しながら、本当に解くべき問題は何か?何を考えたかったのか?反芻しながら目的を設定すると良い。
     
  2. 情報収集:その目的を果たすために必要な情報を集める
     「毎朝30分早く家を出られるよう、家事を効率化する」という目的に対して必要な情報は、実際に行っている家事の種類と、それぞれにかかっている時間を把握することが挙げられる。また、無駄な導線や時間のかかる工程を観察し、リストアップしてみる。他の家庭のルーティンを調べてみても良いだろう。ここでのポイントは、主観や感情をなるべく遠ざけ、設定した目的に直接関係する情報に絞って集めることだ。主観や感情を混在したまま情報収集を行うと、目的から外れた情報も集めてしまう。集めた情報が偏る。といったことが起こりやすくなる。考えるプロセスを回しているときは、目的に集中するようにすると良い。
     
  3. 情報の構造化・整理:集めた情報を構造化・整理する
     集めた情報を、①料理・②洗濯・③片付けなどに分類し、それぞれの所要時間と手間を可視化してみる。そして、家族の誰かしかできない/家族の誰でもできる/家族以外にも任せられる、のように異なる観点から整理してみると良い。このような情報整理は、業務改善やプロジェクト設計にも応用できる。ここでのポイントは、全て事実情報と捉え、客観的な視点で構造化・整理に集中することだ。そのようにすると、「問題の本質」や「関係性」が見えやすくなる。因果関係か相関関係か?本質は何か?と問いかけながら構造化・整理すると良い。
     
  4. 仮説立案:構造化された情報を注意深く観察し、仮説を立てる
     前のプロセスで構造化・整理された情報を眺めてみると、時間をずらす・回数を減らす・工程を減らして短縮するなど、効率化できそうな箇所が見えてくるだろう。そうすると、「洗濯物を夜のうちに干せば、朝の時間が15分短縮できるのでは?」「朝食はワンプレートにすれば、準備も洗い物も楽になるかも」といった仮説を立てることが可能になる。ここでのポイントは、すぐに正解を求めず、「こうかもしれない」という柔軟性を持たせておくことが鍵となる。感覚頼りの思いつきや、一つの仮説に固執しないよう、他にあり得る仮説は?反証は?と異なる視点を持つと良い。
     
  5. 検証・評価:立てた仮説を実践し、客観的に検証・評価する
     立てた仮説に沿って、実際に洗濯物の夜干しを試してみて、翌朝の乾き具合や朝のスムーズさを確認してみる。ワンプレート朝食を出してみて、家族の反応や時短効果を観察する・実際に聞いてみる。といったように、検証には、例えば“朝の出発時間が何分早まったか”や“家族の満足度”など、定量データや具体的な評価指標を複数設定することが重要だ。ここでのポイントは、“思いつき”を“検証可能な仮説”に変えることだ。検証・評価するときは自身の主観的な判断のみで行うのではなく、客観的な意見やエビデンスを活用しながら、証拠は十分か?検証方法は適切か?と批判的に捉えてみると良い。
     
  6. 結論づけ:最終的な自身の考えを決める
     
    最後に、もともとの目的のための考えを整理すると、「夜のうちに洗濯と食器洗いまで済ませ、朝は温めと片付けに集中するスタイルが最適。但し、月曜から金曜までこの新ルーティンを試し、週末にまた見直す」といった結論を見出すことができる。ここでのポイントは、結論は“動けるレベルの判断”にするようにして、考えっぱなしにしないことだ。結論を導き出したら、それを実行してみて、再度プロセスを回すことで精度を高めていく。このように、考えるプロセスは一度きりではなく、繰り返すことでより良い意思決定に近づけるようになるものだ。
     

 考える行為には「型」があり、それを持つことで様々な場面で再現性高く考えることができる。考えることに長けた人は、その人なりの考える「型」を持っていることだろう。今回紹介した、考える「プロセス」は、一つの「型」として参考にしていただくと良い。

 

考える力は“鍛えることができる”
 考える力はセンスではなく、鍛えられる技術だ。私自身もそうであったが、考える力は特別な才能ではなく、誰でも日常的に鍛えることができる。生活するなかで自己研鑽や訓練を上手に取り入れれば、個人差はあるが、どんな人でも着実に考える力を伸ばすことが可能だ。
 

特に有効なのは次のような方法があげられる。

①    「問い」を立てる

②    考えを紙に書き出す

③    結論と根拠を言語化して他の人に説明する

④    他の人に自分の仮説をぶつけてみる

⑤    これらを習慣的に実践する

 

 なかでも③や④は、生成AIを活用するのも有効だ。AIなら時間や回数を気にせず壁打ち相手になってもらえるのが利点である。たとえば、自分の仮説に対して反論を求めれば、視野が広がり、抜け漏れに気づくこともできる。生成AIを思考のパートナーとして使うことは、これからの時代において非常に効果的な方法だ。
 

考えるとは、よりよい意思決定を行い、動くための技術

 考えるとは、情報を眺めることや悩むことではなく、目的に向けて構造的に思考する行為である。正解がない時代だからこそ、「自分なりの確からしい納得できる解」を導き出すために、考えることが不可欠である。自分に合った考えるプロセスを意識し、まずは、日々の業務や生活の中で『問いを立てる』ことから始め、精度を高めていくようにすることをお勧めしたい。

 

 最後に、考える力を身につけると、自分なりの答えを導き出せずに思い悩むことが減ることに繋がる。考える力は今日からでも鍛えられるので、最初の一歩は、小さい問いを立ててみること。それが、自分の思考を変え、未来を動かす大きな一歩となるはずだ。

 

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