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140万円の履けないスニーカー

 物価が高騰している。金融緩和に端を発し、サプライチェーンの停滞や原油価格の上昇、さらにはウクライナ情勢の影響から、食品、日用品、調味料、飲料、外食まで、その範囲は多岐に渡る。問題となっているのは日々の暮らしに直結した商材だ。一方で、開館記念展に予想の倍を超す12万人以上が訪れた大阪中之島美術館や、興行収入で136億円を突破した劇場版呪術廻戦0など、アートやエンタメの分野では加熱しているものもある。

 

 人の心の中には2つの財布が存在する。1つ目は経済合理性による客観的な財布で、現在の物価高はこれを直撃している。そして2つ目は好き嫌いによる主観的な財布だ。

 例えば、2021年4月にバーチャルスニーカーのNFTが日本で初めて発売され、約140万円で完売した。もちろん履くことはできず、観賞用である。大阪中之島美術館や劇場版呪術廻戦0などと同様で、まさに好き嫌いによる主観的な財布を開かせた典型的な例と言えるだろう。ところで、なぜ履けないスニーカーが140万円で売れたのだろうか?

 興味深いのは、NFTが好き嫌いによる主観的な財布を開かせたことだ。

 

 先ずは、NFTではなく、実物資産によるアートやアーティストのコレクターアイテムなどの市場について考えてみよう。

 それぞれの実物資産が手元にあることで、所有欲が満たされ、実物を飾ったりして使うことからも満足感も得られるだろう。また、希少価値の高いアイテムであれば、コレクターの間で話題になり、承認欲求や優越感なども満たされるかもしれない。

 ただし、実物資産の場合、限られた地域内での取引になり価値が制限されたり、破損や盗難されたりするリスクがある。また、精巧に作られた贋作を知らず知らずのうちに購入している可能性もあるだろう。

 では新しく台頭してきたNFTによる市場はどうだろうか。

 

 NFTとは、「Non-Fungible Token」のことで、日本語では「非代替性トークン」などと表されている。

 NFTの登場まではデジタルデータはコピー・複製が可能であり、希少価値がなかった。しかし、NFTとして出品されたものはブロックチェーン技術により、唯一無二の作品となる。

 世界で最も有名なNFTアーティストとして知られるBeepleのNFTアート作品『Everydays—The First 5000 Days』は、75億円で落札された。一方で、LINEが運営するNFTマーケットプレイス「LINE NFT」では、300円程度のNFT作品をLINEPay(円)や、LINE BITMAX Wallet上の独自仮想通貨LINKで取引することができ、今や誰でも簡単に一瞬でNFTを購入することができる。

 ニューヨークでは、6月20日から23日の4日間、4度目となる世界最大規模のNFTイベント「NFT.NYC 2022」が開かれた。直近でも、LINE、楽天、SBIホールディングスなどの大手企業がNFTマーケットプレイスの運営を始めており、注目されている。

 NFTの活用は、アートだけでなく、アーティストやスポーツチームのデジタルトレカなどのコレクターアイテムや、ゲーム内のアイテム所有権など様々だ。もちろん今後もその活用方法は増えていくだろう。NFTの台頭により、これまで希少価値がないと思われていたものにも唯一無二の価値が生まれたのである。

 このようにNFTの台頭は、好き嫌いによる主観的な財布を開かせる新たな市場を生み出す1つの分岐点と言えるのではないだろうか。

 

 さらに、NFTでは、アイテムそのものの価値だけでなく、これまで誰が所有してきたか所有履歴も記録されるため、著名人が所有した履歴があればより価値は高まる。

 また、その所有履歴は偽造することができないのだ。唯一無二のオリジナルであることに価値があることを表す事例として、冒頭にあった約140万円のバーチャルスニーカーの完売が挙げられる。

 こうして、NFTによって所有欲、満足感、承認欲求、優越感も満たされながら、先に挙げた実物資産のデメリットは解消されるだろう。

 このように、実物資産とNFTは全く別物に見えて共通点も多い。しかし、やはり本格的なコレクターの中には、実物資産を所有する場合のデメリットを踏まえてでも、実物を選び、手に入れたい人は少なくないだろう。そういった人から見ると、NFTは「無価値なもの」とされ、NFTの評価は二分化されているようだ。

 そんな中、最近はNFTをデジタルデータとして所有するだけではなく、実物資産と紐づけて管理するという方法も現れた。

 例えば、実物アートの所有権をNFTにし、ブロックチェーン上で登録することで、アートの来歴管理にブロックチェーンのグローバルな透明性と不可改ざん性を利用することができる。そして、NFTで来歴管理だけでなく所有権も紐づけることで個人のアート作品の所有件をデジタルに確認し、そして譲渡することも可能になった。

 

 デジタルコンテンツであっても、世界で唯一無二の独自性があれば、それに価値を感じて取引が発生する。そのような新たな市場が生まれたのだ。

 しかし、現在のNFT市場では、急速な盛り上がりに対して法整備が追い付いておらず、例えば他人の作品データを勝手にNFT化させて販売することも可能であり、リスクも高い。このあたりの問題が解決されれば、よりNFTによる新しい価値の創出は進み、メタバース内で稼ぐことができたり、クリエイターと消費者の関係性が変化したりするかもしれない。また実物にNFTで証明を付与することによって、最近話題の転売も防止することができるかもしれない。

 私はまだNFT作品を購入したことはないが、自分がNFTの何に価値を見出し、いくらで購入することになるのか楽しみだ。

 

パーシヴァル

 

<参考>

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/skillup/00008/00021/

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