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ハイブリッドワーク下のマネジメント

 新型コロナウイルスの感染拡大から2年以上が経過し、日本においても少しずつ働き方に関する規制措置が緩和され、コロナ禍前の様相に戻りつつある。これまでは出社をして同僚と直接対面で仕事をする、いわゆる“リアル”で働くことが普通とされていた。しかし、コロナ禍により急速にテレワークが普及をしたことで、自粛要請が落ち着き始めた現在ではどちらか一方の働き方ではなく、両方を使い分ける企業が多くみられるようになった。これらの働き方は、“ハイブリッドワーク”と呼ばれている。

 

 ハイブリッドワークの働き方とは、企業によって勤務制度として導入し、居住地や個人のワークスタイルに合わせて自由な働き方を許可するものである。現状フルリモートワークの状態から、少しずつ従業員へ出社を促している企業が多いと思われる。

 

 新型コロナウイルスの蔓延以降2年の間で働き方は絶えず変化し、ビジネスパーソンは様々な形態の働き方に順応する必要がでてきた。そのような中、特に影響を受けているのは組織を率いるマネジャーである。なぜならば、マネジャーは働き方が変わる度に、マネジメントの仕方を模索することを求められ続けているからである。

 

 本コラムでは、マネジャーのハイブリッドワーク下でのマネジメントのあり方を検討していきたい。

 

 考察に入る前にマネジャーに求められる「マネジメント」とはそもそも何かを整理する必要がある。マネジメントに関する定義は様々あるが、ここではマネジメントの大家であるピーター・ドラッカーに倣い、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義する。マネジャーの役割が組織に成果を上げさせることだとすると、当然、①組織の業務を円滑に進めること、②組織のメンバーとのコミュニケーションを円滑にすることがマネジメントには求められる。

 

 よって、マネジャーがハイブリッドワーク下において組織に成果を上げさせるために2つのポイントに絞って考察していくこととする。

 

①    業務の円滑化

 ハイブリッドワーク下においてテレワークと出社の最適な比率に悩んでいるマネジャーは多い。メンバーの状況はそれぞれ異なるため、どのような基準で比率を設定していくのかを検討することは確かに難しい。ここではメンバーの成熟度合に応じて最適な働き方を決定する考えを紹介したい。

 例えば、新卒や中途などの入社したての社員は、その組織における業務理解が乏しいため、マネジャーと出社のタイミングを合わすなどして、一緒に働く時間を増やし、業務知識や関連情報を与えることができる状態にすることが望ましい。一緒に働くことのポイントは、メンバーの悩みや疑問に対して、すぐに対処できるようにすることである。メンバーが未成熟な場合は、一人で抱え込む時間を極力短くし、自走できるために成熟度合を高めてあげることで、業務の円滑化に繋がる。

 

 一方で、業務を自身の判断で遂行できる成熟した社員は、最低限の出社として、テレワークの比率を増やした働き方にするとよいだろう。移動時間の削減によって浮いた時間を企画業務に当てることや、集中して考える時間を増やすことができるため、業務の円滑化に繋がる。このように、メンバーの成熟度合に応じて出社とテレワークの比率は考えると良い。

 

 また、ハイブリッドワーク下の別の問題として情報格差が生じ、生産性が下がってしまう事がよく挙げられている。例えば、出社のバランスによってマネジャーが発信する情報を受け取る人とそうでいない人がいることで情報の差が生じてしまう。それにより業務上でミスコミュニケーションが発生する頻度が増え、無駄な業務や重複する業務が増えることで、生産性の低下に繋がる。この問題に対してグループチャットを活用した解決方法を一つ紹介したい。

 

 ある会社では、プロジェクトを進める際に、個別で業務のやり取りすることを禁止して、チームのスレッドで全ての業務管理を行うようにしたところ、重複する業務を振ることがなくなり、他のメンバーがどのようなタスクをやっていて、どこで困っているかがオープンになったことにより、相互の助け合いが強まった結果、プロジェクトの進捗が円滑にいくようになったそうだ。ただし、個別事情でオープンにしたくないような話は、全体スレッドの中で、個別にミーティングをさせてほしい旨を関係者にメンションするとのことだ。

 

 このように、メンバーが自身の業務状況を自然に発信し、プロジェクト全体が滞りなく進むような仕組みを構築すると、メンバーの業務の進捗や成果が見えづらい中でも、マネジャーは情報を拾いにいかずとも業務を円滑に回していくことができるようになる。

 

②    コミュニケーションの円滑化

 テレワーク下になった時は、メンバー同士のコミュニケーションの量と質が低下したため、各企業はハイブリッドワークに移行することで、その問題を解決しようとしてきた。しかし、現状まだまだ問題が積み残されている。

 

 例えば、コミュニケーション量の問題がある。メンバーの働き方が均一でないため、メンバーとのコミュニケーション量にどうしても差が生じてしまうことで、メンバーに不公平感を与えてしまう可能性がある。この状況を解消するには、メンバーと1週間に15分間の1on1ミーティングを実施することをおすすめする。(マネジャーが統制できる最適な人数が7~8人と想定して記載)

 

 ルーティンにする狙いは、不定期に実施する事で、業務との兼ね合いから優先度が下がるリスクがあるからである。定期的に実施にすることで日々の状況を経過観察できるので、細かな異変に気付くことが可能になる。

 

 これによってメンバーとのコミュニケーションにおける公平感を担保すると同時に、コミュニケーション量の問題解決に繋げることができるのではないか。

 

 一方、コミュニケーションの質の問題からも見ていこう。出社する機会が増えてきたとはいえ、メンバーのキャリアや成長課題についてメンバーとじっくり話すことができているだろうか。このような状態が続くと、メンバーが今後のキャリアに不安になり、働くモチベーションが下がってしまう場合がある。それを解消するためには、メンバーの成長課題を把握し、認識をすり合わせることが重要である。成長段階は各々違うため、次の成長ステージに到達するための現状の課題をメンバーに気づかせて、どのように克服していくのかを常に意識しながら接していくと良い。

 

 また、メンバーの精神・健康状況や価値観を把握するコミュニケーションも重要である。このような場合も、先程取り上げた15分間の1on1の機会を活かすと良いだろう。この時に念頭に置きたいのは、なんでも自分で解決しようと思わなくてよいということだ。最適な人材に任せながらチーム全体を機能させていくことも選択肢に入れておくと良い。以上の様なことを意識して実践すると、コミュニケーションの質を上げることができるのではないか。

 

 ここまでは、①業務の円滑化や、②コミュニケーションの円滑化の視点で考察してきたが、メンバーの自律性を醸成しない限りは、ハイブリッドワーク下におけるマネジメントを完全に機能させることはできない。物理的に離れた働き方をしていくには、管理の限界を越えるために、マネジャーは、メンバー個々が、自分自身が何をすればいいのか、組織にどのような貢献をすることができるのか、ということを自律的に考えていくことができるようにサポートする必要がある。これは昨今、ダイバーシティやメンバーが自身のキャリア形成に責任を持つキャリアオーナーシップなどを議論する際にテーマとなる支援型マネジメントの考え方とも一致する。

 

 このように、マネジャーは、①業務の円滑化と、②コミュニケーションの円滑化を実現しながら支援型マネジメントを展開していくことでハイブリッドワーク下のマネジメントを機能させることができるのだ。ハイブリッドワーク下でメンバーに対するマネジメントに悩まれているマネジャーは、本内容を参考にしてみてはどうだろうか。

 

 今回は、ハイブリッドワーク下でマネジャーがいかにマネジメントを機能させるかについて考察してきた。しかし、現在急速に発展しているメタバースの世界が浸透し、リアルとオンラインの垣根がなくなるような未来がやってきた場合、マネジャーに求められるマネジメントのあり方も変わっていく可能性がある。今後のハイブリッドワークの動向や変化とともに、マネジメントのあり方を注視していきたい。

 

 

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