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個人のD&I

『ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&Iと表記)』という言葉自体を聞いたことがある人は多いだろう。D&Iは近年、経営において大切にすべきこととして多くの企業で注目され、社会に浸透しつつある概念の一つだ。

『ダイバーシティ』という概念は、1960年代からアメリカで研究が進められ、特に1980年代以降はダイバーシティ及びそのマネジメントが職場や組織に与える影響や、その効果に関する研究結果の蓄積が進んでいる。直訳すると『多様性』を意味し、『集団において様々な属性や価値観を持つ人が集まった状態・お互いの違いを認めたうえで人材を迎え入れている状態』を指して使われることが多い。

一方で、『インクルージョン』とは、2000年代前半から米国で学術的に注目され始めた概念で、日本では『企業内で多様な人々がお互いに個性や価値観、考え方を認め合い、一体感を持って働いている状態、あるいは平等に機会が与えられた状態』を指すと言われる。[i]

 

多くの企業でD&I推進が叫ばれ、様々な取り組みが進む中で、今回は個人が取り組むD&Iに着目して、考えをめぐらしてみたい。

 

①   自分が相手に行うD&I

先の定義に照らしてみると、集団における相手との違いを如何に認め、一体感を持って働くことができるか、がD&Iのポイントであると言える。

まず、『集団における相手との違い』とは『相手の個性や特性』として現れることが多い。それらを受け入れるには、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)に気づくことが第一歩であると言われる。アンコンシャスバイアスは「決めつけ」や「押しつけ」で現れるため、自分自身の思考や言動に「“普通”そうだ」や「こうある“べき”だ」といったことが見られたら、アンコンシャスバイアスかもしれない。と一度考えてみることをお勧めしたい。
次に、相手と集団の中で一体感をもって働くには、相手の個性や能力を引き出し・活かすようなコミュニケーションを図ることが重要だ。そのためには、 “聴く(意図的に耳を傾ける)”と、“訊く(人に物事を尋ねる)”の使い分けが有効だ。人は、「自分“を”よく知る」相手の話と、「自分“が”よく知る」相手の話は聞く。ということを念頭においた姿勢を心がけると良いだろう。

また、相手の個性や能力を活かすには、自分の気持ち・考え・信念などを正直に、そして率直に、その場にふさわしい方法で表現する“アサーティブな表現”を心がけることが有効だ。これらは、自分が相手へ、相手が自分へ働きかけることを通じて推進されるD&Iの例だ。

 

②   自分が自分に行うD&I

企業でD&Iが推進される一方で、D&I推進に課題を感じている企業が多いことを踏まえると、自分が自分に行うD&Iも必要なのではないだろうか。そのように捉えておかなければ、D&Iの推進は、企業側が整備し、機会を提供してくれるものとして取り扱われ、“他人ごと化”する恐れがあると考える。

また、個性や能力が最大限に発揮されていない相手から、いくら働きかけを受けても、自らの個性や能力を発揮してもいいと思える“安心感”や“納得感”に繋がりにくく、相手からの影響も限定的になるだろう。つまり、まず先に、自分が自分に行うD&Iを推進すべきではないだろうか。

自分が自分に行うD&Iも①と同様に、「アンコンシャスバイアス」「傾聴」を自分の内側に向けてみることをお勧めしたい。例えば、「私はこういう人間だから」というような、自分に対する無意識の思い込みや、決めつけに気づき、思考の枠組みを超えるように努めてみると、自分自身の“伸びしろ”が見えてくるだろう。また、自分自身の心に意図的に耳を傾けたり、訊いたりすることで、自分が発揮したい個性や能力はどんなことなのかを見出すことにも繋がる。さらに、自分が相手に行うD&Iの推進にも好影響を与えると考える。

 

最後に、これからの時代を見据えると、企業内における、多様な人々とは、個性や価値観、考え方だけに留まらず、多様な雇用形態(例えば、ジョブ型雇用やプロジェクト型雇用、業務委託者、パートタイム労働者など)の人々も該当する。企業との雇用形態に関わらず、多様な人々が、同じ組織において成果を最大化させるためには、各々が自分自身と相手をD&Iしあえる状態が理想の姿であると言えるだろう。

 

これから先、しばらくはD&Iの推進が求められるが、近い将来、当たり前のようにD&Iが実現され、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉自体が無くなっている世の中になっていることを願いたいところだ。

 

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