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宇宙開発の意義

 人類が初めて人工衛星を打ち上げてから約60年、宇宙開発の主役は一貫して「国家」だった。しかしその状況はすでに崩れつつある。2020年5月31日、アメリカ・フロリダ州から打ち上げられた米スペースXの宇宙船「クルードラゴン」が国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功。宇宙飛行士2人が無事にISSにたどり着いた。アメリカから9年ぶりの有人宇宙飛行が実現しただけでなく、初の民間企業による有人宇宙飛行という歴史的な一日となった。民間開発への移行の要因の一つは宇宙への打ち上げコストが猛烈に下がっていることだ。これまでどんな宇宙ビジネスにせよ最大のボトルネックは打ち上げ費が高いことが問題であった。多くの人工衛星などが飛ぶLEO(Low Earth Orbit:地球低軌道)まで打ち上がるのに、過去は1キログラムあたり数万ドル(数百万円)かかっていた。しかし再利用可能なロケットを飛ばしているスペースXなどは1キログラムあたり数千ドル(数十万円)まで価格を下げている。つまりコストの桁が一つ減ってきており、民間企業が次々に宇宙進出することが可能となりつつある。

 

 100年前まではまだ飛行機が発明されておらず、空を飛ぶ経験すらしていなかった人類の進化は凄まじい。しかしながらなぜ人は宇宙に行くのだろうか。

 

 宇宙開発には3つの顔がある。一つは科学としての宇宙、2つ目が安全保障としての宇宙。そして3つ目に産業・ビジネスとしての宇宙である。1つ目の「科学」としての宇宙は宇宙空間という特殊な環境を活用した知の探求である。物理や化学、生物学といった基礎研究から医学まで幅広い研究がおこなわれている。2つ目の「安全保障」としての宇宙の重要性は急速に高まっている。世界的には「サイバー領域」と「宇宙領域」までを含めて戦闘領域、作戦領域であると規定する国が増えてきている。また宇宙開発の最先端技術の優劣は技術力や産業力における国際優位を示すだけではなく、軍事技術の潜在力でもある。そして今最も大きなうねりが起きているのが「産業・ビジネス」としての宇宙である。世界の市場規模は2040年に1兆ドル超と現在の3倍に増える見通しだ。

 

 宇宙ビジネスとして中でも注視されている分野は衛星を活用したビックデータビジネスである。活用先は農林水産業といった1次産業である。これまで経験やカンに頼った作業が非常に多いが、宇宙からモニタリングしたデータを活用することで、科学的に状況を把握可能となる。例えば農業の場合、作物の生育状況を追うことで、生育が遅れているところに集中的に肥料をあげたり、病害虫をいち早く見つけて対策が取れたりするようになる。加えて、環境分野でも活用できる。環境への世界的な意識の高まりを受け、自社のビジネスが地球に優しいことをステークホルダーに説明することが求められるようになってきた世の中において、説明材料として衛星画像が使えると考えられている。衛星画像を用いて、環境を破壊していないことをビジュアルで訴えかけるというのは大きなインパクトがあるだろう。また、BCP(事業継続計画)分野でも現場でどんな災害が起きているかという情報を迅速に取得して、適切なアクションにつなげるということでも活用可能だ。現在は、状況把握のためにドローンが使われているが、ドローンを飛ばすにはオペレーターが必要な上、災害発生以前の画像がないと比較ができない。これに対してどこで何が起きているかを広いエリアで一度に把握し発災以前と比較できるという点では、衛星が最も適していると言えるだろう。

 

 宇宙空間は基本的に“無補給”の環境だ。たとえば酸素や水、食料などを新たに得ることはできない。ロケットで人や物資を宇宙に運ぶことは可能だが、今はまだ頻繁に打ち上げることが難しい。宇宙ステーションやロケットといった閉鎖空間で、水や食料の補給なく長期間生活できるような“循環環境”の技術が実用化されれば、それは地球上でも有用な技術になるだろう。ある意味地球も限られた資源の中でも閉鎖空間ともとれるからだ。宇宙開発が持続可能な社会に向けた課題解決の重要や役割を果たすことを期待したい。

 

エウロパ

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