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住みやすい街

 一般的に賃貸物件は2年ごとに契約の更新が必要なものが多い。物件や立地が気に入っていたり、なんとなく更新したりする人も多いだろうが、私はまた引っ越しすることを決めた。思い返せば、私は契約更新を今まで一度もしたことがない。

 引っ越しはとても手間がかかるし、その後の新生活はストレスがかかることもあるが、引っ越しという手間を惜しまずに行動を起こすことで、これまでにはなかったような発見や楽しみに気づかされることも多い。実際に、不動産情報サイトで引っ越し先を探すために間取りを見ながら家具配置を考えたり、最寄り駅周辺のGoogleマップを見ながら近くの美味しそうなご飯屋さんを探したりすることはとても楽しく、新しい生活に心を弾ませることができる。新しい街で、新しい部屋で、新しい生活が始まると思うと、楽しみで嬉しくて、これからなんでもできてしまうような気がするのだ。

 引っ越し先を選ぶ際の重要な要素として、その街の「住みやすさ」があるが、人々はどのような要素が満たされている時に「住みやすい」と感じるのだろうか?

 

 不動産情報サイトat homeによる「東京都民に聞いた!都内で住みやすい街(駅&自治体)ランキング」では、結果は以下の通りだった。

第1位      吉祥寺駅

第2位      中野駅

第3位      立川駅

第4位      三鷹駅

第5位      新宿駅

第6位      北千住駅

第7位      池袋駅

第8位      三軒茶屋駅

第9位      荻窪駅

第10位    恵比寿駅

 

 第1位の吉祥寺駅は、都内の住みやすい街・住みたい街ランキングの上位に毎年選ばれるほどの人気エリアである。JR中央本線や京王井の頭線が乗り入れており、新宿まで約15分、渋谷まで約20分と交通の便も良い。近くには井の頭公園もあり、緑や自然も多い。駅前には大型の商店街もあり街灯も多いので、夜でも治安は良いだろう。このようなポイントもあり、子供連れのファミリー層を含めて人気だ。第3位の立川駅も、JR中央本線、青梅線、南武線が乗り入れ、多摩モノレールもあり、交通の便が非常に良く、国営昭和記念公園もあり自然が多い。

 このように住みやすさランキング上位の街に共通するのは、「交通の便が良いこと」、「自然豊かであること」、「治安がいいこと」などで、これらは住みやすさを感じる重要な要素であると言えそうだ。

 

 しかし、コロナによる生活スタイルの変化によって、これらの住みやすい街・住みたいエリアにも変化が表れはじめている。内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京都23区のテレワーク実施率は前年2021年9-10月の55.2%からやや減少しているものの、22年6月では50.6%と半分以上で継続している。また、「東京圏在住だが地方移住に関心を示している」という回答は、2019年12月の25%から2022年6月の34%へと増加傾向にある。

 

 総務省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京23区では転入超過が続いていたが、2020年以降は転出者数が増加し転出超過に転じた。転入超過数を年齢別に見ると、10代・20代は進学や就職等を背景に転入超過になっているが、30代以降は転出超過が拡大傾向にあった。これらからも、実際に東京23区外へ移住している人が一定数いることがわかる。

 地方移住に関心を示す理由としては、「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」が34.5%、「テレワークによって地方でも 同様に働けると感じたため」が24.5%、「ライフスタイルを都市部での仕事重視から、 地方での生活重視に変えたいため」が20.7%でどれも上位である。

 また、2019年12月と比較して、家族と過ごす時間が増えたと答えた人は42.8%、家族と過ごす時間を保ちたいと思う人が90.7%であるため、テレワークの導入等で増えた家族との時間を今後も維持したいと考える人が多いことがわかる。

 従来であれば優先されていた要素である「交通の便が良いこと」は後回しになり、通勤時間や最寄り駅からの距離よりも、家族と過ごせる環境や家族と過ごす部屋の広さの優先度を上げる人が増えたという。これはコロナによる生活スタイルの変化によって、考えが徐々に変化していることのひとつであると言えるだろう。

 

 コロナ禍によって人々の生活スタイルは変わり続けている。その中でも住みやすく快適な暮らしに必要な要素は「自然豊かな環境であること」、「交通の利便性が良いこと」、「犯罪が少なく安全性が高いこと」などの基本要素は変わらない。しかし、住みたいエリアに関しては変化が現れ始めている。従来であれば、その街のメリットであった利便性や賑わいはコロナ禍では一部の人から避けられる要因になっていたようだ。一方地方では、家賃や物価が比較的安いこともあり生活コストを下げられることや、自然が豊かで空気が澄んでいて落ち着いた環境であることがメリットだ。

 

 このように、テレワークによって働く場所の自由度が高くなったことにより、人々の「住みやすさ」への価値観は大きく変わり、都心一極集中から郊外へのシフトが徐々に広がり、5年後、10年後には海外へ移住する人々も出てくるだろう。法務省の出入国管理統計によれば、2022年1月の日本人出国者数は約7.5万人で、2020年4月以来最多となっており、徐々にではあるが動きが出始めている。

 一方で、働く場所の自由度が高くなったことは、企業側にも大きなパラダイムシフトをもたらすことになる。働く場所にこだわらなくてもよくなったことにより、企業側もオフィスへの通勤圏内の人材にこだわる必要がなくなったのである。世界中のどこでも仕事ができるということは、世界中の人材が雇用対象となり、優秀な人材を全世界から集めることができる。

 英国の政治経済誌「エコノミスト」の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、「最も住みやすい都市」ランキングを発表している。世界173都市を対象に、インフラ、医療体制、安全・安定性、文化・環境、教育といった5項目30指標に基づき住みやすさを評価している。2022年の調査結果では、1位がオーストリアのウィーン、2位がデンマークのコペンハーゲン、スイスのチューリッヒとカナダのカルガリー、バンクーバーと続き、10位には日本の大阪がランクインしている。大阪は、文化・環境のスコアが83.1であり、上位10位のうち最も低い結果となった。大阪は昨年2位、東京は昨年4位にランクインしているが、どちらも後退している。

 

 人は働く場所にこだわることなく、住みやすい場所を求めて気軽に移動できるようになることで、各国主要都市やエリアは、住みやすさを含めた特色を磨きアピールする必要がでてきた。いずれは教育も「テレワーク」化して、幼児から成人するまでの高等教育を、どこにいても受けることができるような学校も登場するだろう。就業にも就学にも、人が集う移動することを前提とする形態から、移動を極小化した企業や学校形態の出現によって、人はより「住みやすい」「生活しやすい」場所を求めて、移住していくことになる。

 元来、農耕民族は作物が獲れやすい場所に住まいを求めてきた。それが19世紀から始まった産業革命によって、人はオフィスや工場のある近隣に住まいを求め、仕事場を中心にできるだけ便利に暮らせる場所を求めるようになった。交通機関の発達が暮らせるエリアを拡げていくことに寄与した。しかし、21世紀になって、ついに職場近隣に住むという制限が取り払われ、人は本来の「住みやすさ」にこだわった場所に回帰しようとしている。

 

雪うさぎ

 

参考:

At home 東京都民に聞いた!都内で住みやすい街(駅&自治体)ランキング

https://www.athome.co.jp/town-library/article/122821/

 

内閣府 第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査

https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result5_covid.pdf

 

法務省 出入国管理統計

https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_nyukan.html

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