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サラダ記念日に想う

 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 

 

 俵万智さんの第1歌集「サラダ記念日」にある代表的な短歌だが、皆さんはご存知だろうか。かなり有名な歌なのできっとご存知の方も多いだろう。かくいう私もこの歌には中学校の国語の授業で出会った。当時はこの歌の良さがわからず、なぜ有名なのかに懐疑的ですらあったが、なぜか同級生の間ではこの“~~と君が言ったから○○記念日”のくだりはよく流用され言葉遊びがされていたのは今でも鮮明に記憶に残っている。今になってみれば、中学生ながらに何となく使い勝手のいいフレーズ、耳(と頭)に残る歌であったし、そういう部分もこの歌の魅力の一つなのだろうし、大人になった今でも覚えている短歌といえば真っ先にこれが出てくる。 

 さて、我が家にはもうすぐ一歳になるわんぱく盛りの息子がいる。先日妻と息子の話をしていた際、「いつか反抗期がきて、ババアとか言われるようになるね」と話したら、「そしたら“ババア記念日”を作って、一緒にステーキでも食べに行こう」と笑顔で返された。手前味噌なエピソードで恐縮だが、そのとき、私の脳裏にはサラダ記念日の歌が思い出されたと同時に、心の中では日々の些細な出来事を格別なことのように取り上げ意味づけをする素晴らしさにちょっとした感動を覚えたものだ。 

 

 ところで、この自ら意味づけをする素晴らしさは、ビジネスの世界でも同様に、いい仕事をしていく上で重要な行為であり、それができる力はもはやすべての人にとって必要なスキルといってもいいのではないだろうか。なお、ここでいうビジネスの世界における意味づけ力とは、外部から得られる情報に関する本質的な意味合いや自身の仕事に対する目的を明確にし、自分事化して捉えることができる力とする。特に、変化の激しいVUCA時代において、現場の人間が変化に対して迅速に対応していく、欲を言えば変化を自ら生み出していくことが、会社が大きな成長を遂げる上では重要であり、その中核を担ういわゆる中間管理職にあたるリーダー達にこそ、この意味づけ力が求められているのではないだろうか。なぜなら、現場のリーダー達は経営層/現場メンバーの板挟みにあっており、経営層の考えるビジョン、戦略、方針、意図を解釈し現場に落とし込むトップダウンの役割と同時に、経営層には十分に把握しきれない現場のメンバーたちの課題や声を抽出し、その本質をまとめ上申するボトムアップの役割の両方が求められるからだ。この両方の役割を全うするためにはどちらにおいても意味づけ力が必要なのは自明の理といえるだろう。例えば、経営戦略について現場のリーダーが自らの頭で考え自チームのミッションにどういう関係性があるのかを意味づけし説明できなければ現場のメンバーに対して、目の前の仕事をする意味を十分に伝えきれないし、逆に現場のメンバーが抱えている問題はなぜ起きていてその本質は何なのかが自分の頭で整理し意味づけがなされなければ経営に昇進したとしても、「で、君はどうしたらいいと思うの?」と一笑に付されてしまうだけだからだ。 

 

 では、この意味づけ力はどうやって鍛えればいいのであろうか。 

 私は「タテ、ヨコ、マエ」の3つが重要なキーワードではないかと考える。 

 「タテ」とは内省・深掘りする力のことで、平たく言えば思考力を意味する。目の前の事象に対してなぜを繰り返してその本質は何かを見つめなおす力が物事の意味づけを精度高く行う上では必要になるだろう。 

 「ヨコ」とは幅広くモノを見る力のことで、平たく言えば情報力を意味する。偏った情報や知識では折角の意味づけが納得感のない、もしくは誤った意味づけになってしまう可能性が高いといえる。 

 「マエ」とは次を見据えて意味づけしていくマインドのことで、平たく言えば精神力を意味する。後ろ向きのマインドでは、意味づけも後ろ向きなものになってしまい人生を豊かにするものには成りがたいだろう。 

 

 「タテ」と「ヨコ」に関しては、如何に日頃から幅広く情報を見聞し、その情報に対して「なぜ起きたのか?」「これからどうなるのか?」を考察していく練習をしていくことで鍛えられると考える。但し、何もきっかけがない中で、一人でこの練習を継続していくのはなかなか難しいという場合は、(これは元ライフネット生命の創業者である出口氏の受け売りになるが、)「ヒト・本・旅」がそのきっかけになると覚えておくと良い。つまり、新しい人との出会い・対話や新たな本を読むことによる思考の幅出し、新たな旅に出ることによる見聞の拡大などは「タテ」「ヨコ」に思考力を広げる大きな手助けとなるだろう。 

 「マエ」に関しては、精神力は一朝一夕に身につくものではないのでなかなか難しいが、【経験(過去)】と【環境(現在)】がその発揮につながる大きな要因になっていると考える。【経験(過去)】に関しては、困難な経験をした/乗り越えた過去があるほど「マエ」を見据える精神力は磨かれやすいのではないだろうか。「芸術は爆発だ」で有名な芸術家の岡本太郎氏も「迷ったら危険な道を選べ」と言っているように、何か迷う局面に当たったときに困難な選択肢を取ることを日頃から心掛けておくと良い。そうすれば、それは未来のあなたの精神力の糧につながっていくと考えられる。【環境(現在)】に関しては、自身のメンタルが安定しやすい環境であればあるほど本来の精神力を発揮しやすくなると考えられる。少なくとも、後ろ向きのマインドになっているなと感じたときに誰かに相談できる環境があるかないかは意味づけ力を発揮する上でとても重要になるだろう。 

 

 サラダ記念日の短歌は、この日常に対する意味づけ力を端的に短い文字数の中で閉じ込めていることこそがこの歌の魅力の本質だろうと私なりに捉えている。人生は様々なタイミングでいろいろなことが起る。どのようなときでも自分なりに目の前の事象を意味づけし、隣にいる仲間や家族と「○○記念日だね」と笑いながら彩り豊かな人生を過ごしたいものであるし、皆さん自身の人生がそうなることを願ってやまない。なぜなら、あなたの人生の主人公はあなた自身でしかないのだから。 

 

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